司の部屋

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(……絶望……)
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(王子の絶望をどうイメージし、どう表現するか。
それが、このショーの鍵になる)
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(そしてそのためにはまず、旭さんも言っていたように、
『自分が一番絶望する状況』を掴む必要がある)
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(だが——)
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想像ができん……
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(……何度か、絶望しかけたことはある)

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7

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(病気で苦しむ咲希に何もしてやれなかった時。
初めてのショーが失敗に終わった時。
自らの不甲斐なさを知った時——)
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(なんとオレは無力かと……そう感じた。
しかし——)
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(立ち上がれないほど絶望はしなかった。
無力でも、まだ立ち上がりたいと思えた)
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(だが……)
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(このシーンでのブレス王子は、完全に絶望しきっている。
動くこともできないほどに)
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(それほどの絶望を感じる状況——)
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ダメだ……。
行き詰まってしまったな……
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……はぁ。
もう遅いが……セカイに行って頭を切り替えるか

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ん? 誰かの声……?
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父さん達はもう寝たはずだが——
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は……っ!
も、もしや……!?
天馬家 リビング

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泥棒ならば、返り討ちにせねば……!
いや、その前に通報か……!?
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いずれにせよこの天馬司、なんとしても家族を守——
む?
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テレビCM

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『——わたしの保険はこれで決まり!
フラワー生命!』
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な……なんだ。テレビか
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誰かが消し忘れていたようだな。
まったく。リモコンはと……

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アナウンサー

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『——ここからはワールドニュースです』
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ん?
25

アナウンサー

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『先週から本格化した軍事侵攻により、
現地では深刻な影響が出ています』
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アナウンサー

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『両国の対立は激化の一途を辿っており、
国連は報復の連鎖が起きることを懸念して————』
27

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あ……
28

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戦争か……
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(……これこそ、想像がつかんな)
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(——生まれ育った場所に、爆弾が落ちる)
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(街や学校が破壊され、
人々の顔が悲しみと怒りに染まる)
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(当たり前の日常が一変し、
そこでは笑顔も消え失せ——)
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……あまり積極的に想像したくはないな
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(だが……)
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(いつか、こんな苦しみのただ中にいる人達も
笑顔にできるようになりたい)
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(そのためにも、もっと力をつけて
役を掴めるようになりたいが——)
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……まだまだ、道は遠いな……
ワンダーランドのセカイ
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……オレが一番絶望する状況……
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(……何度か考え、
『実際どうなったら絶望するか』は、見えてきた気はする)
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(オレが絶望するとすればきっと——)
41

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いや、しかしそれでは……
42

???

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ぴょん、ぴょん、ぴょーん……
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ん?
また何か聞こえたような……

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ミク

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ぴょんぴょーん!!
司くん、こんばんぴょーん!!
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どわっ!
ミ、ミク!!
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な、なんだそのぴょんぴょんというのは!
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ミク

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えへへ、うさぎさんのショーを考えてたら、
いつの間にかぴょんぴょんしちゃってたんだ~♪
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そ、そうか……。
なんというか、相変わらず自由だな……
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ミク

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えへへ、それほどでもないぴょん~♪
司くんは練習に来たの?
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ああ……。
王子への理解を深めようと思ってな
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ミク

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わあっ☆
それって、コンテストのショーの王子さまだよね?
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ミク

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楽しみだな~!
王子さまみたいな役、司くんすっごく上手だもんね☆
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しかし……これがなかなかうまくいかん
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ミク

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そうなの!?
なんでなんでーっ!?
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……簡単に言えば、
まだ想像力が足りんのだろうな
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今日は、王子の絶望について考えていたんだが——
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ミク

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なるほど~。
司くんは、どうなれば絶望するのかなって考えてたんだね!

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58

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……一応、自分なりの答えは出ているんだがな
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ミク

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えっ? そうなの?
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ああ。
オレが絶望するとすれば——
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それは、夢を失う時だ
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ミク

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それって、スターになる夢がなくなっちゃうってこと?
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そうだ。
正確には、夢を諦める時だろうな
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一番の夢を諦める。
……そうなったら、きっとオレは深く絶望するだろう
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これからどうすればいいのか、
何を目的に生きていけばいいのかわからず……
己を見失うかもしれない
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だから絶望をイメージしたいならば、
夢を諦める瞬間を想像すればいい
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しかし——ここでひとつ問題が出てくる
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ミク

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問題?
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夢を諦める自分が想像できない、ということだ
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ミク

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あ……そっか!
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ミク

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司くんは、絶対絶対スターになる!って決めてるもんね!
72

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そのとおりだ!
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たとえば事故にあって歩けなくなっても、
声が出なくなっても——オレは、スターになるという夢を
諦められないだろう
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何があっても夢を追い続ける!と覚悟したからな!
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ミク

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司くん……
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ミク

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えへへっ♪
司くんはやっぱり司くんだね~☆
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……そういう自分自身の決意は誇らしく思う
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しかし、そうなると結局、王子の絶望を掴めなくてな。
……これからどうするべきか……

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…………。
これでは、旭さんに追いつけんな
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ミク

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旭さん?
あ……そういえば、一緒に練習するって言ってたよね!
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ああ。おかげでいろいろと勉強になっている
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しかし……同時に思い知らされる。
あの人は、オレよりもずっと速く、遠くへ進んでいるのだと
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ミク

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司くん……
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だが——ともかく、やるしかない
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進むことでしか、道を切り拓くことはできないからな
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ミク

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あ…………
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ミク

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(……今日の司くん、
いつもよりずーっと遠くを見てる)
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ミク

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(きっと、ほんとにほんとに、
旭さんが遠くにいるのが、悔しいんだろうな)
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ミク

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(でも、悔しい気持ちも悲しい気持ちもぐーって飲み込んで、
ちょっとずつ前に進もうとしてて………)
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ミク

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……すっごく、かっこいいなあ
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ん? 今、何か言ったか?
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ミク

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えっとね——あっ!
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ミク

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ミクにじゃんけんで勝ったら教えてあげるっ☆
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なぬ?
そう言われると余計気になるが——
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???

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——司く~~~~ん!!
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ミク

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ひょ?
この声って——

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えむ

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あっ、ミクちゃんもいる!
こんばんわんだほーい!
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やっぱりここにいたんだね
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お前達……どうしてここに!?