1
ニド秘書官の声
『馬鹿な……。
私が、こんな手に……』
2
妖精の声
『——やった!
ニドって人、眠り草で眠ったよ!』
3
ブレスの声
『はぁ、剣を弾き飛ばされた時はどうなるかと思ったが……。
どうにかなったようだ』
4
ブレスの声
『しかし、もたもたはしていられん。
洞窟に捕われているハートを迎えに行って、頂上を目指そう!』
5
妖精の声
『うん!』
6
寧々
(————いい調子)
7
寧々
(お客さんの反応もすごくいい。
一緒に笑ったり、泣いたり、ハラハラしてくれてる)
8
寧々
(あとは……ラストだけ)
9
寧々
(……あの時と似てるな)
10
寧々
(このショーが最高のものになるかどうかは、
主役のわたしにかかってて——)
11
寧々
(……ううん。そうじゃない)
12
寧々
(わたしは、このショーのラストを飾れるんだ)
13
寧々
(みんなの心に、このショーがいつまでも輝き続けるように
魔法をかけられる。それが主役の特権で——使命)
14
寧々
(だから——)
15
(……驚いた)
16
(気づいたら引っ張り込まれて……
あっという間にラストシーンになった)
17
(もう、リハとはまるで違う舞台だ)
18
(……たった1日で、いや、一瞬でここまで変わる。
それはきっと——)
19
ハート
『……嫌!
嫌よブレス! 駄目!』
20
ハート
『この冒険が終わったら、
あなたの秘密基地に行くって言ったじゃない!
小舟で川を下って、小さな島で夜通し語り合おうって……』
21
ハート
『……永遠の愛を君に捧げるって言ったじゃない!!』
22
ブレス
『……ハート』
23
ハート
『ブレス……!』
24
ブレス
『…………すまない』
25
ハート
『ブレス……?』
26
ハート
『ブレス! ブレス!!』
27
観客達
声って……
28
観客達
もしかして……私達に……?
29
観客達
おうじさま、がんばってー!!
30
観客達
あ、ちょっと……!
31
観客達
負けんなー!!
32
ハート
『聞こえる……』
33
ハート
『声が……!!』
34
…………
35
(…………輝いてる)
36
(舞台が、寧々ちゃんを中心に——)
37
ハート
『聞かせて、もっと!!』
38
ハート
『ブレスの絶望を、打ち払って!!』
39
ハート
『ブレス、聞こえる!?
誰かが——みんながあなたを呼んでる!』
40
ハート
『あなたにいてほしい、
諦めないでって……呼んでるの!!』
41
ハート
『ブレス!!』
42
ハート
『ブレス……!!』
43
ブレス
『ハート……』
44
ブレス
『……たくさんの声が聞こえた』
45
ブレス
『ハートが呼んでいたのか?』
46
ハート
『ううん。私だけじゃない』
47
ハート
『この世界が、呼んでくれたの』
48
ブレス
『……世界が……』
49
ブレス
『……ふふ、悪い夢から覚めたような気分だ』
50
ブレス
『呪いに負けてしまうような、弱い俺ですまない』
51
ブレス
『だが……ハートがいれば、
どんなことにも立ち向かえる気がする。だから——』
52
ブレス
『これからも……一緒にいてくれないか?』
53
ハート
『——バカ!
本当にバカ!』
54
ハート
『あなたが抱えてた辛さも、悩みも……
最初からちゃんと、私に分けてくれたらよかったのに!』
55
ブレス
『ハート……』
56
ハート
『……一緒に考えよう。
どうしたらみんなが、幸せに暮らしていけるのか』
57
ハート
『それで——本物のハッピーエンドを、私達の手で作るの』
58
ハート
『お姫様と王子様は、苦難を乗り越えて、
みんなと幸せに暮らしましたとさ、って!』
59
リン
『あ……』
60
リン
『今……寧々ちゃん、ハート姫に……』
61
リン
『……よかった』
62
リン
『よかったね……寧々ちゃん……!』
63
…………
64
(そうか、これが——)
65
(君達の力か)
2週間後
66
ううむ……!
やはり旭さん達の公演は最後まで素晴らしかったな!
67
えむ
うんうん!
わわわ~!で、びゅんびゅんぽぽ~ん!だったよねっ!
68
最初から完璧に仕上げられていたけど――
見るたびに新しい発見があって解像度が上がっていく……。
そんな、常に新鮮な驚きのある公演だったね
69
寧々
うん。
みんな本当にすごかったな
70
寧々
だけど——
71
寧々
わたし達の公演も負けてなかったよ
72
ああ!
