数日後
センター街
みのり
えへへ、まさか遥ちゃんと一緒に帰れる日が来るなんて!
今日で一生分の運を使い切っちゃったかもしれないよ~
今日で一生分の運を使い切っちゃったかもしれないよ~
遥
ふふ、大げさだな
遥
私はもう普通の高校生なんだし……
これからも、時間があったら一緒に帰ろう?
これからも、時間があったら一緒に帰ろう?
みのり
う、うん……!
みのり
あれ? 事務所からメールだ。
『大事なお知らせ』……? なんだろう?
『大事なお知らせ』……? なんだろう?
遥
あ……そういう連絡は緊急なことも多いし、
今確認して大丈夫だよ
今確認して大丈夫だよ
みのり
ありがとう!
えっと、なになに……
えっと、なになに……
みのり
『事前に告知していた通り、来月をもって
選抜メンバーの鈴木ゆいさんが卒業されます』
選抜メンバーの鈴木ゆいさんが卒業されます』
みのり
『それに伴い、選抜メンバーのオーディションを行います』——
みのり
選抜メンバーの、オーディション……!
遥
それって……空いた1枠に入れるかもしれないってこと?
みのり
うん……!
みのり
もし合格できたら、お仕事が増えて、
ライブでももっとたくさんのお客さんに見てもらえるんだ……
ライブでももっとたくさんのお客さんに見てもらえるんだ……
みのり
それって、希望を届けるチャンスが増えるってことだよね!
みのり
ぜったい……、絶対絶対、受かりたいよ!
遥
みのり……
遥
(……眩しいな)
遥
(下積みの期間が長いって言ってたから、
大変なことやつらいことも、いろいろ経験してきただろうし)
大変なことやつらいことも、いろいろ経験してきただろうし)
遥
(これから大きな舞台に立てるかもってなったら、
気持ちも入るよね——)
気持ちも入るよね——)
遥
(グループを背負うことになったら、
もっとつらいことがあるかもしれない。でも——)
もっとつらいことがあるかもしれない。でも——)
遥
……みのりなら、できるよ
みのり
えっ?
遥
——みのりならきっと、たくさんの人に希望を届けられると思う
遥
だから——頑張ってね
みのり
遥ちゃん……
みのり
は、遥ちゃんにそんな風に言ってもらえるなんて、
恐れ多いけど……
恐れ多いけど……
みのり
ありがとう! 今日からもっともっと練習して、
絶対チャンスを掴んでみせるよ!
絶対チャンスを掴んでみせるよ!
数時間後
みのりの部屋
みのり
『——ってことで、今度オーディションがあるんです!』っと!
愛莉のメッセージ
『やったじゃない! 絶対合格するのよ!』
みのり
わあ、もう返事くれた!
えへへ……『はい、がんばります!』
えへへ……『はい、がんばります!』
みのり
ん? 日野森先輩のスタンプ、なんで『こんばんは』なんだろう?
間違えちゃったのかな?
間違えちゃったのかな?
みのり
あ、それよりえーっと……
みのり
『それで、お願いがあるんですけど聞いてもらえませんか?』
みのり
えっ? なんで急にグループ通話に?
と、とにかく出よう!
と、とにかく出よう!
みのり
『もしもーし……』
愛莉
『あ、もしもし? 突然ごめんなさい。
文字打つより、話した方が早いと思って』
文字打つより、話した方が早いと思って』
愛莉
『特に、雫はね』
雫
『ええ……。スマホの操作は苦手だから、助かったわ』
みのり
(あ……そういうことだったんだ)
みのり
(日野森先輩のこういうところ、かわいいなあ)
愛莉
『それで、みのり。お願いってなにかしら?』
みのり
『あ、はい……!
あの、本当にもしよかったらなんですけど……!』
あの、本当にもしよかったらなんですけど……!』
みのり
『わたしの練習を見てくれませんか!?』
愛莉
えっ……
みのり
『桃井先輩は歌もダンスもすっごく上手だし、
日野森先輩は、表情とかポーズがとってもきれいなので!』
日野森先輩は、表情とかポーズがとってもきれいなので!』
みのり
『先輩達に教えてもらえたら、
理想のアイドルにもっと近づけると思うんです!』
理想のアイドルにもっと近づけると思うんです!』
みのり
『だから——よろしくお願いします!』
愛莉
みのり……
愛莉
『——わかったわ!』
みのり
『ほ、本当ですか……!?』
愛莉
『ええ! みのりには元気もらったし……
アイドルは、がんばってる子を応援するのが仕事だもの!』
アイドルは、がんばってる子を応援するのが仕事だもの!』
愛莉
『ビシバシしごいてあげるから、覚悟しなさい!』
みのり
『……はい! 一生懸命がんばります!』
みのり
『あの、日野森先輩は……』
雫
『どこまで力になれるかわからないけど、
私もできるかぎり協力するわ』
私もできるかぎり協力するわ』
雫
『一緒にがんばりましょうね、みのりちゃん』
みのり
『……! ありがとうございます!』
愛莉
『じゃ、さっそくいつ集まるか決めましょうか!』
雫
『そうね……。週末はお仕事があるから、
平日だとありがたいわ』
平日だとありがたいわ』
みのり
『平日ですか……あ! それなら練習場所は——』
翌日 放課後
宮益坂女子学園 屋上
みのり
お疲れさまでーす!
