劇団三日月組 稽古場
???
——稽古再開するぞ、立ち位置につけ!
司
……!
司
(ここは……)
???
天馬、どうした?
司
——いえ!
なんでもありません!
なんでもありません!
司
(何をぼーっとしているんだ、天馬司!)
司
(ただでさえ厳しい三日月組の稽古。
気を抜くなど言語道断!)
気を抜くなど言語道断!)
司
……お待たせしてすみません、位置につきました!
三日月組団員A
よし。
……鬼島さんも、準備はいいですか?
……鬼島さんも、準備はいいですか?
鬼島
——ああ、問題ない!
三日月組団員A
それでは、台本14ページ。
六郎と勘助の殺陣のシーンから! よーい……
六郎と勘助の殺陣のシーンから! よーい……
三日月組団員A
——はじめ!
司・鬼島
『うおおおおおお!』
数分後
司
『なぜだ兄上! なぜ、新政府軍に肩入れなど……!』
司
『生涯をかけて将軍家に仕えると言った、
あの時の約束を違えるのか……!』
あの時の約束を違えるのか……!』
鬼島
『……時代とともに、人も変わる。
それだけだ』
それだけだ』
司
『……!』
三日月組団員B
おお、すげえ……。
あのふたり、また殺陣の腕前上げたんじゃないか?
あのふたり、また殺陣の腕前上げたんじゃないか?
三日月組団員C
うん。それに、スピードも……
司
(右上からの振り下ろしをいなして体重移動、
ひと呼吸あけ、前に踏み込んで——)
ひと呼吸あけ、前に踏み込んで——)
司
(……! いや、オレが想定より前に出てしまっている。
半歩分後ろか!)
半歩分後ろか!)
鬼島
(さすがだ、天馬くん。
今のアイコンタクトで、きっちり位置を修正してきたな)
今のアイコンタクトで、きっちり位置を修正してきたな)
鬼島
(このまま、ラストまで——)
三日月組団員C
……! さらにスピードが上がった!
三日月組団員B
この速さに加えて、正確さと迫力……
鬼島さんはもちろんだが、すごいな。天馬のやつ
鬼島さんはもちろんだが、すごいな。天馬のやつ
鬼島
(——いい動きだ)
鬼島
(ここに来た当初は、殺陣特有の体の使い方に苦戦していたが
よくついてこられている)
よくついてこられている)
鬼島
(だが——)
数分後
鬼島
それでは、一度休憩を挟もう!
15分後、今のシーンの続きから始めるぞ!
15分後、今のシーンの続きから始めるぞ!
三日月組団員達
『はい!』
司
鬼島さん! のちほど、さっきの殺陣のことで
すり合わせをお願いしてもいいですか?
すり合わせをお願いしてもいいですか?
司
鬼島さんが演じる兄の六郎と、オレが演じる弟の勘助——
感情の動きに合わせて、
少し立ち回りを変えてみたい箇所があって
感情の動きに合わせて、
少し立ち回りを変えてみたい箇所があって
鬼島
ああ、いいぞ!
それなら、あとでと言わず今からでも——
それなら、あとでと言わず今からでも——
三日月組団員B
——いやいや、ダメですって。
ちゃんと休憩しないと、あとに響きますよ〜?
ちゃんと休憩しないと、あとに響きますよ〜?
鬼島
む……それもそうか。
体を休めないと、練習中の集中力も下がる
体を休めないと、練習中の集中力も下がる
鬼島
殺陣の確認は、通し稽古の後でどうだ?
司
はい、お願いします!
三日月組団員C
ふふ。ふたりとも気合い入ってますね
三日月組団員B
まあ、気持ちはわかりますけど。
この演目は、三日月組初のダブル主演で——
この演目は、三日月組初のダブル主演で——
三日月組団員B
天馬の、三日月組での卒業公演になるわけですから
司
——はい。本当に、皆さんにはお世話になりました
司
殺陣も、体の使い方もまだまだだったオレに、
皆さんは丁寧に指導してくれて……
皆さんは丁寧に指導してくれて……
司
おかげで、たくさんの
得難い経験を積むことができました!
得難い経験を積むことができました!
三日月組団員A
はは! 天馬は本当に成長したよ
三日月組団員A
しかし、三日月組を出たら海外で役者の修行か。
思いきったことするよなあ
思いきったことするよなあ
三日月組団員C
うん。俺だったら、見知らぬ土地で修行なんて
怖気付いてできないと思う。すごいよ、本当
怖気付いてできないと思う。すごいよ、本当
司
いえ。これも、
スターになるという夢のためですから!
スターになるという夢のためですから!
