瑞希
『……正直、この問題に正解はないんじゃないかって思うんだ』
瑞希
『それに……まふゆとまふゆの家族のことだから、
ボク達が口出しできる問題じゃないってことも』
ボク達が口出しできる問題じゃないってことも』
奏
『……うん』
絵名
『その上で、ふたりで考えてみたんだけど——』
絵名
『……本当なら、奏が言うような形が一番だとは思うんだ』
絵名
『お互いに、自分の気持ちとちゃんと向き合って
家族一緒にいられたならって』
家族一緒にいられたならって』
奏
『……え?』
絵名
『もし傷つけ合っても、ちゃんと話し合って前に進めるなら……
それが一番いいって思うの』
それが一番いいって思うの』
絵名
『でも……』
絵名
『今じゃなきゃダメなのかな、って』
奏
『……どういうこと?』
絵名
『私達は、話しか聞いてないけど……
まふゆの様子を見てると、お母さんと会う度に
傷ついてる気がするの』
まふゆの様子を見てると、お母さんと会う度に
傷ついてる気がするの』
絵名
『だからってわけじゃないんだけど……』
絵名
『あのね、私達——
私と瑞希は、の話なんだけどさ』
私と瑞希は、の話なんだけどさ』
奏
『……うん……』
絵名
『……少し前、瑞希がニーゴを離れてた時、あったでしょ?』
絵名
『あの時……私、ずっと考えてたの』
絵名
『どうして瑞希を引き留めなかったんだろう。
……せめてあの瞬間、何か言えてたら、って』
……せめてあの瞬間、何か言えてたら、って』
奏
『あ……』
絵名
『でも、今は……
あの時、無理に話そうとしなくて、
よかったかもなって思うんだ』
あの時、無理に話そうとしなくて、
よかったかもなって思うんだ』
奏
『え?』
絵名
『あの時の私は、まだ全然、気持ちが整理できてなくてさ』
絵名
『瑞希の気持ちもちゃんと考えられてなかったし、
自分自身どうしたいのかも……
混乱して、よくわからなくなってたの』
自分自身どうしたいのかも……
混乱して、よくわからなくなってたの』
絵名
『そんな状態で、瑞希のそばにいたらきっと……
もっと傷つけてたと思うんだ』
もっと傷つけてたと思うんだ』
絵名
『それこそ……取り返しのつかないくらい』
瑞希
『……それは、ボクも同じでさ』
瑞希
『あの時、いろいろグチャグチャになってて。
誰かの言葉を受け入れる余裕もなくなっちゃっててさ』
誰かの言葉を受け入れる余裕もなくなっちゃっててさ』
瑞希
『多分、何を言われても……
うまく受け入れられなかったんじゃないかって思うんだ』
うまく受け入れられなかったんじゃないかって思うんだ』
瑞希
『だから、なんていうんだろ……』
瑞希
『ちゃんと向き合うのにも、時間が必要だと思うんだ』
瑞希
『ふたりがちゃんと心を落ち着かせて、
次の行動を決めるための時間が』
次の行動を決めるための時間が』
絵名
『……うん』
絵名
『だから——』
絵名
『“距離を置く”っていう選択肢も、
あるんじゃないかな……って』
あるんじゃないかな……って』
奏
『…………』
瑞希
『も、もちろん、ずっととは言わないよ!』
瑞希
『でも……今の状況を、
急いでなんとかしようって思わなくても
いいんじゃないかって感じたんだ』
急いでなんとかしようって思わなくても
いいんじゃないかって感じたんだ』
瑞希
『時間と距離があれば、
自分の心を整理できるんじゃないかって思うし』
自分の心を整理できるんじゃないかって思うし』
絵名
『もしかしたら離れてる間に、
お互い、人間的に成長できるかもしれないしね』
お互い、人間的に成長できるかもしれないしね』
奏
『成長……』
奏
(……たしかに、まふゆのお母さんは最初に会った時と
この前会った時だと、印象が違った)
この前会った時だと、印象が違った)
奏
(……離れてる時間の中で、心境に変化があったのかも)
奏
(……でも……)
奏
『……一緒にいられる方法は、ないのかな……?』
奏
『ふたりはお互いに一緒にいたくて、愛し合ってるから……』
奏
