アークランド
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ど、ど……どうなってるんだこれは!?
2
もしや、えむに双子の姉がいたのか!?
鳳5きょうだい……鳳ファイブなのか!?
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……いや。
おそらく彼女は——
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???
見失ってしまった……!
どこに行かれたんだ!?
5
???
あっちに走って行かれたようだったが……
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少女
あ……!
ど、どうすれば……
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えむ
こっち!
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少女
え?
9
えむ
このゴミ箱の陰に隠れたら気づかれないと思うから!
一緒に隠れよっ!
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少女
あ……はい!
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少女
お願いがあります……!
『ここにはいない』と言っていただけないでしょうか……!
12
???
……やはり見当たらないな
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???
——すみません。
この辺りで、走っている女性を見かけませんでしたか?
年齢は皆さんと同じくらいの……
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走っている女性……ですか
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お子さんを追いかけているお母さん達は何人か見かけましたけど、
それ以外は見ていませんね
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寧々
うん、わたしも。
司は見た?
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ああ、そういえば——
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正門の方に小走りで向かってる人は何人か見ました。
もうすぐパレードが始まるからだと思うんですけど
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???
もしかすると、その中に紛れているのかもしれないな
20
???
そうだな。
——お楽しみ中のところお邪魔をしてしまいすみません。
ありがとうございました
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寧々
なんとか誤魔化せたみたいだね
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ハッハッハ!
全員、実に自然な演技だったな!
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えむくん、それからお嬢さん。
もう出てきて大丈夫だよ
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えむ
うん!
大丈夫? 立てる?
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少女
あ、はい……
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えむ
……ほえ~……。
なんだか鏡見てるみたい!
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うーむ、見れば見るほど双子のようだな
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というかそれも気になるが……
さっきのスーツの男達は誰だったんだ……?
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少女
あ……それは……。
少し、事情があって……
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あなたは、もしや——
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——イルガスの王女様ではありませんか?
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少女
え……!?
ど、どうして……
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えむ
いるがす?
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日本からは、はるか遠くにある、
小さいながらも歴史のある王国だよ
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つい最近、王族が来日したというニュースを
見たんだけれど——
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載っていた写真に写っていた王女が
えむくんにそっくりだったから、覚えていたんだ
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だからこれは憶測だけど……何か事情があって単独行動をしたい。
しかし護衛がついてきてしまうので困っている……
といったところじゃないかな
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少女
あ…………
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少女
……そこまで言い当てられてしまったら、
誤魔化せませんね
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ということは——本当に王……ふがっ!?
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なんだ寧々! 急に口をふさぐな!
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寧々
声が大きいってば。
周りにバレたらどうすんの
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少女
すみません、ご配慮ありがとうございます……
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寧々
あ、いえ……とんでもないです。
こいつの声が無駄に大きいのが悪いので
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寧々
それにしても、日本語がすごくお上手ですね。
ほとんどネイティブっていうか……
よく日本に来られてるんですか?
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少女
いえ。実際に来たのは初めてです
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少女
ただ、イルガスの王族は諸外国との交流のために、
幼い頃から様々な国の言葉を学ぶのです
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少女
そして『訪れたからには、常にその国の言葉を使うように』と
言いつけられています。
その国のことを学び、心から交流するために……
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少女
これは、私だけでなく、
私の家族全員が心がけていることです。
なのでここでは、家族とも日本語で話しているんですよ
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寧々
か、家族とも……!
すごいですね……!
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少女
ふふ、皆さんと遜色なく話せているようなら嬉しいのですが……
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えむ
そんしょくってなんだっけ?
新しい色?
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それは新色だねえ
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うーむ、顔はこんなにも似ているというのに……
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少女
——改めて自己紹介させてください
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エル
私はエル・アルガフと申します
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寧々
エル……!?
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なんと、顔だけではなく名前まで似ているとは……
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エル
先ほどはご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありません。
そちらの方のおっしゃる通り、しばらく護衛を撒こうと思って、
あのような行動をとってしまいました
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えむ
どうして護衛さんを撒こうとしたの?
エルちゃんのこと守るためにお仕事してるのに
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寧々
“ちゃん”って……
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エル
ふふ、大丈夫ですよ。
友達になれたようで嬉しいです
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エル
それで、先ほどの護衛の者達についてなんですが……
あの者達は私を守るだけでなく、
私を連れ戻す任務も与えられているんです
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連れ戻す……?
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エル
はい。今回のアークランド訪問は
元々、私の強い希望で——
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エル
他に公式の予定を入れず、
一般の入園者と同じ扱いで
滞在させてもらう予定でした
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エル
ですが、そのことが父の耳に入ってしまい、
『長居はさせず、早々に宿泊先に連れ戻すように』と
護衛の者達に言いつけたのです
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エル
ですが私には、どうしてもここでやりたいことがあるんです
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えむ
やりたいこと……
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えむ
それって、なあに?