みのり
……って、先輩達まだ来てないみたい。
ちょっと早く来すぎちゃったかな……?
ちょっと早く来すぎちゃったかな……?
みのり
じゃあ、万全の状態で見てもらえるように
ウォーミングアップしてよっと!
ウォーミングアップしてよっと!
遥
……あ、いたいた
みのり
え……は、遥ちゃん!?
みのり
ど、どうして遥ちゃんがここに!?
みのり
……は、遥ちゃん……!?
遥
(……なんだろう? 今、懐かしい感じが……)
遥
あ……屋上で練習するって言ってたから、
差し入れを持ってきたんだ
差し入れを持ってきたんだ
遥
はい、これ。
購買で買ったものだけど、飲み物とクエン酸入りのゼリー
購買で買ったものだけど、飲み物とクエン酸入りのゼリー
みのり
わあ~……! ありがとう、一生大事にするよ!!!
遥
えーと……きちんと食べて、
水分補給してくれたら嬉しいな
水分補給してくれたら嬉しいな
愛莉
お待たせ、みのり!
HRちょっと長引いちゃって……って——
HRちょっと長引いちゃって……って——
遥
雫……と、桃井先輩?
雫
遥ちゃん……!
遥
久しぶり。モデルの仕事、頑張ってるみたいだね
愛莉
……どうして桐谷遥がここに?
もしかして、アンタもみのりの練習を見に来たの?
もしかして、アンタもみのりの練習を見に来たの?
遥
いえ。私は今度オーディションがあるって聞いたので、
差し入れを持ってきただけです
差し入れを持ってきただけです
遥
それじゃあ——がんばってね、みのり
みのり
うん! ありがとう、遥ちゃん!
愛莉
——あ! ちょっと待ちなさい!
遥
……? なんですか?
愛莉
せっかくならアンタも手伝っていかない?
遥
え……
みのり
えっ、ええっ!?
愛莉
みのりをオーディションに合格させるなら、
コーチは多いほうがいいもの
コーチは多いほうがいいもの
愛莉
それも、あの桐谷遥が教えてくれたら百人力でしょ?
遥
……すみません。
ブランクがあって、もう踊れないので
ブランクがあって、もう踊れないので
みのり
そ、そうだよね……
遥
……でも……
遥
動画を撮ったり、曲を流したりするくらいなら
手伝えると思います
手伝えると思います
みのり
えっ……いいの!?
遥
うん。今日はボランティアもないし、時間あるから
みのり
ありがとう……!
遥ちゃんが手伝ってくれたら、練習もっとがんばれるよ!
遥ちゃんが手伝ってくれたら、練習もっとがんばれるよ!
雫
ふふ、よかったわね
愛莉
それじゃあ、さっそく始めるわよ!
みのり
はい! よろしくお願いします!
みのり
ご、ろく、しち——ポーズ!
……って感じなんだけど、どうかな……?
……って感じなんだけど、どうかな……?
愛莉
そうね……振りは問題ないと思うけど、
魅せ方はまだまだ工夫できると思うわ
魅せ方はまだまだ工夫できると思うわ
みのり
魅せ方……?
愛莉
ええ。みのりのダンスのいいところは、
すごく一生懸命で、“届けよう!”って想いが
伝わってくるところだと思うの
すごく一生懸命で、“届けよう!”って想いが
伝わってくるところだと思うの
愛莉
でも、ひとつひとつの動作が粗くなってるのがもったいないから、
磨いていきましょ!
磨いていきましょ!
愛莉
そうすれば、もっとお客さんの目をくぎ付けにできるはずよ!
みのり
ほ、本当!?
愛莉
ええ! 今からわたしが
みのりが一番かわいく見える方法を教えてあげるわ!
みのりが一番かわいく見える方法を教えてあげるわ!
