THE CENTER THEATRE
1
他劇団の役者
『——今こそ、この扉を開く時!』
2
(……さすがだな)
3
(劇団アラウミ、乙女企画——。
有名な劇団から、知る人ぞ知る劇団まで
集まっているだけのことはある)
4
えむ
はあ~!
これもすっごくおもしろかったね!
5
寧々
うん……!
正直、どの劇団が優勝してもおかしくないって感じだよね
6
ああ。どの劇団もハイレベルだからね
7
しかし——次は優勝候補と言われている劇団だ。
更に期待できそうだよ
8
……旭さん達のチームか……
9
ん? なんだ?
急に劇場が……
10
王子
『——うーん、見つからないなあ!』
11
寧々
あ……!
旭さんが、客席から……!
12
王子
『もしかして君かい!? 僕の運命の人!』
13
寧々
えっ、わ、わたし!?
14
王子
『それとももしかして……たくましい腕の君かい!?』
15
他劇団の役者
オ、オレ!?
16
王子
『うーん、どうも違うようだな……。
こんなに探してもいないなんて、
僕のプリンセスは一体どこにいるんだろう?』
17
……フフ、掴みはばっちりだね
18
(なるほど、旭さんは『運命の姫を探す王子』だったか)
19
(隣で稽古を見てはいたが、
通しで見るのは初めてだ)
20
(どんなショーになるのか……楽しみだな)
21
王子
『ああ、どうしてこんなに探しても
僕のプリンセスは見つからないのだろう?』
22
王子
『はっ! もしや、悪い竜に囚われている……!?
ならば助けださないと!』
23
小鳥
『王子、王子!
そもそも、姫はどんな人か知ってるの?』
24
王子
『そりゃあもちろん!
僕のプリンセスは、
それはそれは深い愛で僕を包み込んでくれる存在さ!』
25
小鳥
『深い愛ねえ……。
なんだか漠然としてるなあ』
26
王子
『……ねえ、本当に僕のプリンセスはいるのかな?』
27
老いた猿
『ふむ。
なぜそう考えるんだい?』
28
王子
『昔、僕を育ててくれたばあやに、
いつかあなたを深く愛する人が現れるでしょうって言われて、
ずっとそう信じてきたけれど……』
29
王子
『僕は王子なのに、バカで、役に立たないから……
こんな僕を愛してくれる人は、本当にいるのかなって』
30
王子
『ああ……そうか。
やっとわかったよ』
31
王子
『愛をもらおうとするんじゃなくて、
僕は、ただ、愛そうと思えばよかったんだ』
32
王子
『そして、共にいたいと思える誰かと生きて……
愛を育てていけば』
33
王子
『本当は誰だって——僕のプリンセスだったんだ』
34
…………
35
(伝わってくる)
36
(王子の胸に広がるあたたかさが、こちらにまで——)
37
……さすが旭さんだ
38
そうだね。
脇を固める皆さんも含めとてもレベルが高かった。
……脚本も演出も巧みで、思わずのめりこんでしまったよ
39
寧々
うん……
40
寧々
でも——
41
負ける気はしない、だろう?
42
寧々
ちょっと、人の台詞取らないでよ
43
前のお返しだ!
役者ならば誰でも、いい台詞はほしいものだからな
44
えむ
えへへっ♪
みんなすーっごくメラメラしてるね!
45
ああ。
何せ——今から最高のショーができるのだ
46
では、皆に見せようではないか
47
ワンダーランズ×ショウタイム、
その進化した姿を!
48
えむ
うん! いっくよ~!
49
えむ
みーんなニコニコ笑顔にしちゃおう!
わんわん~~~~
50
司・えむ・寧々・類
『わんだほ~い!』
51
(……ん~。次でやっと最後か)
52
(どこの劇団も悪くなかったけど……
想像の範囲内って感じだなぁ)
53
(面白かったのは、玄武旭くらいかな。
とにかく演技の引き出しが多い。
彼の力でショー自体のクオリティも一段階上がっていた)
54
(……やっぱり使えそうなのは彼ぐらいかな)
55
???
『お兄ちゃんお兄ちゃん!
あのお話、また聞かせて!』
56
???
『ああ、いいよ。
本当にエミリーはあの話が好きだね』
57
ん……?
58
(ああ……。最後はあの、神代くんの劇団か)
59
(今回はどこまでやれるか……お手並み拝見ってとこかな)
60
さあ、いよいよだ……!
61
(合同練習のときからすでに、かなり完成度が高かったけど——)
62
(みんなの、あの自信。きっと“何か”やってくれる)
63
(どんなショーになるんだろう……!)
64
とある青年
『——昔むかしあるところに、
勇敢な王子様と、優しいお姫様がいました』
65
とある青年
『王子様は、魔王に捕まったお姫様を助けるため
たくさんの試練を乗り越え、そして——』
66
とある青年
『ついに魔王を打ち倒しました』
67
王子
『姫! かの魔王を打ち倒し、お迎えに参りました!』
68
『ああ、王子……! 愛しい人!
