ニューヨーク市 公園
エレナ
アタシとベッキーは、
子供の頃から父さんに歌を習ってきたんだ
子供の頃から父さんに歌を習ってきたんだ
エレナ
誰よりもうまくて、誰よりも“売れる”——
エレナ
そういう歌を、ずっと
杏
……それって……
レベッカ
無理やりやらされてたわけじゃないんだけどね
レベッカ
でも……なんていうのかな。
他の選択肢を全部、見えなくされてるみたいな……
そういう不安は、ずっとあったかも
他の選択肢を全部、見えなくされてるみたいな……
そういう不安は、ずっとあったかも
エレナ
あいつがアタシ達に優しくしてたのは、
アタシ達が“商品”だからだよ
アタシ達が“商品”だからだよ
レベッカ
お姉ちゃん……
エレナ
ベッキーだって知ってるでしょ?
あいつは目的のためなら、なんだってやる
あいつは目的のためなら、なんだってやる
エレナ
他人の夢を食い物にして、蹴落として。
それでも平気な顔で……アタシ達の前で笑うんだ
それでも平気な顔で……アタシ達の前で笑うんだ
エレナ
隠してるつもりかもしれないけど、
どれだけのミュージシャンがあいつのせいで……っ
どれだけのミュージシャンがあいつのせいで……っ
エレナ
……ごめん。また熱くなっちゃったね
杏
ううん。でも……平気?
無理しなくても——
無理しなくても——
エレナ
平気だよ!
ただ、あの頃のことを思い出すと、腹が立つってだけ
ただ、あの頃のことを思い出すと、腹が立つってだけ
エレナ
あいつにも……
全部諦めて、ただ言いなりになってた自分のことも
全部諦めて、ただ言いなりになってた自分のことも
こはね
エレナさん……
レベッカ
……あの頃の私達にとって、歌は
“歌わなきゃいけないもの”だったんだ
“歌わなきゃいけないもの”だったんだ
レベッカ
父さんとか、周りの大人に褒めてもらうために……
だから、好きとか嫌いとか、考えたこともなかったな
だから、好きとか嫌いとか、考えたこともなかったな
エレナ
うん……だけど——
エレナ
そんな時に、RADderの歌を聴いて、全部変わったんだ
冬弥
RADderの歌を……?
レベッカ
……私達がRADderに初めて会ったのは、
音楽イベントの会場だったの
音楽イベントの会場だったの
レベッカ
父さんの仕事について行ったんだけど、
私達は別にやることもなくって
私達は別にやることもなくって
レベッカ
お姉ちゃんと一緒に、こっそり控室を抜け出したんだよね
エレナ
会場で迷子になって、あの時は泣きそうだったな~
杏
それ、大丈夫だったの?
エレナ
うん。その時のイベントに、RADderも参加しててさ
エレナ
——通りかかったナギさんが、助けてくれたんだ。
タイガさんやケンさんと会ったのも、その時だよ
タイガさんやケンさんと会ったのも、その時だよ
こはね
そうだったんですね……
冬弥
では、その時にRADderの歌を聴いたのか?
レベッカ
うん。父さんに頼んで、関係者席に入れてもらってね
エレナ
あの時は、ほんとにびっくりしたなー!
