Part 1
深夜
絵名の部屋
瑞希
『えななん、ラフありがと!
ボクは見せてもらった3つともいい感じだと思ったよ!』
ボクは見せてもらった3つともいい感じだと思ったよ!』
まふゆ
『……私も。デモや歌詞の雰囲気と、ズレもなさそうだし』
絵名
『よかった。
じゃあ、あとはKに見てもらうだけだけど……』
じゃあ、あとはKに見てもらうだけだけど……』
瑞希
『Kは今、あの曲に全力集中してるからね』
絵名
『うん』
絵名
(まふゆが感じた、
お母さんのあたたかさをイメージした曲か……)
お母さんのあたたかさをイメージした曲か……)
絵名
(イメージをつかむのも大変そうだったし、
無理しないで、ゆっくり考えてほしいな)
無理しないで、ゆっくり考えてほしいな)
まふゆ
『……ラフのチェックは終わったし、
Amiaはしばらくやることなさそうだね』
Amiaはしばらくやることなさそうだね』
瑞希
『うん。この機会に次のMVで使える新しい表現とか、
いろいろ研究しておくから、ふたりも期待しててよ〜』
いろいろ研究しておくから、ふたりも期待しててよ〜』
瑞希
『あ、でもニーゴの作業には顔出すからね!
ボクがいないときっと寂しいと思うしさ♪』
ボクがいないときっと寂しいと思うしさ♪』
まふゆ
『……それで、何するの?』
瑞希
『みんなを退屈させないような、楽しいおしゃべり♪』
瑞希
『——って言いたいけど、
服のアレンジでもしてようかなって思ってるよ』
服のアレンジでもしてようかなって思ってるよ』
瑞希
『ちょうど、アレンジのための素材も
集め終わったところだしね!』
集め終わったところだしね!』
絵名
『ふーん……』
絵名
(……まあ、この作業時間はあったほうがいいよね。
まふゆにとっても、落ち着ける時間だし)
まふゆにとっても、落ち着ける時間だし)
絵名
(……私は、どうしようかな)
絵名
(奏にラフを見てもらうまで、手が空くし
みんなと通話しながら課題の絵を描くとか)
みんなと通話しながら課題の絵を描くとか)
絵名
(……それはやめとこ。
課題は課題、ニーゴはニーゴで気持ち的にも切り替えたいし)
課題は課題、ニーゴはニーゴで気持ち的にも切り替えたいし)
絵名
『……ねえ、ちょっとふたりに相談があるんだけど』
絵名
(……よし。1枚目よりもずっと良くなってる)
絵名
(私の武器は世界観——)
絵名
(だから——描きたいと思うものを、ちゃんと描く。
あとは技術力を鍛えていかなきゃ)
あとは技術力を鍛えていかなきゃ)
絵名
(……ふたりにも、応援してもらったしね)
絵名
『……悪いけど、私はもう進められる作業がないから、
絵の課題を優先しようと思う』
絵の課題を優先しようと思う』
絵名
『課題が終わってる時とか、気晴らしにイラスト描きたい時とか
そういう時は顔を出すけど……』
そういう時は顔を出すけど……』
まふゆ
『わかった』
瑞希
『ほいほーい』
絵名
『……なんか、ふたりとも軽くない?』
瑞希
『あはは。ボクは、今のえななんなら
きっとそうするだろうなってわかってたからね~』
きっとそうするだろうなってわかってたからね~』
瑞希
『遠慮なくガシガシ描いてきてよ!
