???
1
………………
2
…………もっと……
3
……もっと、だ…………
4
もっと、観客の目を引くような……
笑顔にできるような……
5
そんな、演出を——
6
???
だから……いっぱいいっぱいいっぱい考えたほうがいいって思う!
今の類くんのためにも、未来の類くんのためにも!
7
???
そうじゃないときっと——笑顔になれないよ!
8
…………っ!
9
(…………僕は、今……何を…………)
10
(これは……演出のメモ?)
11
…………
12
そうか……。
さっき、何か声が聞こえた気がしたけど——
13
また僕は、演出の改良案をメモしているうちに
眠ってしまったのか
14
(THE CENTER THEATREに来て
色々な経験を積んだけれど……演出家として、僕はまだまだだ)
15
(——こんなところで、居眠りしているわけにはいかない)
16
(最後にとっていたメモは……
ああ、あった。これだ)
17
(……うん。床下の移動を使った演出を
考えているところだったな)
18
(ここで主人公は、国王と対峙すると同時に
自国を裏切る決意を固める。それなら——)
19
(登場の瞬間、ライティングを工夫すれば
もっと観客を引き込むことができそうだ)
20
悲劇的な場面だから、影を作って
役者の表情が見えなくなるタイミングを
いくつか作る……
21
照明の切り替えを会話のテンポに合わせることで、
観客の想像をよりかき立てるようにして——
22
???
——類
23
ここにいたんだな。
……また、演出を考えてたのか?
24
旭さん……?
今日は、もう帰ったはずじゃ——
25
やっぱり忘れてたのか。
今日は練習のあと、パーティーだって言われてただろ?
26
パーティー……?
27
——————あ
数分後
28
アークランドのキャストA
それじゃあ、
主役のふたりも来たところで——
29
アークランドのキャストA
旭と神代くんの、アメリカのアークランド行きを祝って……
乾杯っ!
30
みんな
『乾杯!』
31
アークランドのキャストB
いやあ、まさか主役がそろって遅刻するとはな
32
すみません。僕が演出の改良案を考えるのに
没頭してしまって……
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アークランドのキャストA
本当、神代くんは暇さえあれば
ずっと舞台裏で演出を考えてるよなあ
34
そうそう! 演出のことになると、
食事も睡眠もおろそかになるしさ。けど——
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それだけ本気で打ち込んでるからこそ、
今回、アメリカ行きの話がきたんだろうな
36
……そうなのかな
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正直、まだ実感がわかないというか……
本当に、僕でいいのかという気持ちもあるよ
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アークランドのキャストC
ふふ。THE CENTER THEATREに来たのだって、
ほんの何カ月か前だもんね
39
アークランドのキャストA
でも、神代くんの演出は
THE CENTER THEATREでもすごく好評だったし、
声がかかるのも納得だよ
40
この前の、アメリカのアークランドのチームとの合同公演が
決め手だったみたいだな
41
全キャスト宙吊りからの、本物の水を使った巨大な滝の演出で
かなり注目を集めたみたいだし、納得だよ
42
アークランドのキャストB
ああ! あの演出、すごく面白かったもんな
43
アークランドのキャストB
最初に演出案を聞いた時は、
本当にできるのかってちょっとだけ思ったけど……
オレ達も演じてて楽しかったよ!
44
フフ。そう言ってもらえて、とても嬉しいです
45
あのショーは、僕が今までやってきたショーの
全てを詰め込んだ、集大成のようなものだったので
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集大成か……たしかに、それに相応しい
わくわくする演出だったな!
47
——この先も、
どんな演出を見せてくれるのか楽しみだ
48
アークランドのキャストB
よーし、それじゃあここで
オレ達から花束の贈呈だ! ——ほら!
49
花束……?
50
ありがとうございます。
こんなに盛大にお祝いしてもらえるなんて……
51
アークランドのキャストC
何言ってんの。仲間の実力が認められたんだから、
これくらい当たり前でしょ
52
あはは。嬉しいこと言ってくれるね!
53
アークランドのキャストD
おーい、ふたりとも!
こっちでスタッフ達が、挨拶したいってさ!
54
アークランドのキャストB
お、呼ばれてるぞ。早く行ってこい!
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……大丈夫か?
56
え?
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なんだか、かたい顔してるなと思ってさ。
ずっと気を張ってるっていうか
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俺の気のせいならいいんだけど、
もし無理してるのなら——
59
ああ、いや——心配させてしまってすまない
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僕なら大丈夫だよ。
少し、力が入ってしまっているだけだ
61
向こうで僕達が所属するBrillia Stageは、
優秀な若手役者や演出家をスカウトしていると聞くからね
62
僕の演出が、どこまで通用するかと思って
63
でも——
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そんなメンバーの中で、
どういうショーができるか……今からとても楽しみだよ
65
それなら——そこに俺達が加わるんだから、
もっと最高の劇団になるな!
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類と一緒なら、どんな場所でもきっと
最高のショーが作れる。だから——
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アメリカでもよろしくな、類!
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旭さん……
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ああ。世界でも指折りのショーをするというBrillia Stage……
そのステージを期待するお客さんは、たくさんいる
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THE CENTER THEATREで多くのお客さんに
笑顔を届けたように——
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アメリカでも、
共にいいショーをしよう
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(アークランドは世界各地にあるけれど……
そのなかでも、やはり本国で上演されるショーのレベルは
頭ひとつ抜けている……)
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(僕の実力が、どこまで通用するかは未知数だ。
けれど——)
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(どんな垣根も越えられるショーを作る……
その夢を叶えるために、進んでいかなくては)
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(あの時、僕を送り出してくれた
みんなのためにも——)
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