数日後
アークランド 練習室
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——急なお願いだったのに、オーケーしてくれて嬉しいよ
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というわけで……今日から合同練習、よろしく!
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はいっ!
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しかし、旭さん達もコンテストに出るとは驚きでした
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はは!
まあ、外部向けのコンテストに
俺達アークランドチームが出るなんて思わないよな
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どうも上としては、このコンテストでアークランドの若手にも
成長してほしいみたいでさ
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『スタッフの手は借りないで、
他の劇団と同じように若手だけで作り上げろ!』って
お達しが出ているんだ
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なるほど。
たしかに、それはいい経験になりそうですね
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ああ! 実際、自分達の力だけで
同年代の役者や演出家と競い合えるのは楽しいしな!
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寧々
そうですね……。
わたしも、楽しいし、負けられないなって気持ちになるので、
わかります
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えむ
うんっ!
みんなでせーので勝負して、もーっといいショーにしちゃおう!
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——みんなとも刺激し合えたらいいな。
この合同練習も、そのために頼んだしね
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というわけで、改めてよろしく!
負けないからな!
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はい!
オレ達も負けませんよ!
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アークランドキャストA
お! ワンダーランズ×ショウタイム、来てくれたのか!
またよろしくな!
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アークランドキャストB
隣同士で練習できるなんて、嬉しいな!
演目は違うけど、準備運動とか発声は一緒にやっていこうね!
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あ……はい!
皆さん、またよろしくお願いします!
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よーし!
それじゃあ早速ストレッチからいこう!
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えむ・寧々・類
『はーい!』
『はい!』
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(連絡をもらった時は驚いたが……
いい機会をもらえたな)
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(ライバルとなるアークランドのショーを近くで見られる……
これほどの刺激はないだろう)
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いつも以上に、気合を入れていかねばな……!!
1時間後
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えむ
——もう、おにぎりはこりごりだよ~!!
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では、エチュードはこれくらいにして、
ここからは分かれて練習していきましょうか
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わかった。
この机のこっち側が俺達で、あっち側が類くん達だな
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はい!
それではまた!
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さて、早速今日も冒頭のシーンからやっていこうか。
用意はいいかい?
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えむ
はーいっ!
フルパワーでがんばろ~っ!
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寧々
コンテストまでは2カ月もないし、
1秒も無駄にしてられないもんね
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——ああ!
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(合同練習でもやることは変わらない)
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(修行を経て身につけた技をもって、
全力で演じるのみ!)
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やるぞ!
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『さあ、行こうハート!
俺達の愛のパラダイスへ!』
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寧々
『ちょ、ちょっと、ブレス~!?』
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——うん、いいね。
特に司くん、ステージを大きく使えているよ
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ここは小さな子供たちにも喜んでもらえるよう、
オーバーな演技にしてもらいたかったからね。バッチリだ
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寧々
あ……なら、わたしは今の動きじゃまだ小さいんじゃ……
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ふむ……。
悪くはないけれど……
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たしかに、気を付けた方がいいね。
ハートの内向的な性格をそのまま素直に演じてしまうと、
あの大きな舞台では埋もれてしまう可能性がある
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寧々
そうだよね……。
……これぐらいの大きさならどう?
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えむ
ん~、まだちょっとちっちゃいかも?
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——ここはオレを基準に考えるといいだろう
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観客は舞台上のハートとブレスを見ているからな。
自然、比べて見る。だから——これぐらいは動く必要がある
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動きの緩急も同じだ。
オレのスピードよりもう少し遅くして……これぐらいか
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寧々
たしかに……。
ありがと、司! もう1回やってみる!
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ああ!
……そうだ、類。この台詞の次なんだが——
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ハートに断られたあと、言い返すシーンがあるだろう?
今はコミカルに、瞬時に言い返すようになっているが……
ふたりの心情的なすれ違いを描くうえでは重要な場面だ
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大げさに驚くよりは、一瞬動きを止める方が
印象に残るのではないかと思ってな。どうだろうか?
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……ふむ。
ここは掛け合いで盛り上げようと思ったけれど……
一度やってみせてくれるかい?
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ああ、わかった。
寧々、やるぞ!
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寧々
うん!
…………
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寧々
『——バカバカバカっ!
ブレスはもう、私のことなんてどうでもいいんでしょう!?』
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寧々
『だからそんな風に簡単に、
またあとで、また今度、って言うのよっ!』
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『…………っ』
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『それは君だってそうだろうっ!
いつも俺が会いにいくと留守にしていて……!
手紙の返事だってそっけないじゃないか!』
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寧々
『そ、それは……』
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——うん、いいね。
止めると少々勢いが落ちてしまうかと思っていたけれど、
今のはとてもよかった
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そうか……! ならばこれでいこう!
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(——いい調子だ)
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(春名座で修得した役の人生を想像する心。
三日月組で修得した役を全身で表現する力。
そして森ノ宮で修得した様々な役を演じる技——)
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(これらのおかげで、
以前よりも役を掴みやすく、演じやすくなっている)
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(ワークショップでも、アークランドの皆さんに
後れをとることはなかったと考えると……)
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着実に成長できているな……!!
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???
ふふふっ
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ん?
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えむ
旭さん!
練習はどうしたんですか?
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ちょうどついさっき昼休憩に入ったんだ。
そしたらおもしろいシーンが見えたからさ
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特に司くん! 演技が前とかなり変わったね!
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え?
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まず動きが違うよね。
無駄がないっていうか……
役を表現するのに必要なことをしっかりできてるっていうか
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みんなが知ってるかはわからないけど——
三日月組にいる鬼島さんっていう人を思い出したよ
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え!?!?
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旭さん……鬼島さんをご存じなんですか?
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ああ。以前共演したことがあってね
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もしかして、本当に鬼島さんに習ったの?
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はい!
しばらく三日月組でお世話になりました
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なるほど!
だから似て見えたんだろうな
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じゃあ……もしかしたら、春名座にも行ってたりしない?
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そうですが……なぜわかるんですか?
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あはは、これはカンだよ。
役に入る前の司くんと寧々ちゃんの雰囲気が、
集中してる時の獏野くんにちょっと似てたから
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寧々
そ、それだけで……!?
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(見ただけでそこまでわかってしまうとは……)
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(さすが旭さんだ。
様々な演技を学び、体得してきたからこそだな)
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(……! そうだ!)
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旭さん!
もしまだ時間があったらでいいんですが——
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オレが演じるこのブレス王子という役、
旭さんならばどう演じるか、聞かせてもらってもいいですか?
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え?
そうだな……少し台本を見せてもらってもいいかな?
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はい、どうぞ!
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ありがとう!
10分くらい時間をくれる?
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わかりました!
お忙しい中、ありがとうございます
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(……演技プランは自分なりに試行錯誤している。
だが、あのシーン——)
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『…………いいんだ。もう』
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『俺が何をしようと、
人は憎み合い、国は争い続ける』
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『平和のためにどうすればいいのか考え続けても、
行動し続けても、どうせ……何も変わらない』
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『——全て、無意味だ』
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(劇中で最も絶望するシーン)
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(あそこでブレスの感じる“絶望”に、
オレはまだ到達していない気がする)
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(旭さんならブレスをどう演じるか——
聞かせてもらえれば、参考になるはずだ)
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……うん。ざっくりだけど、イメージできたよ!
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本当ですか!
じゃあ、早速聞かせていただいても——
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うん、そうだね。えっと——
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ああ……でも、話すだけだとちゃんと伝わるか微妙だから……
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よかったら、今ここでやらせてもらってもいいかな?
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……え?
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