ていうか、もし気晴らしじゃなくてサボりに来たら
描きなさーいって追い出すからね!』
ていうか、もし気晴らしじゃなくてサボりに来たら
描きなさーいって追い出すからね!』
まふゆ
『気晴らしかサボりかなんて、判断できるの?』
瑞希
『そんなの、長い付き合いによる勘だよ!』
絵名
『……もう。サボるとかどうとか、
Amiaに言われたくないんだけど?』
Amiaに言われたくないんだけど?』
絵名
(私が今よりもいい絵を描けるようになれば、
ニーゴのイラストももっと良くなる)
ニーゴのイラストももっと良くなる)
絵名
(奏もたくさん悩みながら、必死に曲を作ってくれてる)
絵名
(その曲に恥ずかしくないイラストを——
ほんの少しでも、描けるようになっておきたい)
ほんの少しでも、描けるようになっておきたい)
翌日
絵名
ふう…………
絵名
ここから先は、絵の具が乾かないとダメだな
絵名
(……今のところ調子よく描けてる。
でも、ここで満足したら絶対にダメ)
でも、ここで満足したら絶対にダメ)
絵名
(あの日の気持ちを、忘れちゃ——)
母親
絵名、ちょっといい?
絵名
……お母さん?
東雲家 リビング
母親
ごめんね、絵を描いてたのに呼んじゃって
絵名
ううん。絵の具乾くの待たないといけなかったし、大丈夫
母親
それならよかった。
はい、これがさっき話した貰い物のフルーツゼリーよ
はい、これがさっき話した貰い物のフルーツゼリーよ
絵名
うわっ! 本当に高級パーラーのじゃん!
美味しそう……っていうか、めちゃくちゃ綺麗!
美味しそう……っていうか、めちゃくちゃ綺麗!
絵名
たしか、どこから見ても美しいゼリーになるようにって
手作業で作ってるんでしょ?
手作業で作ってるんでしょ?
母親
そうみたいね。
スプーンは……普通ので大丈夫よね
スプーンは……普通ので大丈夫よね
絵名
うん。縦長のゼリーじゃないし。
じゃあ、いただきま——
じゃあ、いただきま——
母親
あれ? 絵名、写真はいいの?
絵名
ん? あー……
絵名
(……そういえば、こういう綺麗な食べ物の写真
よく撮ってSNSあげてたっけ)
よく撮ってSNSあげてたっけ)
絵名
(あのアカウントはもうないけど——)
絵名
(このゼリーめちゃくちゃ綺麗だし、
ゼリーの質感も絵の練習になるかも)
ゼリーの質感も絵の練習になるかも)
絵名
ありがと、お母さん。
美味しそうだったから、撮るの忘れてた
美味しそうだったから、撮るの忘れてた
絵名
あ、撮るならしっかり盛らないと……。
お母さんの方のゼリーもちょっと貸して?
お母さんの方のゼリーもちょっと貸して?
絵名
……ゼリー同士は近めにして、
真横からゼリーの中身がわかるように撮ってみよう
真横からゼリーの中身がわかるように撮ってみよう
絵名
うーん、やっぱりこれだと、
ゼリーにぎっしり詰まってるフルーツの質量は伝わるけど、
見た目の綺麗さが出し切れてないな
ゼリーにぎっしり詰まってるフルーツの質量は伝わるけど、
見た目の綺麗さが出し切れてないな
絵名
じゃあ、次は——
絵名
あれ? 思ってたのとちょっと違うな。
だったらこうして——
だったらこうして——
絵名
……あっ! もう変な反射が入っちゃった。
もう1回——
もう1回——
母親
……ねえ、絵名。
お母さん、そろそろゼリー食べたいんだけど?
お母さん、そろそろゼリー食べたいんだけど?
絵名
ダメ。あともうちょっと待ってて
絵名
……よし! いい感じ!
おまたせ、お母さん。食べていいよ
おまたせ、お母さん。食べていいよ
母親
はいはい
母親
まったく……。
そういう凝り性なところ、本当に……
そういう凝り性なところ、本当に……
絵名
……ちょっと。今、あいつと比べなかった?
母親
ふふ、なんのこと?
いただきます
いただきます
絵名
もう……。
いただきまーす
いただきまーす
絵名
……おいしー!