えむの家での打ち上げパーティーでも見たが、
SNSの感想は同じくらい好評だったしな!
73
もう再演を望む声もあって……
本当にありがたいね
74
えむ
えへへ、それに~~~……ぽちぽちっと!
75
えむ
寧々ちゃんの名前で検索すると、
いーっぱい名前、出てくるようになったもんね!
76
寧々
あ……それはちょっと照れるかな……
77
照れることなどないだろう!
お前の名を世に知らしめたのだぞ!?
せっかくだし音読してやろう!
78
寧々
え!? なんで!?
79
え~
『お姫様役の草薙寧々って子すごかった!
最後泣いちゃったよ!』
80
寧々
ちょ……!
81
えむ
あたしもあたしも!
『アークランドのショーのお姫様は草薙寧々ちゃん、
王子様は天馬司くんっていうんだって! 覚えておこ~!!』
82
寧々
も、もういいってば!
83
ハッハッハ!
脳裏に深く刻みこんでくれ!
84
えむ
『寧々ちゃんのファンになっちゃった!
個人アカウントってないのかな!?』
85
たしかに、宣伝用に作ってもよさそうだね。
寧々はゲーム用のちょっと口の悪いアカウントしか
作っていないようだし——
86
寧々
なんで知ってんの!?
87
寧々
っていうかもういいから!
自分でも毎日ちゃんと確認してるし!
88
ん? そうなのか?
89
寧々
そりゃまあ、感想とかちゃんと見たいからね
90
それで……どうだい?
感想を見た感想は
91
寧々
…………うん
92
寧々
頑張って、本当によかったって思ったよ
93
寧々
それから——
94
寧々
わたしを信じてくれて、ありがとう
95
仲間なのだからな!! 信じるのは当然だろう!!
96
えむ
そうだよ寧々ちゃん!
あたし達は1円タクシーだもん!
97
一蓮托生かな?
98
寧々
ふふっ
99
寧々
わたし、今回の公演で、
今までよりもっと自信が持てた
100
寧々
『わたしはどんな困難も乗り越えていける』
『世界に羽ばたいていける』って
101
えむ
寧々ちゃん……
102
寧々
だから——
103
寧々
これからもよろしくね!
104
司・えむ・類
『ああ!』
『うん!』
105
…………
106
アークランドキャストB
ふぅ……。
今回も千秋楽までバッチリだったね!
107
アークランドキャストA
おう!
あ、そういえば打ち上げって、いつもの店だよな?
108
アークランドキャストB
そうだよ。もう移動しちゃおっかって……
旭くん、どうかしたの?
109
あ……。
いや、少し考えごとをしていて
110
アークランドキャストA
……何か気になるところでもあったか?
111
アークランドキャストB
もしあるなら、言ってね。
次の公演に生かしてみせるから
112
いや、何があるっていうわけじゃないんだ。
ただ……
113
——ごめん。
打ち上げ、少し遅れて行っていいかな。
少し振り返りしたくって
114
アークランドキャストA
……そうか。
旭がひとりで考えたいなら、それがいいな
115
アークランドキャストA
んじゃ、遅れるって幹事に伝えておくよ
116
ありがとう。
じゃあ、また後で
117
…………
118
(今回の公演も、たくさん実りがあった)
119
(初めて完全に若手だけでやった公演だけど、
みんなそれぞれ得意分野を活かせて……)
120
(だけど——)
121
(……本当に俺は、このままでいいんだろうか)
122
(——今の環境も、仲間も、俺にはもったいないぐらいだ)
123
(ただ……)
124
(俺の目指す、『世界をひとつにするショー』は、
そう簡単に作れるものじゃない)
125
(まずは俺自身が、
それを体現できるほどの役者になる必要がある)
126
(そしてそれには——)
127
(あんな仲間が必要なんじゃないか……?)
128
(ショーのために本気でぶつかって、
時に叱りつけてくれる——そんな仲間が)
129
(……でも——)
130
???
——やぁ。どうしたんだい?
131
え……
132
千秋楽も無事に終わったっていうのに、
ずいぶん暗いじゃないか
133
榊さん……いらしてたんですね
134
はは、審査員もやらせてもらったしね。
どっちも千秋楽は見に来てたよ
135
それより……何か思い詰めている顔だね
136
——よければ、相談に乗ろうか?
137
実は——