アークランド
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エル
……やっぱり、正門からアークランド城まで距離があるのは
お客さんのワクワクする気持ちを
少しずつ高めるためなんですね……
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エル
それに、滞在時間が延びると
園内店舗での売り上げも上がりますし……
やっぱりシンボルの建設は前向きに検討しないと
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こうやって見ると、角度も計算されていますね。
子供が仰ぎ見るのにちょうどいいです
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エル
たしかに……!
背の低い子供達からもどう見えるのか考えられている……
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エル
——実際に動き回ってみると、
いろいろな気づきがありますね
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エル
ベンチなどの配置も、非常に勉強になります。
子供やお年寄りや体が弱い方のためにも
こういったものをたくさん作りたいです
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寧々
たしかに、休む場所がないと
楽しむどころじゃないですもんね
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ああ、そういえば咲希は
夏は日陰が多いと助かると言っていたな
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エル
日陰……。
それなら、園内に植える植物を想定より増やすのが
いいかもしれませんね
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エル
……でも、そうするとコストが……。
それに、元の計画から大きく変わってしまいそう……
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エル
だけど……来てくれた人が楽しめなくなってしまったら
意味がありませんもんね
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エル
バランスをどうするのか、
今一度考え直してみないと
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寧々
……なんだか本当に、えむにそっくりだな
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ああ、そうだな。
顔だけではなく——自分の夢を一心に追っているところも
そっくりだ
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フフ、そうだねえ
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エル
ふぅ……。
……大体回れましたが、まだ時間がありますし、
東エリアをもう一度……
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——エルさん。
よければここで少し休みませんか?
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エル
え?
ですが……
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この先に、ジューススタンドがあるんです。
調査のついでに一息つけると思いますよ
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そうだな。一度頭を休めたほうが考えもまとまりやすいだろう。
5分だけでも休みませんか?
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エル
……たしかに、そうですね。
それじゃあ、少しだけ
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エル
……! 美味しいジュースですね。
これは、フルーツをその場で搾っているんでしょうか……
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寧々
はい。アークランドのジューススタンドは全て
新鮮な果物の搾りたての果汁だけを使ってるんです
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寧々
遊び疲れたお客さんがエネルギーチャージできるように、
って考えてそうしてるみたいです。
まあ、これはえむの受け売りなんですけど
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エル
そうなんですね……
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エル
……えむさんって、すごい方ですね。
遊園地のこと、たくさん調べていらっしゃって……
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エル
きっと一緒に勉強できたら、
とても実りがあるんでしょうけれど……
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エル
立場上、そうはできないのが残念です
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……王女という立場は、
我々が思っているよりも不自由なことが多いんですね
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エル
あ……
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エル
……そうですね。
王族だからこそ生まれる制限もありますし
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エル
ですが、それは仕方がないことです。
制限があるのは、それゆえの恩恵も受けているからですし
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エル
だから——将来、国の親善大使となる未来も受け入れています
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…………
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エル
……本当に、ただの私のわがままなんです。
この、遊園地を作るという夢は
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エル
経営学については独学で学んでいますが、飲み込みも遅くて……。
親善大使として働いた方がよほど国のためになると思います
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エル
だから父に『夢ばかり追ってどうする』と
反対されるのも、当然で……
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エル
こんなことに皆さんを付き合わせてしまって、
本当にいいのか……
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————いいんじゃないでしょうか
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エル
え?
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お父様のおっしゃることは正しいかもしれません
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でもエルさんに叶えたい夢があるならば
……まだ諦めなくてもいいんじゃないでしょうか
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何よりエルさんが、その夢を捨てきれてはいないんですから
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エル
あ……
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僕もそう思います
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……特に僕達は、あなたによく似た状況にあって
それを突破した人を知っているので、余計に
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エル
よく似た状況……?
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はい
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エルさんと入れ替わったえむくん——
彼女も以前、似たような状況にあったんです
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寧々
あ……実はえむは、
遊園地の経営もしてるある一族の子で……
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寧々
えむには夢があったんですけど……
お兄さん達と対立してしまって、諦めるか悩んでいたんです
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エル
——もしよかったら、
そのお話、少し聞かせてもらってもいいでしょうか?
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ええ、もちろん。
それでは——
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これは、夢と現実。
その両方を追った、少女のお話です
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エル
……そんなことがあったんですね
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エル
——えむさんは、やっぱりとてもすごいですね
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エル
現実を前にして、挫けそうになっても、
諦めず前に進み続けて……
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寧々
そうですね。
でも……それは、エルさんも一緒じゃないですか?
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エル
私は……
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エル
……そう、ですね。
そうかもしれません
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エル
でも私は——えむさんとは違います。
追い詰められるまで、
必死に動こうとはしなかったので
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追い詰められるまで……?
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エル
………………
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エル
……これは、絶対に口外しないで
いただきたいんですが——
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エル
1年前……父が倒れたんです
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……!!
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エル
幸い今はどうにか回復しましたが、
もし再発したら、そう長くはないと言われて……
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エル
私は当初、
遊園地の夢はいつか叶えられればいいと考えていました
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エル
ですが……そのいつかに、父はいないのかもしれない
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エル
そう思ったら、
いてもたってもいられなくなって……
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……その気持ちは、お父様には話されたのですか?
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エル
……いえ、父はきっと『そんなことよりも
国のためのことを考えろ』と言うでしょうから
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エル
ですから——そのことは伝えずに
『どうか両方をやらせてほしい』と言ったんです
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エル
そうしたら……『馬鹿を言うな』と言われて
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エル
でも私はどうしてもこの夢を捨てきれなくて……
段々と、父との間にも亀裂が入っていってしまいました
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エル
でも、それでは変わらないんですよね
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エル
えむさんのように、覚悟を決めて、進まないと
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エル
私——父と、ちゃんと向き合って話してみます。
わかっていただけるまで……何度でも
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エル
あ……!
気づいたら、もうこんな時間ですね……!
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なに!?
まずい! あと1時間後にはえむと合流しなければ!
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移動時間もかかるし、さっそく戻ろう!
タクシーを捕まえれば大丈夫なはずだ
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寧々
うん! 行こう!
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エル
はい!
客室
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えむ
あ~! おもしろかった~!
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えむ
エルちゃんが作った計画書、ぜーんぶすっごく楽しかったね!
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リン
『うん!
リン、この遊園地に行きたくなっちゃった♪』
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えむ
わかる!
あたしも早く行ってみたいな!
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えむ
それに……どんなコンセプトなのかとか、どこに建てるのかとか、
すーっごく細かく書いてあってすごかったな……
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えむ
あたしには思いつかないアイディアもいっぱいあって、
いっぱい勉強になったよ!
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リン
『……えへへ♪
えむちゃん、すっかりけーえーしゃさんの顔だね!』
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えむ
え? そうかな~?
司くんにはいっつも『顔に緊張感がない!』って
言われちゃうから、経営者っぽくはないと思うけど……
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えむ
でも、リンちゃんにそう見えてるなら嬉しいなっ♪
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えむ
……あれ?
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えむ
なんだろう、下の階から声が聞こえるような……?
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???
——エル! 部屋にいるのか?
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えむ
わっ!
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リン
『も、もしかして……』
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えむ
エルちゃんの、お父さん!?!?