あなたとならば、どこまでも行けましょう!』
69
とある青年
『そうしてふたりは結ばれ、幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし』
70
とある青年
『——そしてここからはその先。
めでたしめでたしの、後のお話です』
71
(さあ、行くぞ——!!)
72
ブレス
『はぁ……。なぜこうなってしまうのだろう』
73
ブレス
『ハートのことを大事に思っているのに、
顔を合わせればお互いケンカ腰になったり、
嫌味を言ってしまったり……』
74
ブレス
『いや……理由はわかっている。
王子としての仕事が忙しすぎるせいだ』
75
ブレス
『ハートもそれはわかっているからこそ、
手助けしようとしてくれている……。なのに俺は……』
76
ブレス
『いや——きっと話しあえば、新たな道が開けるはずだ』
77
ブレス
『人と人も、国と国も、手を取りあえばこそ繁栄する。
愛し合う者同士ならなおさらだ!』
78
ブレス
『よし、仕事を終えたらハートに会いに行って
とことん話し合おう!』
79
ニド秘書官
『……ふぅ。相変わらず、体力だけはありますね』
80
ニド秘書官
『しかし、困りました。
早く弟君様にその座を渡していただきたいというのに』
81
ニド秘書官
『やはり——あの手を使うしかなさそうです』
82
ブレス
『ハート、俺達はちゃんと話し合って——うっ!』
83
ハート
『ど、どうしたのブレス?』
84
ブレス
『は……話し……合……』
85
ブレス
『——よし! 今日の仕事はこれで終わりだ!』
86
ハート
『え……。
このあとは、隣の国の使者と調停の話をする予定じゃ……』
87
ブレス
『そんなことをしても国の仲が悪いのは直らないだろう?
それより、ハートと遊びに行ったほうがいいさ!』
88
ハート
『ブレス! 山の方で異変があったらしいの。
黒い雲が渦巻いてるって。
みんなが心配してるから、誰か調査に行かせたほうが……』
89
ブレス
『はぁ、心配しているだけなら放っておけ。
そんなところまで気にしていたら疲れるだけだ』
90
ブレス
『民の声なんて、聞いているフリをしておけばいい』
91
ハート
『え?』
92
ブレス
『奴らは俺達がどれだけ“みんなで幸せになれるように”、
“苦しむ者が一人でも減るように”と考えたところで、
その努力をわかろうともしない』
93
ブレス
『自分達に都合がいいルールができた時だけこちらをおだて、
そうでなければ文句を言うだけだ。
そんな奴らのために汗水垂らす必要はない』
94
ハート
『あ……』
95
ハート
『違う……。
たしかに、今のブレスは私と一緒にいてくれる。でも……』
96
妖精
『はぁ、はぁ……ハート姫~!』
97
ハート
『あら? あなた……!
以前、ブレスと一緒に私を助けに来てくれた妖精さん?』
98
妖精
『うん!
あたしは悪い魔法の力を嗅ぎ取れるから、
魔王を倒しに行く王子さまの旅を手伝ってたんだ!』
99
妖精
『それで、さっき山からすごく嫌な臭いがしたから、
王子さまに伝えようとしたんだけど……』
100
妖精
『王子さまからも同じ臭いがするの!
だからもしかしたら、王子さまは山の何かに
呪われちゃってるんじゃないかって思って……!』
101
ハート
『え……!? 呪い……!?』
102
ハート
『そっか、だからブレスは……!
どうして早く気づけなかったんだろう……』
103
ハート
『ううん、それより——妖精さん!
呪いはどうやれば解けるの?』
104
妖精
『解く方法は一つしかないんだ』
105
妖精
『呪いをかけられた本人が、
呪いの元凶となってる物を壊すの。つまり——』
106
妖精
『王子さまが山に行って、
呪いのアイテムを壊さなくちゃいけないんだ!』
107
(……やっぱりワンダショはすごいな)
108
(役者はたった4人。
なのに、とても壮大な話に見える)
109
(これも類くんの演出がなせる業だろうな)
110
(それに……司くん達の演技もずいぶんレベルアップしていたし、
ここからの展開にも期待ができそうだ!)
111
(……司くんは最後の絶望を、
どんな風に演じるんだろう?)
112
ハート
『はぁ……なんとか岩場を越えられた……』
113
妖精
『それにしても、あのニドって人が悪い人だったなんて
びっくりだったね!
眠らせて置いてきたけど、あとでちゃんと連れてかないと!』
114
ブレス
『ああ……そうだな……』
115
(——間もなく、例のシーンだ)
116
(大丈夫だ。練習は何度もした)
117
ハート
『呪いの花までは、あともう少し……!
ブレス、あの坂道を登り切れば頂上よ!』
118
ブレス
『ああ……。
ありがとう、ハート……』
119
ブレス
『……そうだ、あともう一息だ……。
あともう少しで、この呪いも……』
120
ブレス
『う……っ!』
121
ハート
『ブレス!?』
122
妖精
『……っ、ひどい臭い!
