客室
1
えむ
(……資料を見たのは1回だけ)
2
えむ
(すっごくおもしろかったから中身はほとんど覚えてるけど、
今は翻訳アプリが使えないから、
全部ちゃんとプレゼンできるかはわかんない……)
3
えむ
(それに、エルちゃんの演技をしながら、
ちゃんとお父さんにわかってもらえるように
やらなくちゃいけなくて、すごくすっご~く難しいけど……)
4
えむ
(——やろう!
エルちゃんの夢は本当の本当だって、伝えたいから!)
5
えむ
——では、こちらをご覧ください
6
エルの父
…………
7
えむ
こちらは
『イルガスを代表する世界規模のテーマパークを開業する』ための
プランです
8
エルの父
世界規模……?
9
えむ
イルガスは少し前から観光に力を入れ始めましたが、
ここ数年、その経済規模は落ちています
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えむ
その理由ははっきりしていて、
観光の目玉が、現地の自然を活かしたリゾートのみで、
幅広い年代が楽しめるようなアクティビティがないからです
11
えむ
他の国と比べて歴史的な遺産なども少ないことを考えると、
もっと広い層にリーチするものを——
大規模のテーマパークの開業をすべきと考えます
12
えむ
そして大規模テーマパークを建設し、
集客に成功すれば、年間の売り上げの期待値は——
13
えむ
周辺地域の雇用が大幅に増加することは、
これまでの説明でご理解いただけると思いますが……
14
えむ
これに伴って、地域一帯の治安改善にもつながる可能性が
非常に高いです
15
えむ
こちらは大規模テーマパークを建設した後の
犯罪発生率についてまとめたものです。ご覧ください
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エルの父
ふむ……
17
えむ
——また、空港からの都市へのルートを整備すれば、
交通の便も良くなり生産性が上がります。そして——
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えむ
——以上です
19
えむ
最後のページは、
データに基づいて算出した長期収支計画です。
お確かめください
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エルの父
…………
21
えむ
(エルちゃんのお父さんが何を考えてるのか、
全然わかんないけど……)
22
えむ
(エルちゃんの計画書は、
とってもとってもよく考えられてる)
23
えむ
(工事する人達のこととか、運営する人達のこととか、
いろーんな人のこと、いっぱい考えてて——)
24
えむ
(何よりお客さんのことを笑顔にしようと思ってる。
そう……伝わってきた)
25
えむ
(その想いを——ちゃんと伝えたい……!)
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エルの父
…………この試算は、楽観的だな
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エルの父
建設予定地が、ペンヴァルだと?
あのゴミ山のような一帯を片付けるだけで
どれだけの金がかかると思っている
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えむ
……!
29
えむ
(……たしかにエルちゃんは、
建設予定地のことでいっぱい悩んでるみたいだった)
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えむ
(でも、机にあったノートには——)
31
えむ
おっしゃるとおりです。
たしかに、処理に費用はかかります
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えむ
ですが——逆に考えてみるのはどうでしょう?
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えむ
お父様も、あの地域をどうしていくべきか、
悩まれていたと思います
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えむ
ならばこそ、これを機にあの地域全体を
大胆に変えていくのです
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えむ
街全体が綺麗になり使いやすくなれば、
そこに住む人々の労働意欲も高まります
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えむ
テーマパークを作るだけでなく、
新しく都市開発をしていく——
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えむ
そう考えれば、かかる費用は
そう大きなものではないのではないでしょうか?
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エルの父
…………なるほど
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エルの父
たしかにそう考えればいい案だ
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えむ
……!
じゃあ……
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エルの父
だが——かかったな
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エルの父
やはりお前は、エルではない
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えむ
(え……っ!)
44
リン
(あ……!)
45
えむ
——どういう意味ですか?
私がエルではないとは……
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エルの父
なかなかの役者だな。
だが……
47
エルの父
エルは、誰かがペンヴァルのことを『ゴミの山』と言うと
必ずこう言う
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エルの父
『ゴミの山と言うのはおやめください』とな
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えむ
……!!
50
エルの父
……まさかエルが、
ここまで手の込んだことをするとはな
51
エルの父
わがままを通したいからと、こんな計画書まで作らせて
偽者まで雇って——
52
えむ
……!
違います!
53
えむ
エルちゃんはちゃんと帰ろうとしてました!
でも、あたしが——
54
エルの父
黙れ。エルはどこだ?
55
エルの父
どこかで見ているのだろう!
出てこなければ承知しないぞ!
56
エルの父
君も、そこを動くな。
護衛はもう扉の外に集めている。調べさせてもらうぞ
57
えむ
わわわ……!
58
リン
『——逃げようえむちゃん!』
59
リン
『もうちょっとでエルちゃん達が戻って来る時間だし……、
きっと、ふたりで説明すればわかってくれるよ!』
60
えむ
う……うん!
61
えむ
ごめんなさい、エルちゃんのお父さん!
あたし、逃げます!
62
護衛A
お前か!
エル様に入れ替わった不届者は!
63
えむ
わ! 護衛さん達が……!
64
リンの声
『えむちゃん、上!』
65
えむ
あ……!
よーし、ぴょぴょんとジャ~ンプ!!
66
護衛A
な……!!
67
エルの父
……!
おい、誰かそいつを捕まえろ!
68
えむ
えっとえっと、玄関は……!
下の階に行かなくっちゃ!
69
使用人
エル様!
どうされたのですか?
70
えむ
え? あ、えーっと……
71
エルの父
騙されるな!
そいつは偽者だ!
72
使用人
に、偽者……?
ですが……
73
えむ
——ごめんなさーいっ!
74
使用人
な……!
た、たしかにエル様は、こんな動きはできないはず……!
75
使用人
事情はわからないが……。
捕まえなければ!
76
えむ
階段、階段は……こっち!
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護衛A
そっちに行ったぞ!
階段を塞げ!
78
護衛C
了解!
79
リンの声
『わわ……! とおせんぼされちゃった!』
80
えむ
……あ!
それなら——
81
えむ
手すりつるつる滑り台~っ!
82
護衛C
な……何~!?
83
リンの声
『えむちゃん、すごーい!!』
84
えむ
えへへ! 昔よくやってたんだ~!
こういうスカートだとよく滑るんだよ♪
85
護衛A
——いたぞ! こっちだ!
86
えむ
……ってしゃべってたら、
前からいっぱいきた~!
87
えむ
——えいっ! やあっ! とうっ!
88
護衛B
ちょこまかと……!!
89
護衛A
だが……もうおしまいだ!
90
えむ
わ、わわっ……!!
91
リンの声
『玄関、すごい人数でふさがれちゃってる!』
92
エルの父
——さあ、大人しくしてもらおう
93
えむ
あ……!
94
エルの父
エルはどこだ!
どこかで見ているのだろう! どこに隠れている!
95
???
——隠れてなどいません!!
96
リン
『あ!』
97
えむ
この声——
98
エルの声
エルです!!
友人と共に戻りました!!
99
エルの声
——扉を開けてください!!
100
えむ
み……みんな~!!
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