数日後
アークランド 練習室
旭
——急なお願いだったのに、オーケーしてくれて嬉しいよ
旭
というわけで……今日から合同練習、よろしく!
司
はいっ!
司
しかし、旭さん達もコンテストに出るとは驚きでした
旭
はは!
まあ、外部向けのコンテストに
俺達アークランドチームが出るなんて思わないよな
まあ、外部向けのコンテストに
俺達アークランドチームが出るなんて思わないよな
旭
どうも上としては、このコンテストでアークランドの若手にも
成長してほしいみたいでさ
成長してほしいみたいでさ
旭
『スタッフの手は借りないで、
他の劇団と同じように若手だけで作り上げろ!』って
お達しが出ているんだ
他の劇団と同じように若手だけで作り上げろ!』って
お達しが出ているんだ
類
なるほど。
たしかに、それはいい経験になりそうですね
たしかに、それはいい経験になりそうですね
旭
ああ! 実際、自分達の力だけで
同年代の役者や演出家と競い合えるのは楽しいしな!
同年代の役者や演出家と競い合えるのは楽しいしな!
寧々
そうですね……。
わたしも、楽しいし、負けられないなって気持ちになるので、
わかります
わたしも、楽しいし、負けられないなって気持ちになるので、
わかります
えむ
うんっ!
みんなでせーので勝負して、もーっといいショーにしちゃおう!
みんなでせーので勝負して、もーっといいショーにしちゃおう!
旭
——みんなとも刺激し合えたらいいな。
この合同練習も、そのために頼んだしね
この合同練習も、そのために頼んだしね
旭
というわけで、改めてよろしく!
負けないからな!
負けないからな!
司
はい!
オレ達も負けませんよ!
オレ達も負けませんよ!
アークランドキャストA
お! ワンダーランズ×ショウタイム、来てくれたのか!
またよろしくな!
またよろしくな!
アークランドキャストB
隣同士で練習できるなんて、嬉しいな!
演目は違うけど、準備運動とか発声は一緒にやっていこうね!
演目は違うけど、準備運動とか発声は一緒にやっていこうね!
司
あ……はい!
皆さん、またよろしくお願いします!
皆さん、またよろしくお願いします!
旭
よーし!
それじゃあ早速ストレッチからいこう!
それじゃあ早速ストレッチからいこう!
えむ・寧々・類
『はーい!』
『はい!』
『はい!』
司
(連絡をもらった時は驚いたが……
いい機会をもらえたな)
いい機会をもらえたな)
司
(ライバルとなるアークランドのショーを近くで見られる……
これほどの刺激はないだろう)
これほどの刺激はないだろう)
司
いつも以上に、気合を入れていかねばな……!!
1時間後
えむ
——もう、おにぎりはこりごりだよ~!!
類
では、エチュードはこれくらいにして、
ここからは分かれて練習していきましょうか
ここからは分かれて練習していきましょうか
旭
わかった。
この机のこっち側が俺達で、あっち側が類くん達だな
この机のこっち側が俺達で、あっち側が類くん達だな
司
はい!
それではまた!
それではまた!
類
さて、早速今日も冒頭のシーンからやっていこうか。
用意はいいかい?
用意はいいかい?
えむ
はーいっ!
フルパワーでがんばろ~っ!
フルパワーでがんばろ~っ!
寧々
コンテストまでは2カ月もないし、
1秒も無駄にしてられないもんね
1秒も無駄にしてられないもんね
司
——ああ!
司
(合同練習でもやることは変わらない)
司
(修行を経て身につけた技をもって、
全力で演じるのみ!)
全力で演じるのみ!)
司
やるぞ!
司
『さあ、行こうハート!
俺達の愛のパラダイスへ!』
俺達の愛のパラダイスへ!』
寧々
『ちょ、ちょっと、ブレス~!?』
類
——うん、いいね。
特に司くん、ステージを大きく使えているよ
特に司くん、ステージを大きく使えているよ
類
ここは小さな子供たちにも喜んでもらえるよう、
オーバーな演技にしてもらいたかったからね。バッチリだ
オーバーな演技にしてもらいたかったからね。バッチリだ
寧々
あ……なら、わたしは今の動きじゃまだ小さいんじゃ……
類
ふむ……。
悪くはないけれど……
悪くはないけれど……
類
たしかに、気を付けた方がいいね。
ハートの内向的な性格をそのまま素直に演じてしまうと、
あの大きな舞台では埋もれてしまう可能性がある
ハートの内向的な性格をそのまま素直に演じてしまうと、
あの大きな舞台では埋もれてしまう可能性がある
寧々
そうだよね……。
……これぐらいの大きさならどう?
……これぐらいの大きさならどう?
えむ
ん~、まだちょっとちっちゃいかも?
司
——ここはオレを基準に考えるといいだろう
司
観客は舞台上のハートとブレスを見ているからな。
自然、比べて見る。だから——これぐらいは動く必要がある
自然、比べて見る。だから——これぐらいは動く必要がある
司
動きの緩急も同じだ。
オレのスピードよりもう少し遅くして……これぐらいか
オレのスピードよりもう少し遅くして……これぐらいか
寧々
たしかに……。
ありがと、司! もう1回やってみる!
ありがと、司! もう1回やってみる!
司
ああ!
……そうだ、類。この台詞の次なんだが——
……そうだ、類。この台詞の次なんだが——
司
ハートに断られたあと、言い返すシーンがあるだろう?
今はコミカルに、瞬時に言い返すようになっているが……
ふたりの心情的なすれ違いを描くうえでは重要な場面だ
今はコミカルに、瞬時に言い返すようになっているが……
ふたりの心情的なすれ違いを描くうえでは重要な場面だ
司
大げさに驚くよりは、一瞬動きを止める方が
印象に残るのではないかと思ってな。どうだろうか?