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エル
このアークランドを見て回って、
遊園地の開発・経営についての知見を深めたいんです
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えむ
え……!?
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……理由を伺ってもよいでしょうか?
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エル
はい。
話すと少し長くなってしまうのですが……
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エル
私はイルガスに、遊園地を作りたいと思っているんです
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エル
先ほどこちらの方がおっしゃった通り、イルガスは小さな国です。
……資源もあまりなく、決して豊かとはいえません
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エル
私達はお忍びで視察をすることもあるんですが、
国民の表情は暗いことが多く……
それを見ては父も、いつも苦しそうな顔をしていました
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エル
そんな時——国際交流のために、
ある国のテーマパークに行ったんです。そうしたら——
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エル
いつもしかめ面の父が、ふっと笑ったんです。
『良い場所だな』と言って
80
エル
……その時、思ったんです
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エル
いつも国のために眉を寄せる父すら微笑ませてくれる場所——
こういった施設がイルガスにもあれば、
国民のみんなにも笑顔になってもらえるかもしれない
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エル
それに、新しい働き口も増えて
経済的に豊かになるきっかけになるかもしれない、と
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なるほど……
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お父様と、国民と——みんなのために遊園地を作りたい、
と思われたんですね
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エル
はい
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えむ
みんなのために……
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寧々
誰かさんに似てるね
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エル
それから独学ではありますが、
遊園地建設のための勉強をしていったんです
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エル
ただ——
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エル
私の父は……それを望んでいないんです
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えむ
え?
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エル
父は私に、イルガスの親善大使——
外交の担い手になってもらいたいと
思っていて……
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親善大使……ですか?
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エル
はい。私は比較的、語学ができる方ですし
社交も不得意ではないので、
きっといい働きをするだろう……と
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エル
……今回日本に来ることができたのも、
その件で、日本の外交関係者に
顔つなぎをする名目があったからです
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えむ
そうだったんだ……
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エル
ただ……親善大使になってしまったら、
私自身の手で遊園地を作ってみんなを笑顔にしたいという夢は
遠ざかってしまいます
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エル
社交の場に出る機会が
今よりずっと増えてしまうので
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エル
ですが——私は諦められないんです
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エル
王族ならばこそ、あらゆる形で民を幸福にする方法を考えたい
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エル
それに……
他にも、いろいろと理由があって……
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寧々
そういう事情があったんですね……
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どうしてあんな事態になっていたのか、やっと納得がいった!
しかし、なんとも立派な目標が——ん?
104
えむ
す………………
105
……す?
106
えむ
…………~っごくわかるよエルちゃん!!
その気持ち!!
107
えむ
あたしもね、すっごく楽しい遊園地で
世界のみーんなを笑顔にできるようにしたいから、
今がんばって勉強してるんだ!
108
えむ
だからエルちゃんの気持ち、
とってもとってもよくわかるなって!
109
エル
世界の人達を……?
そんなに規模の大きなことを考えていらっしゃるんですね……!
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エル
私はまだそこまで大きなことは考えられる段階ではなくて……。
えむさんはすごいですね
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えむ
そんなことないよ!
あたしはまだ修行中だし、エルちゃんは国のみーんなのこと
考えててすごいよ!
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えむ
……えへへ!
あたし、おんなじように考えてる子に会えて
とーっても嬉しいな!
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えむ
あたしにできることがあればなんでもやるよ!
……そうだ! 今日ノートにとったメモもぜーんぶ見せちゃうよ!
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エル
え……いいんですか?
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えむ
うんっ!
みんなが気づいてくれたこともたくさん書いてるんだー!
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エル
ありがとうございます!
ええと……
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エル
正門が並びやすい作りに……。
ああ、入園の導線が考えられているんですね
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えむ
うん! 正門だけじゃなくて、駅の改札を出てからすぐに
行きやすいようにもなってるんだよ
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エル
駅から……なるほど。
私は車で来てしまったので、気づきませんでした。
あとでチェックしないと……
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えむ
あ……
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えむ
(そうだよね……やっぱり人から聞くだけじゃなくて、
ちゃんと自分の目で見た方が勉強になるよね……)
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えむ
(でもでも、今エルちゃんが歩き回るのは難しくって……)
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えむ
——そうだ!!
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えむ
ねえエルちゃん!
ちょっとだけあたしと交換しない?
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エル
え?
126
寧々
交換?
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えむ
うんっ!
128
えむ
エルちゃんは護衛さんに見つかったら、
連れ戻されちゃうんでしょ?
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えむ
だからそっくりのあたしが身代わりになったら
エルちゃんはこのアークランドのこと
たくさん見られるんじゃないかって思ったの!
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み…………………………………………
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身代わりだと~~~~~~~~~~!?!?!?