翌日
絵名
——おはようございます
二葉
あ……絵名ちゃん、おはよう!
二葉
コンクールの結果が出たみたいだよ。
まだ私も見てないんだけど……
まだ私も見てないんだけど……
絵名
そうなんだ……
絵名
——じゃあ、一緒に見に行かない?
みんながどんな絵を描いたのか気になるし
みんながどんな絵を描いたのか気になるし
二葉
……うん、行こう!
こっちだよ
こっちだよ
絵名
(——大丈夫)
絵名
(今回の絵は……出せたと思う)
絵名
(私にとっての手、私の見た世界を)
絵名
(だから、きっと…………)
絵名
……あ……
絵名
(C評価……)
絵名
そっか……
絵名
…………そっか
雪平
……夏野さん、東雲さんを見ませんでしたか?
二葉
え、絵名ちゃんですか?
えっと……
えっと……
二葉
あれ? いないですね。
さっきまでいたんですけど……
さっきまでいたんですけど……
雪平
…………
雪平
——東雲さん
絵名
あ……
絵名
え、先生。どうして……
雪平
面談の時間だったので、探していました
絵名
あ、そっか……
絵名
あはは、すみません。
ちょっと外の空気を吸いたいなって思って
ちょっと外の空気を吸いたいなって思って
雪平
何を考えていたんですか?
絵名
えっと……
絵名
……コンクールのことを、ちょっと考えていて
雪平
ああ、あの絵ですね
絵名
はい
絵名
……私、すごく楽しかったんです
絵名
今まで、絵を描くのは
しんどいことも多かったんですけど
しんどいことも多かったんですけど
絵名
今回は本当に、本当に楽しくて——
絵名
先生のおかげで全力を出せたし、
納得のいく絵を描けたなって思うんです
納得のいく絵を描けたなって思うんです
絵名
だから、すっごく満足してて……!
雪平
そうですか
絵名
はい! でも……
絵名
でも……あれが、私の全部だったから
絵名
それでも、Bにも届かないのなら——
やっぱり無理なのかもなって
やっぱり無理なのかもなって
雪平
無理、とは?
絵名
……私……
絵名
————東美に、行きたいって思ってたんです
絵名
日本一の場所で、絵を学びたいって……思ってて
絵名
でも……っ
絵名
でも、東美を目指してる人達は、
私よりも、ずっといい絵が描けて——
私よりも、ずっといい絵が描けて——
絵名
だから、コンクールで結果を出せるくらいにならなきゃって
思ってたんですけど
思ってたんですけど
絵名
全力を出しても、C評価で
絵名
やっぱり……
絵名
…………っ
絵名
……っでも、……でも……!
絵名
それでも、東美に行きたいんです……!
絵名
無理だって思うけど、
私なんかが目指してもって、思うけど……っ
私なんかが目指してもって、思うけど……っ
絵名
諦めたく、ないんです……っ!
雪平
……たしかに、東美を目指すには実力が足りませんね
雪平
ですが——
雪平
あの絵には、間違いなく
あなたの世界が描かれていた
あなたの世界が描かれていた
絵名
……!
雪平
絵の技術はすべて理論で説明できるとお話ししましたね。
また、理論では測れない絵の魅力というものがあることも
また、理論では測れない絵の魅力というものがあることも
雪平
評価点は、理論に基づいてしかつけようがありません。
ですが、どれだけ人の心に届く絵なのかは、また別の評価です
ですが、どれだけ人の心に届く絵なのかは、また別の評価です
雪平
そして東美の受験では、
理論以外の評価もまた大事になります。すなわち——
理論以外の評価もまた大事になります。すなわち——
雪平
東雲さんが自身の武器をさらに磨いていけるなら、
東美に合格する可能性はゼロではない——
東美に合格する可能性はゼロではない——
雪平
私は、そう思います
絵名
え……
雪平
もちろん、今の東雲さんには足りないものが多すぎる。
現時点のC評価は、そのことを示しています
現時点のC評価は、そのことを示しています
雪平
それでも、東雲さんが進みたいのならば——
雪平
私は、辿り着くために必要なものを伝えていきます
絵名
先生……
雪平
さて……どうしますか?
絵名
よろしく、お願いします……!
絵名の部屋
絵名
(東美に行きたいって思ってたけど、
ずっと踏ん切りがつかなかった)
ずっと踏ん切りがつかなかった)
絵名
(今はまだ、実力がないからって
自分に言い訳して)
自分に言い訳して)
絵名
(でも——決めた)
絵名
(私は、東美を目指す)
絵名
(きっと、たくさん挫折する。
実力がないことが、もっと嫌になる)
実力がないことが、もっと嫌になる)
絵名
(でも……今より本気で、絵と向き合いたいから)
絵名
(だから——)
絵名
あ……
SNSコメント
『えななん、最近更新ないな』
『この間の写真めっちゃ可愛かった!』
『この間の写真めっちゃ可愛かった!』
絵名
(……苦しくなると、自撮りに逃げちゃう癖。
やっぱり、なかなか変えられないな)
やっぱり、なかなか変えられないな)
絵名
(今回だって、何度もそうなりかけたし……)
絵名
(でも……)
絵名
(今まで以上に本気でやるんだから——)
絵名
(もう、終わりにしなきゃ)
絵名
(もう……)
絵名
…………………………はぁ
絵名
……なくなっちゃった
絵名
なんか、こうやってみると一瞬だな
絵名
(でも……よかった)
絵名
(…………もうこれで、逃げなくてすむんだ)
絵名
——今まで、ありがとね
絵名
さてと、そろそろ時間だし……
ニーゴの作業しよっかな
ニーゴの作業しよっかな
絵名
『みんな、もういる?』
瑞希
『えななんえななんえななん!!!』
絵名
『ちょ、うるさ! 何、落ち着いてよ』
瑞希
『ねえ、アカウント乗っ取られてない!?
消えてるよ!?』
消えてるよ!?』
絵名
『え、もう気付いたの? 早くない?』
瑞希
『えっ!? どういうこと!?』
まふゆ
『アカウントって自撮りの方?
絵のやつは残ってるけど』
絵のやつは残ってるけど』
奏
『あれ、本当だ。消えてるね』
奏
『何かあったの?』
絵名
『あー……うん。
そんなに大したことじゃないんだけど』
そんなに大したことじゃないんだけど』
絵名
『実は、東美を目指すことにしたんだ。
だからね——』
だからね——』