撮影スタジオ
カメラマン
——OK!
さすが雫ちゃん、いい表情撮れたよ!
さすが雫ちゃん、いい表情撮れたよ!
カメラマン
今日もオーラ全開だったね!
いい表紙になりそうだ
いい表紙になりそうだ
雫
ありがとうございます。
またよろしくお願いします
またよろしくお願いします
雫
(……よかった。今日もやりきれたみたいね)
雫
(——“日野森雫”を)
数時間後
雫の部屋
雫
えっと、アプリを開いたら、ホームボタンを押して……
雫
あ……見れたわ
雫
(……この前カフェで撮った写真、
ちゃんとアップされてるみたいね)
ちゃんとアップされてるみたいね)
雫
(マネージャーさんがアカウントを管理してくれて、
本当にありがたいわ)
本当にありがたいわ)
雫
(念のため、投稿文もチェックしておかなくちゃ。
えっと……『少し肌寒かったので、カーディガンを使ったコーデ。
丈が短めなので、ワイドパンツと合わせてみました』)
えっと……『少し肌寒かったので、カーディガンを使ったコーデ。
丈が短めなので、ワイドパンツと合わせてみました』)
雫
(『色味はサックスブルーとホワイトで大人っぽく爽やかに。
お気に入りの組み合わせなので、
よかったら真似してみてくださいね』)
お気に入りの組み合わせなので、
よかったら真似してみてくださいね』)
雫
(『2枚目は、シブヤのカフェで。
ハーブティーと一緒にお気に入りの詩集を読みました』)
ハーブティーと一緒にお気に入りの詩集を読みました』)
雫
え……
雫
(マネージャーさんに送った文章では、
お気に入りの物語を紹介していたはずだけど……)
お気に入りの物語を紹介していたはずだけど……)
雫
(たしかに、ファンタジー小説は
“私”らしくないかもしれないわね)
“私”らしくないかもしれないわね)
雫
(またマネージャーさんを困らせちゃったかしら……。
もっと、しっかりしないと)
もっと、しっかりしないと)
コメント
『今日もお美しい……』
『雫様目指してコーデの勉強頑張ります!』
『私も詩集読んでみようかな』
『雫様目指してコーデの勉強頑張ります!』
『私も詩集読んでみようかな』
志歩
お姉ちゃん。お風呂わいたけど先入る?
雫
しぃちゃん……!
呼びに来てくれてありがとう
呼びに来てくれてありがとう
雫
でも、あとで大丈夫よ。
ちょうど、ファッションの勉強をするところだったの
ちょうど、ファッションの勉強をするところだったの
志歩
勉強って……その雑誌、全部読むの?
10冊くらいありそうだけど……
10冊くらいありそうだけど……
雫
ええ。最近のトレンドを押さえようと思って
雫
私のコーディネートを参考にしてるって
言ってくれる人もいるから、
喜んでもらえるように頑張らなくちゃ
言ってくれる人もいるから、
喜んでもらえるように頑張らなくちゃ
志歩
……そっか
志歩
でも……大丈夫?
雫
え……?
志歩
ずっと、休めてないみたいに見えるから
雫
あ……
雫
……ありがとう、しぃちゃん。心配してくれて
雫
でも——みんなが望んでいるのは
“完璧な日野森雫”だから
“完璧な日野森雫”だから
雫
ちゃんと調べて、徹底しておかないと
志歩
……だからって、そこまで根詰めなくてもいいんじゃない?
雫
……いいえ。モデルに復帰した時、誓ったの。
もう二度と、責任や期待から逃げないって
もう二度と、責任や期待から逃げないって
志歩
お姉ちゃん……
雫
(……アイドルの時は結局、
逃げるみたいに辞めてしまって……
たくさんの人を悲しませてしまったわ)
逃げるみたいに辞めてしまって……
たくさんの人を悲しませてしまったわ)
雫
(でも、“誰かに希望を届けたい”って
気持ちは残って……)
気持ちは残って……)
雫
(ありがたいことに、モデルとしてそのチャンスをもらえたから)
雫
(——今度こそ、ちゃんとやり遂げなくちゃ)
志歩
……わかった。
でも、無理しすぎないでね
でも、無理しすぎないでね
雫
ええ。ありがとう
志歩
……じゃあ、お風呂先にもらうから
雫
いってらっしゃい。ゆっくりしてきてね
雫
(……しぃちゃんは、本当に優しいわね)
雫
(心配をかけてしまって、申し訳ないけど……)
雫
(本当の私じゃ、何も届けられないから——)
雫
(これからも、
みんなが求めてくれる私を生きていかないと)
みんなが求めてくれる私を生きていかないと)
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