数日後
フェニックスワンダーランド
1
おお! 類、どうやらオレ達が一番乗りのようだな!
2
そうだね。待ち合わせの時間まで、あと——
3
えむの声
とーーーーーーーーうっ!!
4
えむ
司くん、類くん、お待たせっ☆
5
やあ、えむくん。お疲れさま
6
待て待て待てーい! なぜ木の上から飛び降りてくる!?
7
えむ
えへへ♪ 学級委員のお仕事で
ちょっと遅れちゃいそうだったから、近道してきたんだ!
8
木の上はそもそも道ではない!!
まったく……
9
そこまで急がずとも、寧々達もまだ来ていないぞ
10
フフ。待ち合わせまでまだ10分ほどあるからね
11
えむ
そっか! 間に合ってよかった~!
12
えむ
寧々ちゃんが紹介してくれるお友達、どんな子かなあ
13
たしか……白虎町、だったか?
このワンダーランズ×ショウタイムに興味を持つとは、
なかなか見る目があるな!
14
とても勉強熱心な人ではあるみたいだね
15
今回、顔合わせの場所に
フェニックスワンダーランドを希望したのは、
後学のためにナイトショーを見てみたいからだそうだし
16
えむ
えへへ☆ ナイトショー、楽しんでもらえるといいなあ!
17
えむ
——あ!
18
寧々
みんな、お待たせ!
19
???
——やあ。君達が、草薙さんの仲間だね
20
白虎町
はじめまして。私は白虎町涼という者だ。
今日は貴重な機会をありがとう
21
白虎町
草薙さんからワンダーランズ×ショウタイムの話を
いろいろと聞かせてもらってね。
ぜひ一度、会ってみたいと思っていたんだ
22
えむ
…………あ
23
寧々
え?
24
えむ
この子だーーーーーーーーーー!!!!
25
白虎町
な、なんだ……?
26
白虎町
——なるほど。
会議室から出てきた私を見かけた、と……
27
えむ
うんっ!
遠くからだったけど、背筋が綺麗にピシーッてしてたんだ!
28
えむ
あれって、涼ちゃんだよね?
29
白虎町
…………涼ちゃん
30
寧々
え、えむ。いきなりその呼び方は……
31
白虎町
いや、かまわない。少し驚いただけだよ。
普段私をそんな風に呼ぶ人はいないから
32
白虎町
名字でも名前でも、鳳さんの好きに呼んでくれ
33
えむ
ありがとう、涼ちゃん!
34
白虎町
ああ、話の腰を折ってすまない。
さっきの話の続きだが……
35
白虎町
たしかに鳳さんが見かけたのは、私で間違いない。
日付が、経営会議に参加していた日と一致しているからね
36
白虎町
しかし……
37
白虎町
——できれば、このことは
なるべく内密にしてもらえると助かるよ
38
白虎町
学園では役者として、先入観なく接してほしいからね
39
寧々
う、うん。わかった……!
40
それにしても、学生の身で
森ノ宮の経営に関わるなんて……すごいですね
41
白虎町
そうだね。
おじい様には、とても貴重な機会をもらっていると思う
42
寧々
おじい様?
43
白虎町
ああ。森ノ宮歌劇団の理事長は——私の祖父なんだ
44
寧々
えっ——
45
えむ・司
『理事長さん!?』
『理事長!?』
46
森ノ宮の現理事長というと……
たしか元は、著名な実業家だったね
47
さまざまな大企業の社長や取締役を経て、
森ノ宮の理事長に就任した……と本で読んだことがあるよ
48
白虎町
その通り。
若い頃は経営の鬼と恐れられるくらい、厳しい人だったそうだ
49
白虎町
けれどそんな祖父も、理事長職に就く前から
ずっと森ノ宮のファンでね
50
白虎町
私も子供の頃から、祖父に連れられて、
一緒に舞台を見に行っていたんだ
51
えむ
おじいちゃんと……
52
白虎町
……森ノ宮の舞台を見て、そのまぶしさに憧れて。
あの光の中に立ちたいと思った
53
白虎町
家族はどちらかというと、
私を経営の道に進ませたがっていたけれど……
祖父だけは『両方やってみればいい』と言ってくれたんだ
54
白虎町
最初はただ会議の場に同席して聞いているだけだったが、
少しずつ企画や広告について
意見をさせてもらうことも増えてきた
55
そういえば最近、森ノ宮のSNSでチケット購入と
連動したキャンペーンが話題になっていたが……
56
白虎町
ああ、あれは私が提案させてもらったものなんだ。
若者が森ノ宮の舞台に興味を持ってくれるには、
どうしたらいいかと考えてね
57
えむ
す……………………
58
えむ
すごいよ、涼ちゃん!!!
59
白虎町
えっ?
60
えむ
あのね、あたしも今、経営のことを勉強してるの!
61
えむ
フェニックスワンダーランドは、
おじいちゃんが作った遊園地なんだけど……
62
えむ
この場所をお客さんの笑顔でいっぱいにするには、
どうしたらいいんだろうって!
63
白虎町
おじい様が……?
ということは、やはり『鳳』という名字は——
64
寧々
うん。わたし達も時々忘れそうになるけど……。
えむは鳳グループのお嬢様なんだ
65
白虎町
——そうだったのか。
だから君も、経営の勉強を……
66
えむ
うんっ!
67
えむ
でも、あたしのアイディアはお兄ちゃん達に
『現実的じゃない』って言われちゃうことも多いんだ
68
えむ
前にフェニックスワンダーランドのお客さんが
減っちゃって、なんとかしなくちゃってときも、
うまく考えられなくて……
69
えむ
だからね——
70
えむ
森ノ宮の人達と一緒に、ちゃんと夢と現実の
両方を考えられる涼ちゃんのこと、
とってもとってもすごいって思う!
71
えむ
あたしも早く、そんな風になれるように
がんばらなくちゃ!って思ったよ
72
白虎町
私のように、か……
73
えむ
……涼ちゃん?
74
白虎町
……いや。なんでもないよ
75
来園者
パパー! ナイトショー始まっちゃうよー!
76
寧々
あ……
77
随分と立ち話をしてしまったね。
そろそろ、ショーが見やすい位置に移動しようか
78
うむ、そうだな!
79
白虎町
私達も行こうか、鳳さん
80
えむ
あ……うん……
81
えむ
(さっきの……)
82
えむ
(涼ちゃん、ちょっとだけ……悲しそうだった……?)
Next Chapter: 思わぬ問題