数日後
1
ミュージシャンB
『お、あいつ……』
2
ミュージシャンA
『ああ! ちょっと前、朝から晩まで
ずっとひとりで歌ってたヤツだな』
3
ミュージシャンB
『だな。最近見なかったけど、また来たのか』
4
社長
今日で、約束の2週間だ
5
彰人
……はい
6
社長
帰りの飛行機の時間を考えると、あまり余裕はない。
心残りのないように
7
彰人
わかりました
8
彰人
(——どっちにしろ、一発勝負だ)
9
彰人
(冬弥に特急でアレンジ仕上げてもらって、
あいつらと練習して……やれるだけのことはやった)
10
彰人
(他のチーム目当てで来てるやつも、
ただぶらついてるやつも……)
11
彰人
(…………全員、わかせる。オレの歌で)
12
彰人
♪————! ♪——————……
13
観客達
『……ん? なんか、変わったリズムの歌だな』
14
観客達
『何このリリック、面白すぎ!』
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彰人
♪———! ♪————!
♪——————! ♪————!
16
社長
『…………ほう』
17
社長
(上手いな。物珍しさで、何人かが足を止めた)
18
社長
(ふたつの言語が頻繁に入れ替わりながら
混ざることで、独特のリズムと響きを生んでいる)
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彰人
♪——————————!
20
彰人
♪————! ♪————!
21
彰人
(……少しずつ、周りの温度が上がってる)
22
彰人
(けど、まだだ。
誰よりもわかせたって言うには、全然足りねえ)
23
彰人
(もっとだ。もっと——)
24
彰人
(全部、燃やせ!!)
25
彰人
♪——————————————!!!
26
社長
『…………っ!』
27
観客達
『うわ。今、ガツンってきた……!』
28
観客達
『ひゅー、サイッコー!!』
29
社長
(…………驚いた)
30
社長
(リズムに同調して、少しずつ観客達の空気が——
熱が、彼に集中していっている)
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彰人
♪————————————!!
32
彰人
(言葉がろくに通じなくて、名前すら知られてなくても——
そんなもん、関係ねえ)
33
彰人
(這いつくばってでも、できることは全部やる)
34
彰人
(必要なもんをかき集めて、超えてやる)
35
彰人
(………………いけ)
36
彰人
(いけ————!)
37
彰人
♪————————————!!!
38
彰人
はあ……はあ……
39
彰人
(——集中しすぎて、途中から周り見る余裕がなかったな)
40
彰人
(今までよりも、わいてる感触はあったが……)
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ミュージシャンA
『おいおい、めちゃくちゃ化けたじゃねえか!』
42
ミュージシャンB
『思わず聴き入っちゃったよ。
すごかったな!』
43
彰人
あ……
44
彰人
『ありがとう、ございます』
45
観客達
『なあ、もっと歌ってくれないか!?』
46
観客達
『っていうかキミ、アーティスト名は?
曲とか出してる!?』
47
彰人
(やべえ。早口だとほとんど聞き取れねえ……)
48
彰人
『えっと……いつもは
Vivid BAD SQUADってチームで歌ってます』
49
彰人
『他の曲を歌うのは……あー……』
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社長
『——すまないが、もう時間なんだ。
だが、きっとまた聴く機会はある』
51
彰人
アランさん……
52
社長
どのチームより観客達をわかせる——
文句なく、達成だ。おめでとう
53
彰人
——本当に、ありがとうございました
54
社長
大事なのは、目的地にたどり着くこと……。
それを、こんな形で達成するとは驚いた
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彰人
……チームメンバーのおかげです
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彰人
あと、今回は曲のインパクトに頼っちまったので。
二度目はないと思ってます
57
社長
たしかに、予想外の方向からのアプローチだった
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社長
けれど、単にインパクト勝負であれば
あんな風に最後まで盛り上がることはないよ
59
社長
観客の心に、君のひたむきな熱が届いたはずだ
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彰人
次は、実力だけでわかせてみせます
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彰人
英語も……もっと勉強しとくんで
62
社長
そうか。なら、まずは契約に関する英語を学んでもらおう
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彰人
あの、それって……
64
社長
正式な申し込みは、チーム全員がいる場にとっておくが——
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社長
Vivid BAD SQUADと契約したい。
……君達の未来を、特等席で見てみたくなったよ
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彰人
——よろしくお願いします
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彰人
(これで——RUSH BEATSに出場できる)
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彰人
(あいつらにも心配かけたが……胸張って報告できそうだ)
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彰人
(それに——)
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彰人
(これでやっと、スタートラインだな)
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彰人
(RUSH BEATSで勝ち進めなきゃ、世界には届かねえ)
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彰人
(ここからが——勝負だ)