一歌の部屋
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一歌
…………
2
一歌
…………ダメだ……
3
一歌
……いいメロディー浮かばないし、
歌詞からって思ったけど、こっちも全然だな
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一歌
……やっと、やりたいことを見つけられたのに
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一歌
…………
6
一歌
……みんな、本当にすごいな
7
一歌
志歩はバンドでプロになって、咲希は部活のエースで
穂波は進学のための準備を始めてて
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一歌
(頑張ってるみんなは、かっこよくて——)
9
一歌
(やりたいことが見つかったら、
私もあんな風になれるかもって思ったんだけどな)
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一歌
……ミクも、ごめんね。
全然、歌わせてあげられなくて
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ミク
………………
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一歌
どんな曲にしたいのか、もっとイメージ固めないと
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一歌
せめて、テーマが決まれば……ん?
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一歌
……天気予報のアプリから通知が来てる。
なんだろ
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一歌
これって……!
翌日
宮益坂女子学園 2年A組
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一歌
——穂波!
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穂波
一歌ちゃん、おはよう
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一歌
おはよう! ねえ、今年もそろそろ見れるみたいだよ!
しし座流星群!
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穂波
ふふ、知ってるよ
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穂波
2週間後の土曜日が極大観測日で、
夜7時頃が一番活発になるんだよね
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一歌
ちゃんと時間まで知ってるなんて、さすがだね
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穂波
気になってつい調べちゃったの
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穂波
……懐かしいね。
みんなでバンドをやった帰り道を思い出すな
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一歌
ジャングルジムに登って、みんなで見たね
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一歌
(……夜の7時か)
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一歌
(土曜日だし、もしかしたらみんなで一緒に——)
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一歌
ねえ、穂波。
穂波は、今回のしし座流星群見るの?
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穂波
見れたら見たいな……
29
穂波
でも、2週間後の週末オープンキャンパスがあるの
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穂波
ちょっと遠いところだから、
帰りも夜遅くなっちゃいそうで……。
多分、帰り道か電車の中で見ることになるかもなって
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一歌
そっか……
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一歌
(……夜ならみんなで集まれるかなって思ったけど、
やっぱり難しいよね)
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穂波
でも——大学を見に行くのは、また別の日にしようかな
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一歌
え……
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穂波
オープンキャンパスは年に何回かあるけど、
しし座流星群はこの時期しか見られないし
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一歌
……もしかして
私が誘っていいか迷ってるの、わかった?
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穂波
ううん。わたしが、そうしたかっただけだよ
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穂波
3年生になったら、もっと余裕なくなっちゃうと思うし
今のうちに、みんなと思い出作りたいなって思ってたの
39
穂波
それに……同じ学校に通えるのも、
きっと高校までだと思うから
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一歌
(そうだよね……)
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一歌
(私と咲希はまだ進路決めてないけど、穂波と志歩は——)
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一歌
……穂波、ありがとう
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一歌
じゃあ、4人で思い出が作れるように
咲希と志歩に流星群のこと話しに行こう!
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穂波
うん!
2年B組
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一歌
失礼します。咲希、志歩——
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咲希の声
はあ~。遠征の日、2週間後の土曜日で
ほんっっっとによかった~!
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咲希
もしその次の週だったら、
しほちゃんのライブに行けないところだったよ!
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志歩
別に、遠征とライブ被ってても来ればいいじゃん。
今の咲希、体力お化けだし
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咲希
も~。体力残ってても、絶対に間に合わないよ
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咲希
朝から夕方まで練習して、お疲れさま会やって帰るんだけど
バスで片道3時間かかるんだから
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志歩
ふーん。大変そうだね
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咲希
関係ないって顔してるけど、
しほちゃんもその辺、大変なんじゃなかったっけ?
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志歩
まあ、ライブの1週間前だしね。
多分、追い込み練習でスタジオに缶詰めかな
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咲希
……あれ? いっちゃんとほなちゃんだ!
やっほー!
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志歩
どうしたの?
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穂波
えっと……
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一歌
実は、しし座流星群を一緒に見ようって
誘いに来たんだけど……
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咲希
え、しし座流星群!? 見たい見たい!
いつ見られるの?
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穂波
……2週間後の週末だよ。
一番活発になるのは夜7時ぐらいなんだけど……
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志歩
……その時間は、まだスタジオで練習してそうだな
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咲希
アタシも……多分、帰りのバスの中かも
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一歌
そう、だよね……
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一歌
……ごめん、ふたりとも!
