カフェ
1
冬弥
——うん、美味しい
2
冬弥
酸味と苦味のバランスが絶妙だ。
豆もそうだが、いれ方にもこだわりがありそうだ
3
こはね
トッピングのホイップも、
甘さ控えめですごく合うな……!
4
彰人
……ん、こっちのカフェオレも美味い
5
セドリック
……気に入ってもらえたみたいだな
6
スレイド
トーヤとコハネの豆は、セディがいつも飲んでるやつだよね!
ふたりの口に合ったみたいで、よかったよ!
7
冬弥
そうなのか。セドリックとは好みが合いそうだな
8
冬弥
豆も購入できると言っていたし、
あとで教えてもらえるとありがたい
9
セドリック
ああ、任せてくれ
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セドリック
——さて、ひととおり自己紹介も終わったし、
そろそろ本題に入ろうか
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こはね
えっと……おふたりとRADderの皆さんとのこと、ですよね
12
セドリック
そうだな。
だが、どこから話したものか……
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私、最初から聞きたいな〜。
ふたりがどうやって凪さん達に出会ったのか、とか!
14
スレイド
出会いか。それで言うと、
今日オレ達が会ったのと似たようなものかも……
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こはね
私達と……?
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冬弥
もしや、財布をスられそうになって
謙さん達に助けてもらった、ということか?
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スレイド
あー、いや。そうじゃなくて
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スレイド
——オレ達が、タイガさんの財布をスろうとしたんだ
19
彰人
…………は?
20
セドリック
おいスレイド、いきなりそんな話……。
みんな戸惑っているだろう
21
スレイド
あ、ごめんごめん!
そりゃあ、びっくりするよね……!
22
スレイド
一応弁解すると、未遂だよ。
だからって悪いことをしたのに変わりはないし、反省もしてる
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こはね
で、でも、どうしてそんな……
24
スレイド
……実はオレ達、小さい頃家が貧しくてさ。
生活に困ってた時期があったんだ
25
スレイド
それで、お腹が空きすぎて、もうダメだーってなってた時に
たまたま街でRADderを見かけて……
26
スレイド
観光客っぽくてお金も持ってそうだから、
ふたりでスリをしようとしたんだ
27
こはね
そんなことが……
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セドリック
まあ、見事に失敗したんだがな
29
セドリック
一瞬で首根っこを掴まれて、ものすごい目で睨まれたよ
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スレイド
あの時のタイガさん、
めちゃくちゃ怖かったな〜
31
あ〜……なんか想像できるかも
32
スレイド
で、やべえボコボコにされる……!って覚悟してたら、
あっさり解放してくれたんだよね。
『二度としないなら見逃してやる』って
33
セドリック
今ならわかるが……俺達の身なりを見て、
いろいろ察してくれたんだろうな
34
冬弥
…………
35
セドリック
そこから、いろいろ聞かれたよ
36
セドリック
親はいるのか、普段はどんな生活をしてるのか、とかな
37
セドリック
最初は、どうしてそんなこと話さないといけないんだとか
どうせ興味本位だろと思って、黙っていたんだが——
38
セドリック
3人の……特に、凪さんの目がすごく真剣でな。
この人達になら、話してもいいかと思ったんだ
39
セドリック
——あんな風に
まっすぐに俺達のことを見る大人は、初めてだったから
40
冬弥
そうだったのか……
41
スレイド
うん。それで、オレ達の生活を知ったRADderは、
『歌を聴きに来い』って言ってくれたんだ
42
スレイド
自分達が出演するイベントに招待してやる、ってね
43
セドリック
大河さんは、『腹の足しにはならねえが、
人生の足しにはなるだろ』と言っていたな
44
こはね
ふふ、大河さんらしいな
45
スレイド
腹の足しにならないなら、意味ないじゃないか!
