宮益坂
まふゆの母
あら……まだ続けていたのね
まふゆ
(……あの言葉、どういうことだったんだろう)
まふゆ
(やっぱり、お母さん——)
まふゆ
…………
まふゆ
(…………本当に、続けていいのかな)
まふゆ
(あの時は、続けていいって言われたけど……)
朝比奈家 リビング
まふゆ
……ただいま
まふゆの母
おかえり、まふゆ。
部活はどうだった?
部活はどうだった?
まふゆ
……今日は、弓道連盟の師範の先生が
来てくれたから教わってたんだ
来てくれたから教わってたんだ
まふゆの母
あら、師範の先生に?
すごいわね!
すごいわね!
まふゆ
……お母さんは、どうだったの?
まふゆの母
ふふ、お母さんも美術館に行ってきたんだけど
とても良かったわよ
とても良かったわよ
まふゆの母
やっぱり、良い絵を見ると
感性が磨かれる気がするわ
感性が磨かれる気がするわ
まふゆの母
今度はぜひ一緒に行きましょう。
もちろん、部活がない日にね
もちろん、部活がない日にね
まふゆ
あ……
まふゆの母
——あら? お父さんからだわ
打ち合わせが早く終わったから、今日は家で夕飯を食べるって
打ち合わせが早く終わったから、今日は家で夕飯を食べるって
まふゆ
そうなんだ
まふゆの母
ふふ、急いで夕飯の準備をしなくちゃね
まふゆ
……私、手伝うよ
まふゆの母
え?
まふゆ
せっかくだから、手伝いたいんだ。
……いいかな
……いいかな
まふゆの母
ええ……!
もちろんよ
もちろんよ
まふゆの母
美味しい夕飯作って、
お父さんをびっくりさせちゃいましょう!
お父さんをびっくりさせちゃいましょう!
まふゆの父
——お、この麻婆豆腐美味しいな。
辛味もちょうどいい
辛味もちょうどいい
まふゆの母
ふふ、よかったわ。
今日はまふゆと一緒に作ったのよ
今日はまふゆと一緒に作ったのよ
まふゆの父
そうだったのか
まふゆの父
ありがとう、まふゆ。
とても美味しいぞ
とても美味しいぞ
まふゆ
うん、よかった
まふゆの母
——こうしてまふゆと一緒に過ごせて、
本当に嬉しいわ
本当に嬉しいわ
まふゆの父
ああ、そうだな。
生活に張りが出たよ
生活に張りが出たよ
まふゆ
…………
まふゆの母
……私ね、また一緒に暮らしてみて思ったの
まふゆの母
まふゆのこと、全然わかっていなかったんだなって
まふゆ
お母さん……
まふゆの母
まふゆは部活も勉強も、趣味も頑張っていて
本当にすごいわ
本当にすごいわ
まふゆの母
このあいだのテストも成績がよかったし、
お母さんの見えないところで努力しているのね
お母さんの見えないところで努力しているのね
まふゆの母
きっとまふゆなら、どんな道でも進んでいけるわ
まふゆ
……そんなに大したことじゃないよ。
でも、ありがとう
でも、ありがとう
まふゆの母
——そうだわ。ねえ、まふゆは誰かに寄り添うお仕事に
興味があるのよね
興味があるのよね
まふゆ
まだ、ちゃんとはわからないけど……
まふゆ
そうかもしれない、って……思ってる
まふゆの母
そうなのね……
まふゆの母
じゃあ、大学の候補を探したほうがいいかしら
まふゆの母
こんなに頑張っているんだもの。
まふゆだったらどんな学校でも行けそうでしょう?
まふゆだったらどんな学校でも行けそうでしょう?
まふゆ
ありがとう
まふゆ
……でも、まだ考えたいから大丈夫
まふゆの母
あら、そう…………
まふゆの父
……その話は、また今度にしないか?
まふゆの母
え? あ……!
まふゆの母
——ごめんなさい。私ったら、また……
まふゆ
ううん、大丈夫だよ
まふゆ
…………
まふゆの部屋
まふゆの母
まだ目指したい夢がわからないのなら、それでいい
まふゆの母
将来のことは、ゆっくり考えながら——
今、まふゆがやりたいことをしてほしいと思っているの
今、まふゆがやりたいことをしてほしいと思っているの
まふゆ
(大丈夫……だよね)
まふゆ
(お母さんは、私のために提案してくれただけだから)
まふゆ
(…………でも……)
まふゆ
……駄目だ、集中できない
まふゆ
何か飲み物、取ってこよう
まふゆの母の声
…………っ、どうして……
まふゆの母
……どうして、あんなこと言っちゃったのかしら
まふゆの母
まふゆの気持ちを尊重しようって、
大事にしなきゃって思っていたのに……
大事にしなきゃって思っていたのに……
まふゆの父
…………
まふゆの母
まふゆは、大丈夫だって言ってくれたけど……きっと……
まふゆの父
……大丈夫だ。
そんなに自分を追い詰めるな
そんなに自分を追い詰めるな
まふゆの母
でも……
まふゆ
…………っ
Next Chapter: “寄り添い”