『ふたりとも、そうしたいって思ってるだろうし
家族なんだから——』
家族なんだから——』
絵名
『うん……』
絵名
『でも……やっぱり、今すぐは難しいんじゃないかな』
絵名
『私は、まふゆとは違って
父親のことは嫌いだったんだけどさ』
父親のことは嫌いだったんだけどさ』
絵名
『そのせいで、見えてなかったものとか
逆に、見ないようにしてた気持ちがあったなって
……最近になって、ようやく気づけたんだ』
逆に、見ないようにしてた気持ちがあったなって
……最近になって、ようやく気づけたんだ』
絵名
『だから——やっぱり、自分の考えを変えるのって
すごく大変なんだって思うの』
すごく大変なんだって思うの』
奏
『…………』
瑞希
『それに……まふゆも、きっとお母さんも、
頑張って向き合ってるけど』
頑張って向き合ってるけど』
瑞希
『向き合うたびに、
傷が深くなることもあるかもって思って』
傷が深くなることもあるかもって思って』
奏
『あ……』
瑞希
『……もしかしたら、向き合うことで
変わっていくこともあるのかもしれないけどね』
変わっていくこともあるのかもしれないけどね』
瑞希
『それは、ボク達にはわからないよ』
瑞希
『ただ……』
瑞希
『ずっと向き合い続けるって選択肢以外も
あるんじゃないかなってことを伝えたかったんだ』
あるんじゃないかなってことを伝えたかったんだ』
奏
『……そっか……』
奏
(……たしかに、そうだ)
奏
(怖いって気持ちも、お母さんを大事に想う気持ちも……)
奏
(まふゆの心の、すごく深い場所にあって——
きっと、簡単には変えられない)
きっと、簡単には変えられない)
奏
(わたしは……本当は、家族なら
一緒にいられる形で解決できればいいと思ってた)
一緒にいられる形で解決できればいいと思ってた)
奏
(お互いに愛してるのなら、きっと……
一緒にいるのが一番幸せだって)
一緒にいるのが一番幸せだって)
奏
(だけど——)
奏
(…………どうするのが、一番いいんだろう)
奏
(わたしは——)
瑞希
『……ごめんね、こんな話しちゃって』
瑞希
『でも、これは本当にボク達の考えで、
正しいってわけじゃないと思うから』
正しいってわけじゃないと思うから』
奏
『……うん、わかってる』
奏
『でも、話してくれて助かったよ。
わたしだけだと、本当にわからなかったから』
わたしだけだと、本当にわからなかったから』
絵名
『ただ……これをまふゆに、どういう風に言えばいいのか、
そもそも伝えるべきなのかどうか、悩んでるの』
そもそも伝えるべきなのかどうか、悩んでるの』
絵名
『……これをまふゆに伝えたら、
まふゆの人生が変わっちゃうかもしれないし』
まふゆの人生が変わっちゃうかもしれないし』
絵名
『だけど、奏には——伝えておこうと思って』
奏
『……ありがとう』
奏
『わたしも……どうするのがいいのか、考えてみる』
瑞希
『じゃあ、ボク達は作業に戻るね。
まふゆも待ってると思うし』
まふゆも待ってると思うし』
奏
『うん、ありがとう。それじゃあ——』
絵名
『あ、奏。待って!』
奏
『え?』
絵名
『……気負いすぎないでね』
絵名
『まふゆを救うために、頑張ってる奏のことは、尊敬してるよ』
絵名
『でも——』
絵名
『自分のことも、大事にしてね』
絵名
『それだけが……奏の幸せじゃないんだから』
奏
『あ……』
絵名
『何かあったら、いつでも話は聞くから。
……それだけ』
……それだけ』
絵名
『じゃあね』
奏の祖母
いつか、奏ちゃんも自分自身の人生を歩むのよ
奏の祖母
誰にも縛られない、奏ちゃんだけの人生を
奏
……わたしは……
ルカ
まふゆに曲を作らなくてもよくなったら……
どうするの?
どうするの?
奏
(……わたしと、まふゆは……)
奏
…………ちゃんと、考えなきゃ
奏
(まふゆが救われるには、どうすれば一番いいのか)
奏
(絵名が言ったことも、瑞希が言ったことも——)
奏
(それに、ルカが言ったことも)
奏
(ちゃんと考えて……答えを出さなきゃ)