翌日
ホテル内のカフェ
まふゆの父
——まふゆ、今日は来てくれてありがとう
まふゆの父
宵崎さんも、ありがとうございます
奏
はい、よろしくお願いします
まふゆの母
……まふゆ、久しぶり。
元気にしていたかしら
元気にしていたかしら
まふゆ
……うん
まふゆの母
ええと……もしかして、体調がよくないの?
気分が悪いのなら、無理しなくても——
気分が悪いのなら、無理しなくても——
まふゆ
大丈夫
まふゆ
私は、これが普通だから
まふゆの母
そう、なのね……
まふゆ
…………ごめんなさい
まふゆの母
——まふゆが謝ることじゃないわ。
お母さんのほうこそ、ごめんなさい
お母さんのほうこそ、ごめんなさい
まふゆ
…………
まふゆの母
あのね、お母さん……
今日はまふゆに話さなきゃいけないことがあるの
今日はまふゆに話さなきゃいけないことがあるの
まふゆの母
……あれから……まふゆが出ていってから、
ずっと考えていたんだけれど
ずっと考えていたんだけれど
まふゆの母
私は、あの日——ううん、今までずっと、
まふゆのことを傷つけてしまっていたと思う
まふゆのことを傷つけてしまっていたと思う
まふゆの母
医者になることが、まふゆの夢だって……
ずっと、勘違いをして……
ずっと、勘違いをして……
まふゆの母
それで、まふゆにはたくさん苦しい想いをさせてしまった
まふゆの母
将来のためになるんだから、
今は我慢しないとって、気持ちを押し付けて——
今は我慢しないとって、気持ちを押し付けて——
まふゆの母
本当に…………ごめんなさい、まふゆ
まふゆ
…………
まふゆの母
……だけど、今は心から——
まふゆの幸せだけを願っているわ
まふゆの幸せだけを願っているわ
まふゆの母
信じられないかもしれないけれど……
まふゆ
お母さん……
まふゆ
……お母さんは、優しいし……
私のことをすごく考えてくれてる
私のことをすごく考えてくれてる
まふゆ
……ずっとそう思ってるし
この気持ちは、昔から変わってないよ
この気持ちは、昔から変わってないよ
まふゆの母
まふゆ……
まふゆ
……でも……
まふゆ
………………
まふゆの父
……大丈夫だ、まふゆ
まふゆの父
なんでも話していいんだよ
まふゆ
…………
まふゆ
……お母さんに……
まふゆ
お母さんに、“こうしたほうがいい”って言われるたびに……
まふゆ
全部、私のためだってわかってても……
だんだん、縛られてるみたいに思えてきて
だんだん、縛られてるみたいに思えてきて
まふゆ
家にいても、落ち着かなくて……
どこにも、居場所がないような気がして————
どこにも、居場所がないような気がして————
まふゆ
…………つらかった
まふゆの母
……っ!
まふゆ
お母さんに、謝ってほしいとか
変わってほしいとか……思ってない
変わってほしいとか……思ってない
まふゆ
ただ……私の気持ちを、わかってほしい
まふゆの母
……まふゆ……
まふゆの母
…………ごめんなさい。
そんなふうに思わせてしまって
そんなふうに思わせてしまって
まふゆの母
本当に……傷つけてしまったのね
まふゆ
…………っ
まふゆの母
……大丈夫よ
まふゆの母
お母さんも、本当にまふゆが幸せになるために
どうすればいいかって考えたの
どうすればいいかって考えたの
まふゆ
え……
まふゆの母
お母さんね——
まふゆの母
————まふゆが、本当にやりたいことを……応援したいの
まふゆ
…………
まふゆの母
…………まふゆの夢が、お医者さんになることじゃないのなら
もう目指さなくてもいい
もう目指さなくてもいい
まふゆの母
まだ目指したい夢がわからないのなら、それでいい
まふゆの母
将来のことは、ゆっくり考えながら——
今、まふゆがやりたいことをしてほしいと思っているの
今、まふゆがやりたいことをしてほしいと思っているの
まふゆ
…………!
まふゆ
………………
まふゆ
…………本当、に?
まふゆの母
もちろんよ。
まふゆは、まふゆのままでいてくれればいい
まふゆは、まふゆのままでいてくれればいい
まふゆの母
お母さんの、大切な娘なんだもの
まふゆ
お母さん……
まふゆ
……あ……
まふゆ
(手が、あたたかい……)
奏
(…………よかったな)
奏
(前に、まふゆのお母さんと話した時は
まふゆのことを考えてないように見えたけど——)
まふゆのことを考えてないように見えたけど——)
奏
(……今は、そう感じない)
まふゆの母
……ねえ、まふゆ。
最近何があったか聞かせてくれない?
最近何があったか聞かせてくれない?
まふゆ
え……
まふゆの母
あ、もし嫌なら無理に話さなくてもいいのよ。
ただ……
ただ……
まふゆの母
しばらく、会えていなかったから——
まふゆの話が聞きたくって
まふゆの話が聞きたくって
まふゆ
…………
まふゆ
特に、変わったことはないけど……
まふゆ
……このあいだ、少し寒かったから……
お母さんがくれたマフラー、使ったよ
お母さんがくれたマフラー、使ったよ
まふゆ
ありがとう
まふゆの母
…………!
まふゆの母
——いろいろ聞かせてくれてありがとう、まふゆ
まふゆの母
久しぶりに話せて……とても嬉しかったわ
まふゆ
……うん
まふゆ
……私も……
まふゆの父
本当に、今日はありがとう
まふゆの父
まふゆの話を聞けて、お互いにちゃんと話せて
よかったと思う
よかったと思う
まふゆの父
それで、これからのことなんだが——
まふゆの父
もしまふゆが、家に戻れそうだったら
戻ってきてほしいと思っている
戻ってきてほしいと思っている
まふゆ
…………!
まふゆの父
さっきお母さんも言っていたように、
今後はまふゆの気持ちを何よりも尊重する
今後はまふゆの気持ちを何よりも尊重する
まふゆの父
まふゆの居場所はここなんだ、と
思ってもらえるように……お父さんも、お母さんも努力する
思ってもらえるように……お父さんも、お母さんも努力する
まふゆの父
それは必ず、約束する
まふゆ
…………
まふゆの父
しかし、まふゆが『まだ戻れない』と感じているのなら
お父さん達は待つつもりだ
お父さん達は待つつもりだ
まふゆの父
だから……まふゆ自身が、決めていい
まふゆ
お父さん……
まふゆ
(家に、戻る…………)
まふゆ
(まだ怖い、けど——)
まふゆ
(……お父さんを……お母さんを、信じたい)
まふゆ
(あの、あたたかさを————)
まふゆ
…………わかった
まふゆ
……家に、帰ろうと思う
まふゆの母
まふゆ……!
まふゆの母
…………っ、ありがとう……
まふゆの母
宵崎さんも——今まで、ごめんなさい。
まふゆのことを見ていてくれて……本当にありがとう
まふゆのことを見ていてくれて……本当にありがとう
奏
いえ……わたしは、何も……
奏
(…………よかったね、まふゆ)
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