印象に残るのではないかと思ってな。どうだろうか?
類
……ふむ。
ここは掛け合いで盛り上げようと思ったけれど……
一度やってみせてくれるかい?
ここは掛け合いで盛り上げようと思ったけれど……
一度やってみせてくれるかい?
司
ああ、わかった。
寧々、やるぞ!
寧々、やるぞ!
寧々
うん!
…………
…………
寧々
『——バカバカバカっ!
ブレスはもう、私のことなんてどうでもいいんでしょう!?』
ブレスはもう、私のことなんてどうでもいいんでしょう!?』
寧々
『だからそんな風に簡単に、
またあとで、また今度、って言うのよっ!』
またあとで、また今度、って言うのよっ!』
司
『…………っ』
司
『それは君だってそうだろうっ!
いつも俺が会いにいくと留守にしていて……!
手紙の返事だってそっけないじゃないか!』
いつも俺が会いにいくと留守にしていて……!
手紙の返事だってそっけないじゃないか!』
寧々
『そ、それは……』
類
——うん、いいね。
止めると少々勢いが落ちてしまうかと思っていたけれど、
今のはとてもよかった
止めると少々勢いが落ちてしまうかと思っていたけれど、
今のはとてもよかった
司
そうか……! ならばこれでいこう!
司
(——いい調子だ)
司
(春名座で修得した役の人生を想像する心。
三日月組で修得した役を全身で表現する力。
そして森ノ宮で修得した様々な役を演じる技——)
三日月組で修得した役を全身で表現する力。
そして森ノ宮で修得した様々な役を演じる技——)
司
(これらのおかげで、
以前よりも役を掴みやすく、演じやすくなっている)
以前よりも役を掴みやすく、演じやすくなっている)
司
(ワークショップでも、アークランドの皆さんに
後れをとることはなかったと考えると……)
後れをとることはなかったと考えると……)
司
着実に成長できているな……!!
???
ふふふっ
司
ん?
えむ
旭さん!
練習はどうしたんですか?
練習はどうしたんですか?
旭
ちょうどついさっき昼休憩に入ったんだ。
そしたらおもしろいシーンが見えたからさ
そしたらおもしろいシーンが見えたからさ
旭
特に司くん! 演技が前とかなり変わったね!
司
え?
旭
まず動きが違うよね。
無駄がないっていうか……
役を表現するのに必要なことをしっかりできてるっていうか
無駄がないっていうか……
役を表現するのに必要なことをしっかりできてるっていうか
旭
みんなが知ってるかはわからないけど——
三日月組にいる鬼島さんっていう人を思い出したよ
三日月組にいる鬼島さんっていう人を思い出したよ
司
え!?!?
司
旭さん……鬼島さんをご存じなんですか?
旭
ああ。以前共演したことがあってね
旭
もしかして、本当に鬼島さんに習ったの?
司
はい!
しばらく三日月組でお世話になりました
しばらく三日月組でお世話になりました
旭
なるほど!
だから似て見えたんだろうな
だから似て見えたんだろうな
旭
じゃあ……もしかしたら、春名座にも行ってたりしない?
類
そうですが……なぜわかるんですか?
旭
あはは、これはカンだよ。
役に入る前の司くんと寧々ちゃんの雰囲気が、
集中してる時の獏野くんにちょっと似てたから
役に入る前の司くんと寧々ちゃんの雰囲気が、
集中してる時の獏野くんにちょっと似てたから
寧々
そ、それだけで……!?
司
(見ただけでそこまでわかってしまうとは……)
司
(さすが旭さんだ。
様々な演技を学び、体得してきたからこそだな)
様々な演技を学び、体得してきたからこそだな)
司
(……! そうだ!)
司
旭さん!
もしまだ時間があったらでいいんですが——
もしまだ時間があったらでいいんですが——
司
オレが演じるこのブレス王子という役、
旭さんならばどう演じるか、聞かせてもらってもいいですか?
旭さんならばどう演じるか、聞かせてもらってもいいですか?
旭
え?
そうだな……少し台本を見せてもらってもいいかな?
そうだな……少し台本を見せてもらってもいいかな?
司
はい、どうぞ!
旭
ありがとう!
10分くらい時間をくれる?
10分くらい時間をくれる?
司
わかりました!
お忙しい中、ありがとうございます
お忙しい中、ありがとうございます
司
(……演技プランは自分なりに試行錯誤している。
だが、あのシーン——)
だが、あのシーン——)
司
『…………いいんだ。もう』
司
『俺が何をしようと、
人は憎み合い、国は争い続ける』
人は憎み合い、国は争い続ける』
司
『平和のためにどうすればいいのか考え続けても、
行動し続けても、どうせ……何も変わらない』
行動し続けても、どうせ……何も変わらない』
司
『——全て、無意味だ』
司
(劇中で最も絶望するシーン)
司
(あそこでブレスの感じる“絶望”に、
オレはまだ到達していない気がする)
オレはまだ到達していない気がする)
司
(旭さんならブレスをどう演じるか——
聞かせてもらえれば、参考になるはずだ)
聞かせてもらえれば、参考になるはずだ)
旭
……うん。ざっくりだけど、イメージできたよ!
司
本当ですか!
じゃあ、早速聞かせていただいても——
じゃあ、早速聞かせていただいても——
旭
うん、そうだね。えっと——
旭
ああ……でも、話すだけだとちゃんと伝わるか微妙だから……
旭
よかったら、今ここでやらせてもらってもいいかな?
司
……え?
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