ワンダーランドのセカイ
1
——物語の舞台は、大きな館だ
2
その館は、ある大きな町と、ある大きな森の
ちょうどあいだに建っていた
3
そして町に住む“町の民”と、森に住む“森の民”は、
ケンカばかり繰り返していたんだ
4
町の民
『あんな着の身着のままで暮らす野蛮な人達が
町の近くに住んでいるなんて、恐ろしいわ』
5
町の民
『そうねえ。兵隊さんが森を見張ってくれているとはいえ、
心配よね』
6
町の民
『みんな危険な連中だって言ってるし、
早く追い出しちゃえばいいのにね』
7
森の民
『はぁ。あの町の人達ってほんとに、
わたし達のことを毛嫌いしてるよね』
8
森の民
『森に住んでる人をバカにしてるんだよ!
まったく、失礼しちゃう!』
9
森の民
『そうだ、みんなで追い出しちゃおうよ!』
10
そんなわけで、町の民と森の民は、
いつもピリピリしていたんだ
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そんな中——館に、新しい将校がやってくる
12
彼が王様から請け負った使命は、
森の人々から町を守るということだ
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その日も彼は、森の人々が町にやってきて悪さをしないか、
森の見回りをしていた
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しかし——勝手に森に入られたことを怒った森の人々は、
石を投げつけて彼とその部下達を追い払おうとする
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そうして、他の兵とバラバラになった将校は、
森の中で道に迷い、途方に暮れていた——が
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そんな彼の前に、ある少女が現れる
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森の民であるその少女は、将校が森の人々に見つからないように
彼を助けて館まで帰してくれるんだ
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将校
『……どうして私を助けたんだ?
君は、この森の住人じゃ……』
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森の少女
『そうだよ!
でも、あなた困ってたでしょっ?』
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将校
『それはそうだが……』
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森の少女
『それにね、森のみんなは“町の連中は悪人ばかりだ”って
言うけど、あたしはそんな人ばっかりじゃないと思うの!』
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森の少女
『だからもっとお話してみたいなーって思って!』
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森の少女
『あ、でも今日はもうみんなのところに帰らなくっちゃ!
それじゃあねー! また会おうね、将校さん!』
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将校
『あ、君……!』
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それ以来、少女は将校のもとへやって来るようになる
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ただ、お互いが敵である以上、
話しているところを見られるのは危険だ。
そこで——
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少女は、館のすぐ脇に立っている木によじのぼって、
2階にある将校の部屋を訪ねるんだ
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森の少女
『こんにちわーっ♪』
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将校
『うわっ!!
ど、どうして君がここに!?』
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森の少女
『将校さんのお部屋だったらいっぱいお話できると思って、
来ちゃった!』
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将校
『た、たしかにここなら周りの目は気にしなくて済むが……』
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将校
『というか、君はそこの木をよじ登って来たのか?』
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森の少女
『うん! ちょうど枝が橋みたいに伸びてたから!』
34
将校
『な……!
森の住人というのはまったく野蛮な——』
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将校
『……まあ、しょうがない。
助けてくれた相手を無下に追い返すのも失礼だからな。
入りたまえ』
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将校
『ただし、一度だけだからな!』
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森の少女
『はーいっ!』
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こうして少女と将校は仲を深めていった。
将校は少女と話すうちに、森の人々も
自分達と同じ、平和を望む人間だと気づいていく
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どうにかお互い憎みあわず、手を取りあって生きる方法は
ないか——。将校はそう考えて、少しずつ町の人間にも
働きかけていくようになる
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その結果、森の人々と町の人々は、
お互いを信じられるようになっていったんだ
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さらに、彼らは本当にお互いを信頼している証として、
それぞれが大事にしている宝物を交換することで、
より一層仲を深めようとした
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しかし、そんな将校をうとましく思う男がいた。
それは、王様の下につく大臣だ
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大臣の部下
『まったく……。あの男のせいで計画が台無しだ』
44
大臣の部下
『森に眠る“黒い油”を奪う口実を作るためにも、
町の人間と森の連中はいがみあっているべきだ。
そのために悪いうわさまで流したというのに……』
45
大臣の部下
『……そうだ!