愛莉
(……あら? わたし、前にも似たようなこと言った気が……)
愛莉
(って、そんなわけないわよね。
みのりに教えるのは初めてなんだし)
みのりに教えるのは初めてなんだし)
愛莉
まずは——
雫
ここの振りは、もっと角度も意識したほうがいいと思うわ。
少し変えるだけで、シルエットの美しさが出るはずよ
少し変えるだけで、シルエットの美しさが出るはずよ
雫
一緒に確認しながら、ゆっくりやってみましょう
みのり
はい!
愛莉
……雫。それ、わたしも一緒にやっていいかしら?
みのり
えっ?
愛莉
そういう細かい体の動き、わたしも疎かになりがちだから。
勉強させてもらいたいのよ
勉強させてもらいたいのよ
雫
愛莉ちゃん……わかったわ。
それじゃあ、3人で確認していきましょう
それじゃあ、3人で確認していきましょう
愛莉
ありがと!
雫
(ふふ。研究生の頃は
いつも教えてもらうほうだったから、新鮮ね)
いつも教えてもらうほうだったから、新鮮ね)
雫
(でも、これまで積み上げてきたものが、
愛莉ちゃんやみのりちゃんの役に立って嬉しいわ)
愛莉ちゃんやみのりちゃんの役に立って嬉しいわ)
雫
(……あら? この感覚、どこかで……)
雫
(……! 今のは……)
愛莉
雫、どうしたの?
雫
あ、ううん、なんでもないわ!
雫
いくわね——ワン、ツー、スリー、フォー……
遥
(……みんな、すごく真剣だな)
遥
(私には、応援することしかできないけど——)
遥
(——頑張ってね、みのり)
数時間後
みのり
はあ、はあ……
愛莉
——いい感じね! だいぶ仕上がってきたんじゃない?
雫
ええ。最初よりずっと魅力的になったと思うわ
みのり
ありがとうございます……!
わたしも、ふたりのおかげで
自分の魅せ方がわかってきた気がします!
わたしも、ふたりのおかげで
自分の魅せ方がわかってきた気がします!
愛莉
それじゃあ、仕上げに1曲通してみましょうか
雫
あ……それなら、ポジションも確認したほうがいいかしら?
愛莉
そうね。教えてるうちに覚えてきたし、わたし達も入りましょ
みのり
え……! 桃井先輩と日野森先輩が
一緒に踊ってくれるってことですか!?
一緒に踊ってくれるってことですか!?
愛莉
ふふ、主役はアンタなんだから、
食われないように気張りなさいよ!
食われないように気張りなさいよ!
みのり
ひょ、ひょえ~……、
こんな夢みたいなことがあるなんて……!
全力でがんばらせていただきます!
こんな夢みたいなことがあるなんて……!
全力でがんばらせていただきます!
遥
……じゃあ、私はお客さん役になろうかな
みのり
ええっ!? は、遥ちゃんがお客さん!?
雫
いいわね。見てくれる人がいると、気が引き締まるもの
みのり
遥ちゃんに歌とダンスを見てもらうなんて……
なんか、不思議な感じだなあ
なんか、不思議な感じだなあ
みのり
わたしはずっと、遥ちゃんのパフォーマンスを見て
希望をもらう側だったから
希望をもらう側だったから
遥
みのり……
みのり
でも、だからこそ——
みのり
ありがとうの気持ちをたくさん込めて、精一杯踊るから!
見ててね、遥ちゃん!
見ててね、遥ちゃん!
遥
……うん。楽しみにしてる
遥
それじゃあ、曲かけるね。
3、2、1——
3、2、1——
雫
(みのりちゃんの出だし、いい感じね!)
愛莉
(わたし達が教えたことを活かして、
ダイナミックだけど丁寧に踊れてるわ)
ダイナミックだけど丁寧に踊れてるわ)
愛莉
(……さあ、このあとはどうかしら?)
みのり
(すごい……今までなんとなく踊ってたとこも、
“届ける”ための動きになってる気がする)
“届ける”ための動きになってる気がする)
みのり
(桃井先輩達が、体の使い方を教えてくれたおかげだな)
みのり
(これなら——!)
みのり
(——ねえ、遥ちゃん)
みのり
(……遥ちゃんみたいなアイドルには、
まだまだ遠くて——
くじけそうになっちゃうことばっかりだけど)
まだまだ遠くて——
くじけそうになっちゃうことばっかりだけど)
みのり
(遥ちゃんのキラキラ輝く姿が……
あの時くれた希望が、ずっとずっとわたしの中に残ってて)
あの時くれた希望が、ずっとずっとわたしの中に残ってて)
みのり
(思い出すたびに、何度でも夢をくれるから。
わたしはここまでこれたんだ)
わたしはここまでこれたんだ)
みのり
(だから、少しでもお返しができるように……)
みのり
(その背中を、今度はわたしが押せるように!)
