スクランブル交差点
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鬼島さん、今日は付きあっていただき、
ありがとうございました!
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すり合わせだけでなく、結局自主練まで見ていただいて……
本当に、助かりました
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鬼島
構わない! いい舞台にするために
できることを全てやりたいという君の気持ちは、
よくわかるからな
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鬼島
それに今回、俺達はダブル主演だ。
息を合わせるのは大切だろう
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そうですね……幼い頃に生き別れてしまった兄弟が、
新政府軍と旧幕府軍にわかれて戦う
この『維新伝』——
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クライマックスの殺陣が
全体の出来を左右すると言っても過言ではないと思うと、
ますます気合いが入ります!
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ただ——
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まだまだ工夫する余地があるというか、
何かが足りない気もしていて……
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鬼島
……なるほどな
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……すみません。
こんな抽象的な話をしてしまって
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鬼島
いや、謝る必要はないぞ。
考え続けるのは、大事なことだからな!
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鬼島
だが——そうだな。
その答えは、自分で辿り着かなければ意味がない
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鬼島
そしてきっと、それに気づけた時——
天馬くんは今よりも大きく成長できるだろう
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……! 今よりも……
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……わかりました。
この天馬司、必ずや答えに辿り着いてみせます!
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鬼島
はっはっは、その意気だ!
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鬼島
そういえば天馬くん。
メッセージはちゃんと返せたのか?
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メッセージ?
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鬼島
すり合わせの最中に、昔の仲間から連絡が来たと
言っていただろう
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鬼島
そのまま自主練に入ってしまったから、
まだ返せていないのではと思ってな
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はっ、そうでした……!
練習に集中するあまり、つい頭から抜け落ちて……!
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急いで返信します!
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鬼島
うむ、思い出せたようで何よりだ!
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鬼島
しかし……解散しても連絡を取り合うとは、
その子達とはとても仲がいいんだな
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……そうですね
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実は……海外行きを決めたのは
その仲間に背中を押されたからというのも、理由のひとつなんです
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鬼島
そうなのか?
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はい。仲間のひとりから
夢を追いかけて、アメリカトップレベルの
ショーユニットの一員になると報告されて——
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負けられない、そう思ったんです
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オレの実力は、まだまだです。
海外に行くには早いことも、理解しています。しかし——
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仲間に、先を越されてばかりではいられない……
オレは、ワンダーランズ×ショウタイムの座長ですから!
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『世界中を笑顔にするスターになる』という夢を、
一番に叶えなければいけないんです
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鬼島
……そうか。
天馬くんらしい、まっすぐな想いだな
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鬼島
夢に向かって一直線に向かう
その心意気やよし!
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鬼島
堂々と走っていくといい。
壮大な君の夢に向かってな!
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鬼島さん……
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はい! ありがとうございます!
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???
きっとできるよ。だって君は、
みんなに笑顔をあげる未来のスターなんだろう?
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(……今のは、一体……)
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(わからんが、誰かに背中を押されたような……
そんな気分だ)
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(……いよいよ、最後の公演か)
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(あいつらに負けないように……
最後まで気を引き締めていかねばな!)
1週間後
神社の境内
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六郎
『なぜ……なぜお前がここにいる!』
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六郎
『あの時、俺が逃したはずだろう!』
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勘助
『……!』
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(よし。動きのタイミングはバッチリだ!
このまま鍔迫り合いから、打ち合いに——)
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観客達
うわっ!
あの人、壁を蹴って飛んだ……!?
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(アドリブか……!
正面から受けて飛ばされたあと、受け身をとれば——)
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勘助
『うぐっ……!』
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勘助
『くっ……兄上……!』
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観客達
わあ、すごい迫力……!
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(観客も乗ってきているな!
それなら、次はオレが……)
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三日月組団員C
いや、すまない……。
まさか回転を加えるとは思わなくてね
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(しかし——今は鬼島さんの見せ場だ)
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(ここは、練習通り踏み出して——!)
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勘助
『それでも……
それでも俺は……この道を選ぶ!』
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六郎
『……そうか』
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六郎
『それならもう、戦うしかないんだな。
たったひとりの、家族であっても……!』
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勘助
『兄上、俺は……』
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勘助
『俺は、後悔してない。
あの時、あなたと道を違えたこと……』
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六郎
『ああ、俺もだ。だからこそ……』
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六郎
『——最後は、俺の手で終わらせてやる』
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勘助
『……ああ。頼む』
終演後
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観客達
最初はちょっとコメディだったのに……
最後、まさかあんな結末になるなんて……!
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観客達
三日月組って、こんな切ない演目もできたんだ……
めちゃくちゃ面白かったな〜!
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鬼島
はっはっは!
観客の反応も上々といったところだな!
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これまでにない、拍手の大きさでしたね……!
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最後まで、鬼島さんには勉強させていただくことばかりでした。
あのアドリブも、観客がすごく盛り上がっていましたし!
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鬼島
そう言う天馬くんも、よく対応したな!
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鬼島
——天馬くん
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鬼島
改めて、今日までありがとう。
団員も、俺も。君にはいろいろと刺激を受けた
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鬼島
きっと、ひとりで世界に飛び出せば
つらいこともあるだろう。
だが、天馬くんなら大丈夫だ!
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鬼島
君がスターになる日を、楽しみにしているぞ
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……はい!
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三日月組の皆さんと一緒に修行してきた日々は、
オレにとって、かけがえのない財産です
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みんな、オレの背中を押して、夢を応援してくれた。
そんな皆さんの想いに応えるためにも……
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必ず、夢を叶えてみせます
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オレは——未来のスターですから!
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鬼島
うむ!
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鬼島
胸を張って、進んでいくといい!
君だけの、夢への道をな!
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三日月組スタッフ
——鬼島さん!
施設のスタッフの方が、ご挨拶をしたいと
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鬼島
おお、そうか!
それなら、向かうとしよう。またあとでな、天馬くん!
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はい!
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鬼島
…………
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鬼島
(……俺では、彼の全力を引き出すことはできなかったか)
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(……舞台上での立ち回り、殺陣の動き。
どれも、練習以上のものを出せたはずだ)
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(だが……)
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(しかし——今は鬼島さんの見せ場だ)
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(ここは、練習通り踏み出して——!)
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(あそこで遠慮してしまったのは、
少しもったいなかったか……)
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(だが、結果的に公演は——)
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鬼島
その答えは、自分で辿り着かなければ意味がない
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(もしや、あれは……そういうことか——?)
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(……まだまだ、役者として足りないものばかりだな)
95
(より素晴らしい舞台のために、
役者は常に全力であるべきだというのに……)
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(こんなことでは、あいつらに笑われてしまう)
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(……そういえば、今日の公演の前に
類とオレが海外に行くなら送別会をしよう、と
えむからメッセージが来ていたな)
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…………
99
(もし、今日の芝居をあいつらが見ていたら……
どんな感想を言うだろうか)
100
(えむは、『ドドドドガーーンって感じで面白かった☆』とか
言いそうだな。
寧々には、細かい動きのズレを指摘されそうだ)
101
(類はおそらく、
追加の演出プランを延々と語ってくるだろうし——)
102
(いずれにせよ、
こんな未熟なままではダメ出しばかりだろうな)
103
(オレは……もっと成長しなくてはならん)
104
(ワンダーランズ×ショウタイムの座長として——
あいつらに負けないためにもな)
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