あの男を追い出してしまえばいい』
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大臣の部下
『たしかあの男は、森と町、互いの宝を交換する約束の
見届け人として、双方の宝をいったん預かると聞く』
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大臣の部下
『ならば交換する前にあの男を捕まえて、
町の民、森の民、それぞれには、
相手が約束を破って宝を奪ったと伝えれば——』
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こうして将校は大臣の部下に捕まり、
館の自室に軟禁されてしまう
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将校
『く……! やっと町の人々と森の人々が
仲良くなれそうだったのに、こんなところで……!』
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そして大臣のせいで、森の人々と町の人々は、
大きな戦いをおこそうとしてしまう
51
そこへ少女がやってくる
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少女は将校と、彼が持っている宝物さえ戻れば、
みんなが再びわかりあえると信じて、
将校を助けようとするんだ
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そうして将校の部屋に行くべく木に登るものの、
窓まで伸びていた木の枝は切られてしまっている
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森の少女
『どうしよう……!
やっとみんな仲直りできそうだったのに、
将校さんが捕まったままじゃ……!』
55
森の少女
『——あたしが将校さんを、助けなきゃ!』
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そこで少女は——跳ぶんだ。
木から窓への大跳躍さ
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落ちたら大けがだ。
それに兵隊に見つかってひどい目にあわされるかもしれない。
そんな中、彼女は跳ぶんだ
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人々によって作られた、大きな垣根を超えるためにね
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その後、少女が将校を助けたことで、
森の民は兵隊の攻撃から逃れることができる
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そして最後は、少女と将校の説得によって、
町の民と森の民は手を取りあえるようになるんだよ
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リン
——めでたしめでたし!だねっ♪
62
寧々
…………
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寧々
(これって、類が昔考えた……)
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寧々
(——そっか。
ちゃんと吹っ切れたんだね、類)
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リン
ねえねえ、今のショー、
おっきな家のあるところでやるんだよね?
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リン
いいなぁ、楽しそう~!
リンも見てみたいなぁ~
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ミク
ミクもミクも~!
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それじゃあ、一番近くで見られるように、
スマホを特等席に置いておくよ
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もし興味があるならリハーサルも見ていくといい。
ふたりとも、どうかな?
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リン
わーい☆
ミク、楽しみだね~♪
71
フフ。観客は多ければ多いほどいいからね。
助かるよ
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それで——みんな、どうだい?
軽くとおしてやってみたけれど
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うむ! 申し分ないと思うぞ!
シチュエーションも場所に合っているしな
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寧々
配役も、今やったので良かったと思う
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えむ
じゃあ、あたし森の女の子!?
やったー!!
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えむ
バッチリ跳ぶから、まかせてね! 類くん!
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——ああ。
まかせたよ、えむくん
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万一落ちた時のための安全策も考えてあるから、
思いっきり跳んでくれたまえ!
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えむ
うんっ!!
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寧々
……ふふ
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しかし嬉しいな。
昔考えてた演出を、ここでできるなんてね
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リン
昔?
類くん、どれくらい前から考えてたの?
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ああ。小学2年生の頃だから——、
だいたい10年前くらいかな
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えむ
ええっ!? 10年前!?
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レン
そんなにちっちゃい頃から考えてたなんて、すごいね~!!
どうやって思いついたの? 気になる~!
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えむ
気になる気になる~!!
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ええい、交互にやかましい!
幼稚園かここは!
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だが……どうやって考えついたのかは
オレも興味があるな
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寧々
あ、それは……
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む? 何かまずいのか?
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フフ。大丈夫だよ寧々。司くん
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じゃあこのショーを思いついた時の
話をしようか
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——昔々のお話さ