みのり
(全力で届けるよ——!)
遥
……!
愛莉
(……いいじゃない)
愛莉
(わたしのテクニックや、
雫に教わった角度、視線の使い方……
全部を使って、みのりの魅力を出せてる)
雫に教わった角度、視線の使い方……
全部を使って、みのりの魅力を出せてる)
愛莉
(でも、なにより——)
愛莉
(隣で踊ってても、伝わってくるわ)
愛莉
(みのりは今、本気で届けようとしてるのね。
遥に、“明日をがんばる希望”を)
遥に、“明日をがんばる希望”を)
愛莉
(なら、わたしも——
アイドルとして、負けてられないわ!)
アイドルとして、負けてられないわ!)
雫
(みのりちゃん、愛莉ちゃん……)
雫
(……そうだったわね。
私も……ステージに立っていた頃は、
こんな風に踊っていたわ)
私も……ステージに立っていた頃は、
こんな風に踊っていたわ)
雫
(……あの時の想いは、変わらずこの胸に残ってる)
雫
(だから今は、もう一度この想いをのせましょう)
雫
(私の、歌とダンスに——!)
遥
(みんな……)
遥
(……本当に、いいステージだな)
遥
(みんなの想いが、まっすぐに伝わってきて——)
遥
(…………っ)
遥
(……私も…………)
遥
…………
遥
(…………ううん。馬鹿な考えはやめよう)
遥
(今はただ、このステージを——)
みのり
(……不思議だな)
みのり
(桃井先輩も日野森先輩も、
一緒に踊るのは初めてのはずなのに……)
一緒に踊るのは初めてのはずなのに……)
みのり
(前に出ようとしてるなとか、今は譲ってくれてるなとか……
考えてることが、自然と伝わってくる)
考えてることが、自然と伝わってくる)
みのり
(なんだか……ずっと前から、一緒に踊ってたみたい)
みのり
(……でも、なんだろう?
何かが、足りない気がする……)
何かが、足りない気がする……)
みのり
(一緒に踊ってるとドキドキして、気が引き締まって)
みのり
(いつも、わたし達をもっと輝く方へ引っ張ってくれる——)
みのり
(そんな、誰かが——)
みのり
…………っ!
みのり
遥ちゃん!!!
遥
えっ……
みのり
——一緒に踊ろう!
遥
…………!
みのり
……ねえ、遥ちゃん!
ステージに上がらない? 今、すっごく綺麗な景色が見れるよ!
ステージに上がらない? 今、すっごく綺麗な景色が見れるよ!
みのり
それなら、わたしの手を掴んでっ!
遥
(この、記憶は……)
みのり
がんばろうね、遥ちゃん!
今日のステージ——最後まで駆け抜けよう
今日のステージ——最後まで駆け抜けよう
みのり
……一緒に!
遥
(でも……)
遥
(でも、私は……)
遥
……っ!
ミク
『遥ちゃんは——どうしたい?』
遥
(…………わからない)
遥
(わからないけど……)
遥
(今は——この手を取りたい)
遥
(私も、みんなと一緒に——!)
みのり
……! 遥ちゃん!
愛莉
なによ、踊れるんじゃない
遥
……ううん。もう、無理だと思ってた
遥
(でも……どうしてだろう)
遥
(この4人でなら——)
遥
(そっか……そうだよね)
遥
——4人でなら、何度でも……
いつまでも、ステージに立てるよね
いつまでも、ステージに立てるよね
みのり
遥ちゃん……みんな……!
雫
……どうして、忘れてたのかしら
雫
懐かしくて、当然よね
愛莉
ええ。だって——
わたし達、本当はずっと4人で踊ってたんだもの
わたし達、本当はずっと4人で踊ってたんだもの
みのり
うん! アイドルとして——
みのり
MORE MORE JUMP!として!
愛莉
……でもこれ、どういう状況なのかしら?
みのり
うーん……セカイにいたことは、
なんとなく覚えてるんだけど……
なんとなく覚えてるんだけど……
遥
希望の花に触れた時みたいに、
セカイが夢を見せてる……とか?
セカイが夢を見せてる……とか?
雫
わからないけど……
雫
ねえ、みんな。
よければ、もう1曲踊らない?
よければ、もう1曲踊らない?
愛莉
——そうね。
わたしも今、踊りたくてウズウズしてるわ
わたしも今、踊りたくてウズウズしてるわ
遥
私も
遥
お客さんはいないけど……最高のステージにしよう
遥
この4人で!
みのり
——うん!
Next Chapter: これからも、アイドルとして