Part 1

神山高校 屋上
1
うむ、実に心地のいい日差しだ!
やはり天気がいい日は、屋上でランチに限るな!
2
たしかに、気分がいいとお昼も美味しく感じるかもしれないね
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腰を下ろす時は、背を曲げないよう意識して……
では、このあたりに座るとするか
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寧々
う、うん……
5
蓋を開ける時は指先を意識——
さて、今日の弁当は……っと
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おお! 生姜焼きではないか!
大好物と巡り会えるとは最高だな!
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む、どうした?
妙な顔をしているが弁当に苦手なものでも入っていたか?
8
寧々
さっきから、それなに……?
やたら動きに力入ってるけど……
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ハッハッハ! 気付いたか!
10
寧々
いや、気づかないほうがどうかしてるでしょ
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実は先日の桔梗組の舞台が、鮮烈に印象に残ってしまってな
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演技も脚本も演出も見事だったが、
何より目を引かれたのが立ち振る舞いだ
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思わず見惚れてしまうほどの美しさだっただろう!
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寧々
うん。たしかにね
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あんなものを見たからには、
ぜひとも自分も身につけたいと思ってな
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こうして実践しているというわけだ!
17
寧々
ああ、それで妙な動きをしてたわけ……
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妙なとはなんだ、妙なとは。
まずは普段の振る舞いから、意識してみるのが大切だろう
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一朝一夕で身につくような所作ではないからこそ、
常に意識を高めて臨まなくては
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寧々
常にって……まさか、今日ずっとこんな感じ?
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僕が見ている限りでは、この調子だね
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オレの振る舞いに、クラスメイトも目を見張っていたからな!
さっそく、意識を高めた成果が出ているぞ!
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そうだねえ。
僕も司くんのことであれこれ質問されたよ
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質問?
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天馬はどうして変な動きで黒板を消してるんだ?とか。
国語の音読でなんであんなにくねくね動いてるんだ?とか
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それはもうクラスの注目の的だったよ
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ま、待て待て! オレが想像していたものと違うぞ!
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もっとこう、所作の美しさに
息を飲んでしまっているイメージだったんだが!?
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というか、奇妙な目で見られていたのなら、
なぜ早く教えない!?
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もちろん、僕もそうしようと思っていたよ
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けれど、不思議なものを見た時に
人はどんな反応をするのか——
あの状況はそのサンプルを集めるのに絶好の機会だと思ってね
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断腸の思いで見守らせてもらったんだ。
あの状態の司くんを放置するのは、本当に胸が痛かったけれど……
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おおい! 自分の興味を優先させただけではないか!
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しかし、そんな風に思われていたとは……!
我ながら見事に優雅さを出せていると思ったのだが
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寧々
そんなに自信あったんだ……
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くっ、まあ今に見ていろ。
必ず美しい所作を身につけてやる
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寧々
はいはい。
そんなことより、早くお昼食べようよ
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そうだな……。
大好物でこの悲しみを癒やすとしよう
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む……
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寧々
あ、そういえば放課後だけど、今日何か予定ある?
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特にないけど……どうかしたのかい?
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寧々
みんなでセカイに行くのはどうかなって。
みんな、今森ノ宮で何してるのか、聞きたがってたから
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ああ、それはいいね。
えむくんにも連絡しておこうか
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寧々
そうだね。司は大丈夫——
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寧々
……って、なんで箸持ったまま固まってるわけ?
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いや、生姜焼きを美しく食べるにはどうするべきか、
考えていてな……
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思いきりほおばりたいところだが、
どう考えても美しくはないだろうし。
とはいえ、ちょびちょび食べるのも違う気がするな
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寧々
そんなに悩んでたら、昼休みなくなるってば
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寧々
まったく……極端に影響受けすぎだから
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フフ、それだけあの公演が素晴らしかったってことだね
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むむ、一体どうすれば……