呪いが濃くなってる!』
123
ハート
『花まで、あともう少しなのに……!
ブレス!』
124
(——ここだ)
125
(絶望に飛び込め!!)
126
(オレが絶望するならばきっとその時は——夢を失う時だ)
127
(だが、オレが夢を諦めない限りその瞬間は訪れない。
決して絶望もしないだろう)
128
(しかし……ひとつだけ可能性はある)
129
(もしも——)
130
(もしも『世界』のほうが変わったら)
131
(そして、その世界にどれだけ抗っても、
オレが無力なままだとしたら——)
132
…………!
133
……ここは……駅前……?
134
なぜ、こんなに荒れ果てて——
135
いや……そうだ。
思い出した
136
……変わってしまったんだ。いつの間にか
137
この世界は——憎み合う世界に
138
許せない
139
……!
140
僕はただ普通に暮らしたいだけなのに……
141
どうしてこんなに苦しいの?
142
——そうか、あいつらのせいだ
143
そうだ……あいつらがいなければ——
144
……っ
145
話せばわかると言いたいのか?
そんなのは理想論にすぎん
146
そうだ、現実は違う
147
あいつらが私を苦しめてるの。
だから邪魔なあいつらさえいなくなれば——
148
そうよ! そうすれば——幸せになれる!
149
違う……!
150
それではみんなで笑顔になれない。
誰かが傷つき泣くことになる
151
みんなで笑顔になるんだ!
そしてそのために、オレは……ショーをやる!
152
今こそ、笑顔を届けに行くのだ!
153
『さあ、幕が上がるぞ!
勇者ペガサスが皆の夢を守りに行く!』
154
ショー……?
そんなもの見てる時間はないの
155
作り物で喜んでいるほど暇じゃないんだ。
帰ってくれ
156
……っ。
ならば——!
157
『道化師のショーだ!
お嬢さんの笑顔のためなら、地球に玉乗りでもしてみせよう!』
158
そんなことより、私を救ってくれる人はどこ?
159
不幸をばらまく連中を叩きのめさなければ!
160
…………!
161
いいや……!
まだだ! 何度でもやってみせる!
162
みんなが笑顔になるまで、何度でも!!
163
……はぁ、はぁ……
164
『——これは、小さな希望の物語だ』
165
『憎み合う人々が、また手を取り合えるようになる。
そんな、小さな——』
166
もういいよ
167
え?
168
そういうの、くだらないよ
169
一瞬だけ楽しんで、笑って……。
そんなこと繰り返してどうするの?
170
お腹が膨れるわけでもない。
病気が治るわけでもない
171
そのくせ、愛とか、希望とか、
キラキラしたものばかり見せられて……
何も持ってない自分が惨めになる
172
そんな…………
173
それに……みんなで笑顔に?
174
それこそいらないよ
175
僕たちを苦しめるあいつらに、笑顔になる資格なんてない
176
…………!!
177
俺は行く。
こんなところにいても時間の無駄だ
178
まったくだ。
ひとりでも多く、敵を……敵を叩きのめさないと
179
誰も近づかないで、誰も……
180
そういうのも全部、くだらない……
181
……おい!! 待て!!
どこへ行くんだ!?
182
——待ってくれ!!
183
えむ
……やっぱり……
184
えむ
やっぱりダメだったね、司くん……
185
えむ……
186
……まったく、直視しがたい現実だ
187
こんなにも人が憎み合えるなんてね
188
あ……
189
……垣根を超えるショーなんてなかった
190
ショーは、無力だ
191
類……!
192
……いいや! いいや、まだだ!
193
諦めたら終わりだ!
笑顔は戻ってこない!!
194
だから、ショーを続けるんだ!
そうすればきっと——
195
寧々
でも、誰も見てくれない……!
196
寧々
みんな、誰も信じられなくなって、家から出てこなくなって……
歌も届かない……
197
……それでも!
198
それでも、諦めたらおしまいだろう!
199
僕達が諦めずにいるだけじゃ駄目なんだ!
200
…………!
201
観客が——ショーを求める人々がいなければ、
ショーは無意味になる
202
…………無意味になったんだ
203
そんな…………
204
(誰も——必要としていない?)
205
もういいよ
206
(オレ達のショーも、笑顔も……いらない?)
207
そういうの、くだらないよ
208
(ならオレは……)
209
(オレは、もう——)
210
ん?
211
え……?
212
ブレス
『……もう、いい』
213
ブレス
『ありがとう、ハート……』
214
ブレス
『だが……もう無理だ。
俺には、どうにもできない』
215
ハート
『……ブレス! ブレスったら!
あなたらしくもないわ!』
216
ブレス
『いいんだ。もう』
217
ブレス
『俺が何をしようと、
人は憎み合い、国は争い続ける』
218
ブレス
『平和のためにどうすればいいのか考え続けても、
行動し続けても、どうせ……何も変わらない』
219
ブレス
『——全て、無意味なんだ』
220
…………!
221
司くん…………?