って言い返したら、めちゃくちゃ怒られたよ
46
セドリック
俺達はあの頃、音楽なんて
うるさいだけだと思ってたからな
47
セドリック
けど、いいから来いって、引っ張っていかれて……
48
セドリック
そこで聴いたあの人達の歌に——
人生を変えられたんだ
49
スレイド
……大袈裟に聞こえるかもしれないけど、本当だよ
50
スレイド
それまで、街でいろんな音が鳴ってても
耳障りとしか思わなかった。でも、あの人達の歌は——
51
スレイド
…………すごかったんだ
52
スレイド
心が揺さぶられるって、
こういうことなんだと思ったよ
53
スレイド
音楽は、歌は。
こんなにも心が熱くなるものなんだって、初めて知った
54
スレイド
……あの瞬間、オレ達の人生は変わったんだ
55
こはね
(音楽が、自分の人生を変えた)
56
こはね
(それって——)
57
彰人
……そうか
58
彰人
お前らも、RADderの歌に火をつけられたんだな
59
スレイド
……ああ。
そこからはもう、一気に音楽漬けの毎日だよ!
60
スレイド
オレ達もあんな風に歌いたい!って、
がむしゃらに練習してさ
61
スレイド
RADderがこっちに来るたびに頼み込んで、
歌を教えてもらったりしたんだ!
62
スレイド
それで、ちょっとずつ地元のライブハウスに
呼ばれるようになったり、
音源の配信なんかもするようになったんだよね
63
セドリック
そうだな。それで——
今では、なんとか音楽で食べていけるようになっている
64
セドリック
本当に、3人のおかげだ
65
冬弥
……それは、すごいな
66
あ、そういえば……!
67
こはね
杏ちゃん、どうしたの?
68
思い出したんだ。
昔『アメリカで修行つけてる双子がいる』って、
父さん達が言ってたこと
69
あれって、スレイド達のことだったんだ……!
70
セドリック
俺達も、杏のことは聞いてたよ
71
セドリック
特に凪さんが、いろいろ話してくれてさ。
小さいのに、いい歌を歌うんだって
72
あ……
73
ふふ、そっか……!
74
スレイド
オレ達、勝手にアンのことライバル視してたよね!
75
スレイド
同い年くらいなのに、ナギさん達にここまで言わせるなんて
どんなヤツだ! 負けないぞ!ってさ
76
セドリック
特にスレイドは、
『RADderに褒められるのはオレ達だけで十分!』
とムキになっていたな
77
あはは、そんなこと言ってたんだ!
78
こはね
ふたりとも、
大河さん達とすごく仲が良かったんですね
79
セドリック
……ああ。3人との日々は、
俺達にとってかけがえのないものだ
80
スレイド
……そうだね
81
スレイド
だから、アンが言ってた『どんな関係か』って質問の答えとは
少しずれるかもしれないけど……
82
スレイド
RADderはオレ達にとって、
恩人で、憧れで——家族みたいなもんかな!
83
スレイド
あの人達は、歌を……生き方を。
それに、人のあたたかさを教えてくれたから
84
スレイド
だからこそ、オレ達は
ナギさんの夢の先に行きたいと思ってる
85
スレイド
キミ達と、同じようにね!
86
彰人
あ……
87
スレイド
RAD BLASTで聴いたキミ達の歌は、本当にすごかった。
でも——
88
スレイド
ナギさんの夢の先に行くのは、オレ達だからね!
89
彰人
あれは、そういうことだったのか……
90
なんていうか、点と点が繋がったって感じだね
91
こはね
うん……
92
こはね
でも、歌に出会った時のふたりの気持ちは、
ちょっとだけわかるな
93
こはね
周りの状況とか、経験してきたこととかは、
全然違うけど……
94
こはね
音楽に……歌に出会って
自分の人生が変わったっていうのは、私も同じだから
95
冬弥
……俺も、同じことを感じていた
96
冬弥
形は違っても、ここにいる全員
RADderの音楽が人生に影響を与えている。そして——
97
冬弥
それらが巡り巡って、
俺達を引き合わせてくれた
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もしかしたら、凪さんがつないでくれたのかもね!
99
セドリック
……そうかもしれないな
100
スレイド
ねえ、このあとイベントまでまだ時間もあるし、
よかったら一緒にフリーマーケット回らない?
101
え?
102
スレイド
ほら、どうせ目的地は一緒なんだし……
103
スレイド
なんか話したら、ここでバイバイっていうのも
寂しいなって思ってさ
104
こはね
ふふ、そうですね
105
じゃあ、これ飲み終わったら
みんなでお店見に行こっか!