さっきのは忘れて
宮益坂
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一歌
……穂波、ミニプラネタリウム手伝ってくれてありがとう
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一歌
おかげで投影機作りが一気に進んだよ。
やっぱり、星に詳しい人がいてくれると頼もしいな
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穂波
役に立ててよかった。
放課後は小論文の添削があるから、途中参加ばっかりだし……
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一歌
そういえば練習用の課題、
難しくて量も多いみたいだね
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穂波
うん。家に帰って宿題を終わらせたら、
後はずっと共通テストの過去問を解くか、小論文を書いてるよ
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穂波
特に小論文は、テーマが難しかったり、
福祉系の専門用語が出てきたりして……
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穂波
ひとつ書くだけでも時間がかかっちゃうの
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一歌
……穂波でも、そんなに大変なんだね
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一歌
……もしかして
私が誘っていいか迷ってるの、わかった?
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穂波
ううん。わたしが、そうしたかっただけだよ
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穂波
3年生になったら、もっと余裕なくなっちゃうと思うし
今のうちに、みんなと思い出作りたいなって思ってたの
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一歌
(……穂波は、ああ言ってくれたけど)
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一歌
……あの、穂波。しし座流星群のことなんだけど……
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穂波
あ……咲希ちゃんと志歩ちゃん、残念だったね
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穂波
でも、ふたりでも楽しめたら——
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一歌
そのことなんだけど……
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一歌
……オープンキャンパスを優先したほうが
いいんじゃないかな
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穂波
え……
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一歌
……ごめん。予定ずらそうとしてくれてたのに
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一歌
でも——思ったんだ
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一歌
咲希も志歩も
自分のやりたいこととか、夢に向かって頑張ってる
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一歌
だから……
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一歌
——やっぱり、
穂波にも、自分を優先してほしいんだ
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穂波
でも……
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一歌
ほら、予定ずらしたせいで他の行きたい大学の
オープンキャンパスと被ったらいけないし、
行ける時に行っておかないと!
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一歌
それに、流星群は一緒に見られなくても、
空が晴れてれば、どこにいても見れるから
90
一歌
だから、月曜日のお昼とかに話そうよ。
流れ星、いくつ見れた?とか
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穂波
一歌ちゃん……
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穂波
……わかった
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穂波
じゃあ、月曜日にいろいろ話させてほしいな
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一歌
……うん。楽しみにしてるね
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一歌
……しし座流星群、みんなで見たかったな
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一歌
だけど……仕方ないよね
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一歌
……同じ学校に通えるのも最後、か
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一歌
(話す時間がなくても、お昼一緒に食べられなくても
毎日、元気そうな顔は見れたのに)
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一歌
(それも、もうできなくなるんだ)
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一歌
寂しいな……
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一歌
ダメだ……。
帰ってきてから、ずっとこんなことばっかり考えて
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一歌
曲作りも、全然進まない
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一歌
……ミク。
こんな時、どうしたらいいんだろうね
104
???
————…………
105
一歌
(なんだろう……。何か、聞こえる……)
106
???
——————
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一歌
(声……?)
108
???
私、この曲をとおして、
一歌達の世界でみんなと一緒に歌えるんだ
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一歌
(今、私の名前……)
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一歌
(ううん。それより、この『声』——)
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一歌
(……すごく、知ってる気がする)
112
???
きっと、必要な人達の胸に届くはずだから。
一歌の想いも、このメロディーも
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一歌
(——そうだ)
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一歌
(小さい頃から、ずっとずっと聴いてきた……)
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一歌
(楽しい時も、つらい時もずっと——)
116
???
これからも、一歌の想いを大切にしてね
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一歌
(この『声』は——!)
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一歌
————ミクっ!!
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一歌
あれ……
120
一歌
……私、いつのまにか寝ちゃってたんだ
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一歌
そう、だよね……。
ミクと話せるなんて、夢に決まってるのに
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一歌
弱音吐いてばっかりだから、
ミクが応援しに来てくれたのかな
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一歌
…………応援
124
一歌
そうだ、私……
125
一歌
みんなが頑張ってる姿を見て、
私も何かしたいっていう気持ちになって
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一歌
でも、それだけじゃなくて
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一歌
私は——
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一歌
みんなを、応援したかったんだ
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一歌
頑張ってる3人は、本当にかっこよくて——
やりたいことや夢が叶うといいなって、ずっと思ってた
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一歌
(……これから先、一緒にいられなくなる)
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一歌
(それは……すごく寂しい、けど)
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一歌
(でも——)
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一歌
(私達なら、きっといつまでも友達でいられるはずだから)
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一歌
——決めた
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一歌
この想いを、ミクに歌ってもらおう
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一歌
よし、やろう!
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