司の部屋
司
(……絶望……)
司
(王子の絶望をどうイメージし、どう表現するか。
それが、このショーの鍵になる)
それが、このショーの鍵になる)
司
(そしてそのためにはまず、旭さんも言っていたように、
『自分が一番絶望する状況』を掴む必要がある)
『自分が一番絶望する状況』を掴む必要がある)
司
(だが——)
司
想像ができん……
司
(……何度か、絶望しかけたことはある)
司
(病気で苦しむ咲希に何もしてやれなかった時。
初めてのショーが失敗に終わった時。
自らの不甲斐なさを知った時——)
初めてのショーが失敗に終わった時。
自らの不甲斐なさを知った時——)
司
(なんとオレは無力かと……そう感じた。
しかし——)
しかし——)
司
(立ち上がれないほど絶望はしなかった。
無力でも、まだ立ち上がりたいと思えた)
無力でも、まだ立ち上がりたいと思えた)
司
(だが……)
司
(このシーンでのブレス王子は、完全に絶望しきっている。
動くこともできないほどに)
動くこともできないほどに)
司
(それほどの絶望を感じる状況——)
司
ダメだ……。
行き詰まってしまったな……
行き詰まってしまったな……
司
……はぁ。
もう遅いが……セカイに行って頭を切り替えるか
もう遅いが……セカイに行って頭を切り替えるか
司
ん? 誰かの声……?
司
父さん達はもう寝たはずだが——
司
は……っ!
も、もしや……!?
も、もしや……!?
天馬家 リビング
司
泥棒ならば、返り討ちにせねば……!
いや、その前に通報か……!?
いや、その前に通報か……!?
司
いずれにせよこの天馬司、なんとしても家族を守——
む?
む?
テレビCM
『——わたしの保険はこれで決まり!
フラワー生命!』
フラワー生命!』
司
な……なんだ。テレビか
司
誰かが消し忘れていたようだな。
まったく。リモコンはと……
まったく。リモコンはと……
アナウンサー
『——ここからはワールドニュースです』
司
ん?
アナウンサー
『先週から本格化した軍事侵攻により、
現地では深刻な影響が出ています』
現地では深刻な影響が出ています』
アナウンサー
『両国の対立は激化の一途を辿っており、
国連は報復の連鎖が起きることを懸念して————』
国連は報復の連鎖が起きることを懸念して————』
司
あ……
司
戦争か……
司
(……これこそ、想像がつかんな)
司
(——生まれ育った場所に、爆弾が落ちる)
司
(街や学校が破壊され、
人々の顔が悲しみと怒りに染まる)
人々の顔が悲しみと怒りに染まる)
司
(当たり前の日常が一変し、
そこでは笑顔も消え失せ——)
そこでは笑顔も消え失せ——)
司
……あまり積極的に想像したくはないな
司
(だが……)
司
(いつか、こんな苦しみのただ中にいる人達も
笑顔にできるようになりたい)
笑顔にできるようになりたい)
司
(そのためにも、もっと力をつけて
役を掴めるようになりたいが——)
役を掴めるようになりたいが——)
司
……まだまだ、道は遠いな……
ワンダーランドのセカイ
司
……オレが一番絶望する状況……
司
(……何度か考え、
『実際どうなったら絶望するか』は、見えてきた気はする)
『実際どうなったら絶望するか』は、見えてきた気はする)
司
(オレが絶望するとすればきっと——)
司
いや、しかしそれでは……
???
ぴょん、ぴょん、ぴょーん……
司
ん?
また何か聞こえたような……
また何か聞こえたような……
ミク
ぴょんぴょーん!!
司くん、こんばんぴょーん!!
司くん、こんばんぴょーん!!
司
どわっ!
ミ、ミク!!
ミ、ミク!!
司
な、なんだそのぴょんぴょんというのは!
ミク
えへへ、うさぎさんのショーを考えてたら、
いつの間にかぴょんぴょんしちゃってたんだ~♪
いつの間にかぴょんぴょんしちゃってたんだ~♪
司
そ、そうか……。
なんというか、相変わらず自由だな……
なんというか、相変わらず自由だな……
ミク
えへへ、それほどでもないぴょん~♪
司くんは練習に来たの?
司くんは練習に来たの?
