1
森の少女
『えーいっ!』
2
将校
『よし……!!』
3
森の少女
『で、できた~! できたよ将校さん!
あたし跳んじゃった!』
4
森の少女
『あ、喜んでる場合じゃないね!
今、縄を解いて……』
5
将校
『——ありがとう』
6
森の少女
『へ?』
7
将校
『君は、私達に偏見を持たず、恐怖することもなく、
勇気をもって、私の心の中にある垣根を跳び越えてくれた』
8
将校
『そうして今、私達のあいだにあるとてつもなく大きな垣根を
跳び越えるために、手を差し伸べてくれている』
9
将校
『……本当に、ありがとう』
10
森の少女
『……えへへっ!
将校さんに褒められると、なんだか照れちゃうな~!』
11
森の少女
『でも、あたしだけじゃなくて、
将校さんも——みんなも、きっと跳べるよ!』
12
将校
『……ああ、そうだな。
森の民と町の民、双方に宝を届け、そして伝えるとしよう』
13
将校
『約束はしっかりと果たされたこと。
そして、どんな垣根であろうと、
我々は必ず越えられるということを——!』
14
森の少女
『うんっ!!』
15
観客達
本当にジャンプするなんて思わなかったわ!
16
観客達
こっちまでドキドキしたね
17
(……ああ。
僕達のショーで、客席が笑顔に染まっていく)
18
(僕は、なんて——)
19
大臣の部下
『……なぜ、森の人間と町の人間が、手を取り合って……?』
20
森の少女
『あたし達はもう、ケンカするのはやめたの!』
21
将校
『本当の敵は誰なのか、私達は知った。
それは——私達を憎みあわせようとする、お前だ!』
22
大臣の部下
『く……うわあ!』
23
本日はご来場いただき、
まことにありがとうございました!
24
えむ・寧々・類
『ありがとうございました!』
25
観客達
楽しかったわね!
26
観客達
あのジャンプのシーンは本当にドキドキしたね
27
観客達
ああいうお芝居を見たのって初めてだけど、
遊園地でもやってるんだね。
今度見に行ってみようかな
28
寧々
……ふふっ。
みんな興味持ってくれてるみたい
29
今回の観客は普段テーマパークに行くような層ではないが、
この様子ならば期待できそうだな!
30
えむ
やった~!!
今回も大成功だねっ!!
31
——ああ、そうだね
32
さて、お客さん達もほとんど席を立ったことだし、
あと片づけを始めようか
33
僕は、命綱を外してくるよ。
少し外しかたが難しいからね
34
あ、おい! 類!
35
……どうしたんだ?
さっさと片づけに行ってしまって
36
えむ
うん。
類くん、なんだかいつもとちょっと違うね
37
寧々
たしかに、いつもならショーが終わったら、
もっと嬉しそうにしてるのに……
38
えむ
あっ!
もしかして、あたしどこか間違えちゃったかな!?
39
えむ
それで怒ってたらどうしよう……!
類くんに聞いてくるー!
40
寧々
あ、えむ!
41
よし。この金具を外して……
42
えむ
類く~ん!!
43
ん?
どうしたんだい、えむくん
44
えむ
えと、えと……!
あたし、セリフがスポーンてしちゃったかな!?
45
うん? なんだか話がつかめないんだけれど……
46
お前の様子がいつもと違うから、
気になっているんだ!
47
え?
48
いつもの類ならば、公演後はニヤニヤして、
次はどうしようかな~、司くんを土に埋めてみようかな~、
などと言っているだろう!
49
それが今日に限って妙に淡泊だからな。
どうしたんだ?
50
寧々
何考えてるか知らないけど、
別に怒ってるわけじゃないんでしょ?
51
えむ
ほんとー?
あたし、どこも間違えてなかったー?
52
…………ふふ。
間違えてなんていないさ
53
むしろ、全員完璧だったよ
54
じゃあなぜ今日は妙に落ち着いているんだ?
いつもなら、もう少し嬉しそうにしてるだろう
55
…………ああ
56
うまく言い表せなくてね
57
えむ
え?
58
いや——この感情を表現してしまうのはもったいないと
思ったのかもしれない
59
……ちゃんと僕の中にしまっておきたい、のかな
60
えむ
うーんと……?
61
どういう意味だ?
62
寧々
あ——
63
寧々
もしかしたら、類が言いたいこと、
なんとなくわかるかも
64
えむ
ほんと!? 寧々ちゃん、すごーいっ!
65
おや、さすがだね。寧々
66
寧々
長いつきあいだからね。
——でもさ、類
67
寧々
せっかく嬉しいことがあったんなら、
みんなに話してみるのもいいんじゃない?
68
寧々
ここにはみんないるんだしさ
69
…………
70
……ふふ。そうだね。
この感動を独りじめをすることこそ、もったいないしね
71
じゃあ、そっちに下りて話そうか
72
それで? 一体どうしたんだ?
73
うん。
つまり僕は今日のショーを見て……
74
僕はなんて幸せ者なんだろう、って思ったんだよ
75
えむ
えーっと……じゃあ類くん、
ショーが成功したから喜んでたの?
76
ああ。そうだよ
77
今までにないくらい嬉しくて、
どうしたらいいのかわからなかったのさ
78
えむ
そうだったんだ……。
よかった~!!
79
そういうことなら安心したが……。
しかし、わかりづらいな
80
あんまり素敵なことがあると、
逆に冷静になってしまうのかもしれないねえ
81
——僕の夢はね、誰が見ても笑顔になれる、
どんな垣根も越えられるような、そんなショーを作ることなんだ
82
昔は、それができなかった。
僕自身が歩み寄れなくてね
83
でも、今は違う。
僕はここで、僕の夢を叶えられている
84
だから——
85
ありがとう
86
えむ
ねえねえ類くん!
次はどんなショーやろっか!?
87
え?
88
えむ
あたし、類くんの演出で、
もっともっとショーやりたいんだ~~!!
89
そうだな! さらにオレを輝かせる演出を頼むぞ!
……事故のない範囲でな!
90
寧々
わたしが歌うシーンも、いい演出つけてよね?
91
……フフフ。
そうだねえ。それじゃあ次は——
92
——こんな演出はどうだい?