Part 1

奏の部屋
1
……サビ、だいぶ固まってきたけど、
入りがまだ弱い気がする
2
曲調的には、シンプルにサビ前の音を減らすのがいいかな。
あとはベタだけど、サブベースをフェードインさせるとか——
3
絵名
『……ごめん。思ったより遅くなっちゃった』
4
まふゆ
……奏、絵名きたよ
5
うん、聞こえた
6
『えななん、絵画教室の課題は終わった?』
7
絵名
『うん。なんとかね……』
8
瑞希
『うわ、ヘロヘロじゃん。
今回の課題も相当しんどかったとか?』
9
絵名
『それもあるけど、
何パターンも描いてたから、普通に疲れたっていうか』
10
『そうなんだ……』
11
『作業、もし大変なら休んでもらっても大丈夫だよ。
順調に進めてもらってるみたいだし』
12
絵名
『ありがとね、K。
課題がやばそうな時は相談させてもらうね』
13
『うん』
1週間後
14
(……動画、まだほとんど仮素材の状態だけど、
方向性はズレてないし、この調子で作業進めてもらって——)
15
絵名
『……K。まだ作業してる?』
16
『……えななん?
今日は絵画教室の課題でこれないんじゃなかった?』
17
絵名
『そのつもりだったんだけど、
ちょっと落ち着いたから顔出しておこうかなって』
18
絵名
『雪とAmiaは? もう寝ちゃった?』
19
『うん。雪は1時間くらい前に。
Amiaは10分くらい前だったかな……。眠さの限界だって』
20
絵名
『そっか……。でも、ちょうどよかったかも』
21
絵名
『K、今日は……あー、もう昨日だけど、
カフェに誘ってくれてありがとね』
22
絵名
私は……絵画教室に行って、帰るところ
23
……元気がなさそうだね。
大丈夫?
24
絵名
あー……うん。ちょっとね
25
……もしよかったら、少し話していかない?
26
絵名
え?
27
『……誘ったのはいいけど、あんまり役に立てなかったね』
28
絵名
『そんなことないから!』
29
絵名
『ていうか、Kから誘ってもらえるなんて思わなくて……。
私、そんなに元気なさそうだった?』
30
『……そうだね。
先週も課題で疲れてそうだったし』
31
『だから……こういう時、えななんやAmiaなら、
カフェでお茶して気分転換しようって言うかなって』
32
絵名
『そっか……』
33
『でも、わたしはえななん達みたいに
気の利いた話はできないから、
本当に聞くだけになっちゃったけど』
34
絵名
『ううん。聞いてもらえるだけでも気分変わるから』
35
絵名
『それに、Kが話してくれた
“失敗でしか見えないものがある”っていうのも、
そういう考え方もあるんだってわかって、おもしろかったし』
36
『本当?』
37
絵名
『うん』
38
(慣れないことしちゃったなって思ったけど……)
39
(役に立てたなら、よかった)
40
絵名
『……あ、そうそう。
あの後、ちゃんと休んでくれた?』
41
『え……。ああ、うん』
42
『えななんと別れた後も、ミクとカイトは
わたしがベッドに横になるまで帰らないって言って、
ずっとこっちにいて……』
43
『特に、カイトの視線が痛かったな』
44
『スマホ、移動中はポケットに入れてたはずなのに、
無言の圧を感じたっていうか……』
45
絵名
『圧かけられるのも当然でしょ。
Kは前にも倒れてるんだから』
46
『う……』
47
絵名
『本当に気をつけてよ?
もしまた倒れたら、今度こそ家に押しかけるから!』
48
『うん。気をつけるよ』