司
ああ……。
王子への理解を深めようと思ってな
王子への理解を深めようと思ってな
ミク
わあっ☆
それって、コンテストのショーの王子さまだよね?
それって、コンテストのショーの王子さまだよね?
ミク
楽しみだな~!
王子さまみたいな役、司くんすっごく上手だもんね☆
王子さまみたいな役、司くんすっごく上手だもんね☆
司
しかし……これがなかなかうまくいかん
ミク
そうなの!?
なんでなんでーっ!?
なんでなんでーっ!?
司
……簡単に言えば、
まだ想像力が足りんのだろうな
まだ想像力が足りんのだろうな
司
今日は、王子の絶望について考えていたんだが——
ミク
なるほど~。
司くんは、どうなれば絶望するのかなって考えてたんだね!
司くんは、どうなれば絶望するのかなって考えてたんだね!
司
……一応、自分なりの答えは出ているんだがな
ミク
えっ? そうなの?
司
ああ。
オレが絶望するとすれば——
オレが絶望するとすれば——
司
それは、夢を失う時だ
ミク
それって、スターになる夢がなくなっちゃうってこと?
司
そうだ。
正確には、夢を諦める時だろうな
正確には、夢を諦める時だろうな
司
一番の夢を諦める。
……そうなったら、きっとオレは深く絶望するだろう
……そうなったら、きっとオレは深く絶望するだろう
司
これからどうすればいいのか、
何を目的に生きていけばいいのかわからず……
己を見失うかもしれない
何を目的に生きていけばいいのかわからず……
己を見失うかもしれない
司
だから絶望をイメージしたいならば、
夢を諦める瞬間を想像すればいい
夢を諦める瞬間を想像すればいい
司
しかし——ここでひとつ問題が出てくる
ミク
問題?
司
夢を諦める自分が想像できない、ということだ
ミク
あ……そっか!
ミク
司くんは、絶対絶対スターになる!って決めてるもんね!
司
そのとおりだ!
司
たとえば事故にあって歩けなくなっても、
声が出なくなっても——オレは、スターになるという夢を
諦められないだろう
声が出なくなっても——オレは、スターになるという夢を
諦められないだろう
司
何があっても夢を追い続ける!と覚悟したからな!
ミク
司くん……
ミク
えへへっ♪
司くんはやっぱり司くんだね~☆
司くんはやっぱり司くんだね~☆
司
……そういう自分自身の決意は誇らしく思う
司
しかし、そうなると結局、王子の絶望を掴めなくてな。
……これからどうするべきか……
……これからどうするべきか……
司
…………。
これでは、旭さんに追いつけんな
これでは、旭さんに追いつけんな
ミク
旭さん?
あ……そういえば、一緒に練習するって言ってたよね!
あ……そういえば、一緒に練習するって言ってたよね!
司
ああ。おかげでいろいろと勉強になっている
司
しかし……同時に思い知らされる。
あの人は、オレよりもずっと速く、遠くへ進んでいるのだと
あの人は、オレよりもずっと速く、遠くへ進んでいるのだと
ミク
司くん……
司
だが——ともかく、やるしかない
司
進むことでしか、道を切り拓くことはできないからな
ミク
あ…………
ミク
(……今日の司くん、
いつもよりずーっと遠くを見てる)
いつもよりずーっと遠くを見てる)
ミク
(きっと、ほんとにほんとに、
旭さんが遠くにいるのが、悔しいんだろうな)
旭さんが遠くにいるのが、悔しいんだろうな)
ミク
(でも、悔しい気持ちも悲しい気持ちもぐーって飲み込んで、
ちょっとずつ前に進もうとしてて………)
ちょっとずつ前に進もうとしてて………)
ミク
……すっごく、かっこいいなあ
司
ん? 今、何か言ったか?
ミク
えっとね——あっ!
ミク
ミクにじゃんけんで勝ったら教えてあげるっ☆
司
なぬ?
そう言われると余計気になるが——
そう言われると余計気になるが——
???
——司く~~~~ん!!
ミク
ひょ?
この声って——
この声って——
えむ
あっ、ミクちゃんもいる!
こんばんわんだほーい!
こんばんわんだほーい!
類
やっぱりここにいたんだね
司
お前達……どうしてここに!?
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