Part 1

ニューヨーク市 公園
1
冬弥
まさか、公園を観光させてもらえることになるとは
思わなかったな……
2
セドリック
ここは緑が綺麗で開放感もあるから、
きっと楽しめると思うぞ
3
冬弥
ああ、ありがとう。楽しみだな
4
エレナの声
セディ、ちょっと来て~!
公園のことで聞きたいんだけど~!
5
セドリック
わかった。
冬弥すまない、行ってくる
6
冬弥
(……こうしていると、
さっきまでイベントに出ていたとは思えないな)
7
冬弥
(ホテルに戻ったら反省会をしようという話になっているが——
今日のイベントは、すべてを出し切れたとは言い難かった)
8
冬弥
(チーム全体で見て、英語の発音や
歌詞に感情を乗せるというのはやはり課題だ。
俺だって、完璧にできているとは言えない)
9
冬弥
(それに、Embersとillysの歌はやはりすごかった。
……特に、illysの——)
10
エレナ
『みんな、いっくよー!』
11
冬弥
(あの、爆発的な歌。
何度思い出しても、すさまじいな)
12
冬弥
(トラックだけを見ても、とても挑戦的で……
しかし、緻密なバランスで成り立っている)
13
冬弥
…………
14
冬弥
(音楽の世界は本当に広い。つくづく勉強になるな。
俺はまた、素晴らしい曲と出会うことができた)
15
冬弥
(……本当に、感謝しないといけないな)
16
冬弥
(今回だけではなく、これまでも——)
17
冬弥
(音楽院の即興演奏。ルーツの違う音楽が垣根を越えて、
ひとつになっていく、あの感覚——)
18
冬弥
(……まるで、世界が広がったような気がした)
19
冬弥
(本で知識を得るのとも、また違う。
新しい音との出会いは——いつも特別だ)
20
冬弥
(遠野さんが教えてくれた、颯真さんの未完成のトラック)
21
冬弥
(自由で、疾走感があって、激しいのに優しくて……
『この曲で歌える人が羨ましい』とさえ感じた)
22
冬弥
(そして俺も、こんな曲を作りたい——そう思った)
23
冬弥
(セカイで、白石と小豆沢と歌を合わせた時——
歯車がかみ合うような感覚がして、驚いた)
24
冬弥
(俺達の音楽の形が定まった瞬間があるなら、
それはきっと、あの時だ)
25
冬弥
(……そして、俺にとって最初の音楽との出会い。
俺のルーツは——)
26
冬弥
(あの音だ)
27
冬弥
(父さんが奏でた——一生忘れられない、とても美しい音)
28
冬弥
(こんな美しい音を、俺も弾きたい。
弾けるようになりたい。
……あの時、俺は音楽と出会ったんだ)
29
冬弥
(……今まで出会った、すべての音楽が、
今の俺を形作ってくれている)
30
冬弥
……俺は、運がいいな
31
???
運?
32
セドリック
あ、驚かせてすまない
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冬弥
……いや、大丈夫だ。
それより、どうしたんだ?
34
エレナ
セディがトーヤを呼びにいくっていうから、ついてきたの!
みんな行くとこ決まったよって伝えにきたんだ
35
エレナ
ていうか、さっき『運がいい』って聞こえたけど
何かいいことあったの?
36
冬弥
あ……そういうわけじゃないんだ。
ただ少し、考え事をしていただけで……
37
セドリック
何を考えていたんだ?
38
冬弥
そうだな……。
Vivid BAD SQUADの作曲をしている身として、
エレナさんが作ったトラックを聴けたことは、収穫だったなと
39
エレナ
えっ、アタシ?
40
冬弥
ああ。みんなで感想を言い合っている時も伝えたが、
とても良い曲だと思った
41
冬弥
難しい曲のはずなのに、難なく乗りこなしてしまう
ふたりの歌唱力もすさまじい。本当に力強くて、心を揺さぶられた
42
セドリック
同感だ。
エレナのトラックは大胆で、俺も学ぶことが多いよ
43
エレナ
ふふ、ありがと!
もっと褒めてもっと褒めて!
44
セドリック
調子に乗るな
45
冬弥
それで、改めていろいろと考えていたんだ。
音楽の世界は、本当に広いなと
46
冬弥
ビビッドストリートでもアメリカでも、
俺は今まで、俺の想像を超えるような——
まだ見たことのない音と何度も出会うことができた
47
冬弥
心を揺さぶられるような素晴らしい曲も、
心を豊かにしてくれる未体験の音も——
48
冬弥
どちらも、俺に良い影響をもたらしてくれる
49
冬弥
そうしたこれまでの音楽との出会いは、
どれを取っても運がいいことだと、改めて考えていたんだ
50
セドリック
冬弥……
51
冬弥
たくさんの出会いに刺激をもらったり、学ばせてもらって——
俺は、俺なりにいい曲を作れるようになってきたと思う
52
冬弥
だが……音楽の世界は果てしなく広く、真髄もまたずっと遠い
53
冬弥
俺の音楽には、まだまだ果てしない余地があるんだな
54
セドリック
あんなすさまじい曲を聴いて、
そんな顔ができるんだから大したものだ
55
エレナ
ふふ、そうこなくっちゃね!
56
セドリック
それに——
さっき運と言っていたが、そればかりではないだろう
57
セドリック
出会ったものの価値に気付ける審美眼も、研ぎ澄まされた感性も、
すべて冬弥が磨いてきた実力じゃないか?
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冬弥
……ああ、そうだな。
ありがとう
59
セドリック
まったく、戦う相手として気が抜けないな
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エレナ
あはは、だね!
いい勝負しようよ、Vivid BAD SQUAD! Embers!
61
冬弥
望むところだ。俺達も負けない