Part 1

ホテル内 カフェ前
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彰人
——よう。
スマホ見て何にやけてんだ?
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冬弥
彰人か。おはよう
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冬弥
実は昨日の夜、兄からメッセージが来たんだ
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彰人
兄って、ロイドさんを紹介してくれた……
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冬弥
いや、秋志兄さんではなく、
一番上の兄、夏臣兄さんだ
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彰人
え……
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夏臣のメッセージ
『秋志からアメリカにいると聞いた』
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夏臣のメッセージ
『話ができればと思ったが、まとまった時間が取れなくてな。
だが、これだけは伝えておきたい』
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夏臣のメッセージ
『冬弥。後悔のない人生を送れる人間は少ない。
いないと言ってもいいだろう』
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夏臣のメッセージ
『だが、少なくとも今のお前が
後悔なく、友人達と夢に向かって進んでいけることを願っている』
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彰人
へえ……。
一番上の兄貴も、お前のこと応援してくれてるんだな
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冬弥
ああ……
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彰人
よかったじゃねえか
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彰人
前に、『歳も離れてて、そんなに仲良くねえ』って言ってたから
マジでお前の親父みたいな人を想像してたんだが——
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彰人
お前の気持ち、ちゃんとわかってくれてるじゃねえか
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冬弥
そうだな
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冬弥
……今思えば、兄さん達と疎遠になってしまっていたのは
俺が無意識に避けていたからかもしれない
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冬弥
父さんの時と同じように、向き合うことから逃げて……
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彰人
……そういう時もあったかもしれねえが、
今のお前はすげえ頑張ってるよ。
親父との関係も、兄弟とのこともな
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彰人
うちなんてアレだぞ。
ま、親父のことは顔くらいしか知らねえと思うが——
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冬弥
彰人のお父さんのことはわからないが……。
絵名さんはいいお姉さんじゃないか
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彰人
いいお姉さんだあ?
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彰人
……ま、あいつのことはいいや
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彰人
とにかく、お前は頑張ってる。
特に、親父とのことはな
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冬弥
ああ。そうかもしれない
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彰人
かもじゃなくて、そうなんだよ
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彰人
お前がちゃんと向き合ったから、
お前の親父の考えとかもわかったしな
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冬弥
……ああ、そうだな。
本当に、きちんと知れてよかったと思う
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冬弥
父さんなりに、俺の幸せを考えてくれていたんだと——
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彰人
そういや、お前と組んで歌い始めた頃
お前の親父の話を聞くたびにイライラしたな
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彰人
なんで冬弥の話や、やりてえことを
聞いてやんねえんだって
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冬弥
懐かしいな……。
あの頃のお前は、俺のためによく怒ってくれていた
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彰人
お前が怒らなさすぎなんだよ
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彰人
言っとくが、お前が『どうしようもない』ってツラしてるのも
ちょっとムカついてたからな
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彰人
どうしてもぶち通したいもんがあるなら、
ぶん殴ってでも通せよ!って
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冬弥
なるほど。それは耳が……いや、手も痛そうだ
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彰人
さすがにお前が親父をぶん殴るなんてことは
なかっただろうが——
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彰人
下手したらオレがお前んちに乗り込んでたかもな。
直談判するために
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冬弥
たしかに、それは起こりえたかもしれない
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冬弥
だが、そうなった場合は
それこそ一触即発だっただろう
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冬弥
父さんは彰人のことを
『俺を堕落させた悪い友人』と言っていたからな
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彰人
は? オレが元凶ってことかよ
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冬弥
当然、俺は反論したが
父さんはそう信じて疑わなかったようだ
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冬弥
(あの時は、彰人を悪く言われたことに
とても腹が立って、言い返したりもしたが……)
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冬弥
(今はもう、笑い話だ)
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冬弥
(これが、父さんから逃げずに
向き合ったからこそ得られた道なら——)
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冬弥
(……悪くないな)