司
まあ、これからニューヨークへ行って
次の劇団を探さなければならないので
本当に手探りではありますが……
次の劇団を探さなければならないので
本当に手探りではありますが……
三日月組団員B
そっか。演劇学校に通いながら
劇団を探すって言ってたもんな
劇団を探すって言ってたもんな
司
はい。オレには大きな実績がないので、
向こうで実力をつけながらにはなりますが……
向こうで実力をつけながらにはなりますが……
司
世界のスター目指して、走り続けていこうと思います!
司
そのためにも、最後の公演は
これまでの集大成として——全力で演じますね!
これまでの集大成として——全力で演じますね!
鬼島
全力で、か……
鬼島
——そうだな。
実際、君は目覚ましい成長を遂げたが、
課題点もまだまだ多い
実際、君は目覚ましい成長を遂げたが、
課題点もまだまだ多い
鬼島
しかしそれは、言い換えれば伸び代があるということ!
本番までに、さらに演技を磨いていこう
本番までに、さらに演技を磨いていこう
鬼島
だから——
鬼島
思いっきり、ぶつかってくるといい!
司
——はい! よろしくお願いします!
司
(ワンダーステージを出てから、
いろいろな劇団で修行させてもらったが……)
いろいろな劇団で修行させてもらったが……)
司
(日本を発つ前の最後の劇団が、三日月組で本当によかった。
紹介してくれた晶介さんには、感謝しないとな)
紹介してくれた晶介さんには、感謝しないとな)
司
(今でこそ、なんとか鬼島さんと渡り合えるようには
なってきているが……思い返せば、
最初は練習についていくだけで精一杯だった——)
なってきているが……思い返せば、
最初は練習についていくだけで精一杯だった——)
鬼島
どうした天馬くん! そんな体力で、
1公演全力で演じきれると思っているのか!?
1公演全力で演じきれると思っているのか!?
司
はあ……は……。
う……お、思っていません……!
う……お、思っていません……!
鬼島
それなら、立ち止まらずに走りきれ。
太陽は待ってくれないぞ!
日が沈むまでに、全力疾走残り5周だ!
太陽は待ってくれないぞ!
日が沈むまでに、全力疾走残り5周だ!
司
ぐ……了解です! 残り5周、走りきってみせます!
うおおおおおおお!
うおおおおおおお!
司
(——よし。ここの殺陣は、
ダイナミックさを出すためにも、回転を加えて思いきり——!)
ダイナミックさを出すためにも、回転を加えて思いきり——!)
三日月組団員C
うわっ……!
司
あ……す、すみません!
バランスを崩されたようですが、大丈夫ですか!?
バランスを崩されたようですが、大丈夫ですか!?
三日月組団員C
いや、すまない……。
まさか回転を加えるとは思わなくてね
まさか回転を加えるとは思わなくてね
三日月組団員C
でも、対処しきれなかった俺の問題だから、
天馬くんは気にしなくていいよ!
次は、受けきってみせるからさ!
天馬くんは気にしなくていいよ!
次は、受けきってみせるからさ!
司
は、はい。すみません……
司
(つい、えむ達にやるようにアドリブを入れてしまったが……
あいつらは、少し特殊だったからな)
あいつらは、少し特殊だったからな)
司
(それなら、次は——!)
鬼島
今日の公演、大成功だったな!
特に天馬くんの活躍ぶりには、目を見張ったぞ!
特に天馬くんの活躍ぶりには、目を見張ったぞ!
司
本当ですか……!
鬼島さんにそう言っていただけて、嬉しいです!
鬼島さんにそう言っていただけて、嬉しいです!
鬼島
はっはっは!
だが、ここで満足してはいけないぞ
だが、ここで満足してはいけないぞ
鬼島
以前いた劇団では、こんなものではなかったと聞いている。
君なら、もっとできるはずだ!
君なら、もっとできるはずだ!
司
……たしかに、殺陣の動きにはまだ
ぎこちなさが残っているかもしれません……
ぎこちなさが残っているかもしれません……
司
しかし、あらゆる動きを自分のものにしてこそスター!
これから、もっと精進していきます!
これから、もっと精進していきます!
司
……鬼島さんや三日月組の皆さんのおかげで、
本当に多くのことを学ぶことができました
本当に多くのことを学ぶことができました
司
この恩を返すためにも……
必ず、最高の舞台にしてみせます
必ず、最高の舞台にしてみせます
司
皆さんと——鬼島さんと、一緒に!
鬼島
ああ、期待しているぞ、天馬くん!
鬼島
最後まで、ともに駆け抜けようじゃないか!
司
はい!
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