エレナ
あんなにまっすぐに、
楽しそうに歌う大人、初めて見たからさ
楽しそうに歌う大人、初めて見たからさ
エレナ
歌って、ほんとは心とか魂で歌うもので——
エレナ
誰かに褒めてもらうためじゃない。
お金を稼いだり、有名になるためでもない
お金を稼いだり、有名になるためでもない
エレナ
ものすごく純粋なものなんだ、って。
教えてもらった感じがしてさ
教えてもらった感じがしてさ
レベッカ
……うん。
あの歌を聴いた時に、思ったんだ
あの歌を聴いた時に、思ったんだ
レベッカ
私達も、あんな風に心から歌えたら、って……
レベッカ
それ以来、RADderがこっちに来たときに
こっそり会いに行くようになったの
こっそり会いに行くようになったの
レベッカ
スレイドとセディの練習にまぜてもらうように
なったのも、その頃
なったのも、その頃
スレイド
……懐かしいなあ
セドリック
ああ。凪さん達の国の言葉で話してみたいからと、
ふたりも日本語を覚えたんだったな
ふたりも日本語を覚えたんだったな
エレナ
うん! ナギさん達からは、
ほんとにいろいろ教えてもらったな
ほんとにいろいろ教えてもらったな
エレナ
まあ、父さんはさすがに、
RADderから歌を習うのにはいい顔しなかったけど
RADderから歌を習うのにはいい顔しなかったけど
彰人
自分がやらせたい音楽と違うからか?
レベッカ
そうだね。実際、私達は
どんどんRADderの音楽に惹かれていって……
どんどんRADderの音楽に惹かれていって……
レベッカ
自由に歌いたいって思うようになったんだ
エレナ
うん。
あんな風に、人の心を熱くできるような歌を歌いたい——
あんな風に、人の心を熱くできるような歌を歌いたい——
エレナ
だから、父さんに“自由にやらせてほしい”って言ったんだ。
もうアタシ達には関わらないで、って
もうアタシ達には関わらないで、って
杏
お父さんは……それで納得してくれたの?
エレナ
……それ以来、ぴたっと口を出してこなくなったんだよね
エレナ
あっさりしすぎてて、ちょっと不気味なんだけど
レベッカ
父さんは、無駄なことが嫌いだから。
私達じゃダメだ、って見切りをつけたんじゃないかな
私達じゃダメだ、って見切りをつけたんじゃないかな
エレナ
あー、それはありそう!
セドリック
ふたりがDGの娘なのは知ってはいたが……
そういう話は、俺達も初めて聞いたな
そういう話は、俺達も初めて聞いたな
エレナ
隠してたわけじゃないんだけどね。
あいつをふたりにも近づけたくなかったし……
あいつをふたりにも近づけたくなかったし……
エレナ
何考えてるかわかんないから、
これからも近寄りたくないな
これからも近寄りたくないな
レベッカ
って言っても……
音楽をやってると、関わらないのは難しいんだけど
音楽をやってると、関わらないのは難しいんだけど
レベッカ
今日みたいに、偶然会っちゃうこともあるし。
周りが勝手に変な噂したりもするしね
周りが勝手に変な噂したりもするしね
エレナ
そうなんだよね~~。
七光りとか、出来レースとかさあ
七光りとか、出来レースとかさあ
杏
(そっか——)
杏
(あの時のふたりの歌が、怒ってるみたいで、
苦しそうに聴こえたのは……)
苦しそうに聴こえたのは……)
杏
(そういう過去があったからなんだ)
杏
(周りの大人達に、勝手にいろいろ決められちゃうのは……
辛かっただろうな)
辛かっただろうな)
杏
……どうして!? どうしてっ!!?
杏
どうしてそんなに大事なこと、私だけ知らされてないの!?
杏
(……私の時とは、全然違うけど——)
杏
——ふたりとも、話してくれてありがと
エレナ
ううん。こっちこそ、聞いてくれてありがと
レベッカ
ごめんね。面倒なことに巻き込んじゃって……
こはね
いえ……! ベッキーさん達のせいじゃないですから
彰人
妙な噂だのなんだのも、気にしなきゃいいだけの話だしな
杏
そうそう! それに……
杏
私もちょっとだけ、気持ちがわかるなあって
杏
だから、なんていうか……私達なら大丈夫!
杏
エレナ達について、誰が何を言っても全然気にしないし……
なんならガツンと黙らせちゃうから!
なんならガツンと黙らせちゃうから!
杏
だから——これからも、ライバルとしてよろしくね!
レベッカ
こっちこそ、よろしくね
エレナ
絶対負けないから、覚悟しててよ!
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