Part 1

杏の部屋
1
うーん……
2
うーーーーん……!
3
(やっぱり……このままじゃ、全然足りない)
4
(RUSH BEATSに出場する!って決めたのはいいけど……)
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お金が足りないーっ!
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(飛行機代に宿泊代に、食事代とかいろいろ……)
7
(節約できないかって、何回計算してみても——)
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はあ……
このくらいいっちゃうよねー……
9
みんなとも話したけど、動画サイトからの楽曲収益だけじゃ、
全然足りないってわかったし……
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やっぱ、バイトかなあ……
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でも、みんなでバイトしてたら、練習時間が減っちゃうよね。
他にまとまったお金を稼げる方法ってないかな……
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一番いいのは、音楽関係のやつなんだよね……。
そこの経験が大会にも活かせるし
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んー……音楽……
大会に繋がるような……んー……
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あ……
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そうだ!
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うん、今の時間なら……向こうは朝。
よし……
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父さん、起きてるかなー?
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『おう、杏か。どうした?』
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おはよ、父さん!
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急に電話しちゃってごめんね。
今、大丈夫?
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『ああ、今日はオフだから大丈夫だ。
ちょうど、コーヒーを淹れてのんびりしてたところだしな』
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コーヒーかあ……
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父さんの淹れてくれたコーヒー、しばらく飲んでないや
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『はは、そっちに戻ったら、また淹れてやるさ』
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うん、楽しみにしてる!
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『そんなことより、何か話があるんじゃないのか?』
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あ、そうそう!
父さんに相談があって
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あのさ……
すっごい賞金が出る音楽イベントとか、知らない?
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『藪から棒だな……』
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今、RUSH BEATSに向けて準備してるんだけどさ
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アメリカへの渡航費用とか滞在費とか、
いろいろ計算してみたんだけど……
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やっぱり、お金がかかるなあって思って
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『はは、なるほどな』
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ちょっと!
笑いごとじゃないんですけどー!?
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『いや、随分と苦労してるようだと思って』
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『しかし、それで賞金を狙うとは考えることが大胆だな』
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え、そう?
実力を磨きながらお金ももらえるし、いい方法じゃない?
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『たしかに、それで稼げるなら一番だ』
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『ただ……オレの知る限りじゃ、
直近でまとまった賞金が出るイベントはなかったはずだ』
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あー……
まあ、そんなにうまくはいかないか……
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『期待にそえなくて、悪かったな』
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ううん、平気。
他にいい方法がないか、もっと探してみる!
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『立ち直りが早いな』
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だって、目の前に世界に挑むためのチャンスがあるんだよ!
そんなの、絶対に逃したくないじゃん!
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だから、ヘコんでるヒマなんてないってこと!
絶対になんとかしてみせるから!
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『……そうか』
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『まっすぐというか、無鉄砲というか……
まったく、誰かさんを思い出すな』
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え?
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『いや、なんでもない』
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『しかし、どうしても難しいこともある。
そういう時は、オレや大河を頼ってくれてもいいんだぞ?』
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『お前達に必要な費用ぐらい出してやるさ』
52
あ……ありがとう。
どうしてもダメな時はお願いすると思うけど——
53
でもまだ大丈夫!
ギリギリまで、自分達で頑張ってみたいんだ!
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『まあ、そう言うと思った』
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『それなら、オレにできるのは心当たりを紹介するぐらいか』
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心当たり……?
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(あ……)
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(大河おじさんとか音楽業界の人のことかな?
音楽しながらできる仕事を聞いてくれるとか……?)
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『当たってみるから、しばらく待っていてくれ』
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うん、ありがとう!
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何かわかったら、教えてもらえると助かるよ。
その間、こっちでも何かできないか考えてみるから
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『ああ、頑張れよ』