1
ミュージシャンA
♪——————……
2
ミュージシャンA
『はあ、さすがにちょっと休憩するか……って、ん?』
3
ミュージシャンB
『どうした?』
4
ミュージシャンA
『いや……あそこ。見ない顔がいるなと思ってさ』
5
ミュージシャンB
『ほんとだな。
マイク持ってるってことは……これから歌うのか?』
6
彰人
(ステージみたいに注目されてるわけでも、
知名度があるわけでもない)
7
彰人
(なら——)
8
彰人
(最初から、全力でかますしかねえ!)
9
彰人
♪——————————!!
10
ミュージシャンA
『うおっ!?』
11
ミュージシャンB
『……すげえ。いきなりぶちかましてきたな』
12
彰人
♪————! ♪————!!
13
彰人
(——よし、何人かは掴んだ)
14
彰人
(このまま、もっとあげろ——!)
15
彰人
♪——————————————~~~!!
16
社長
………………
17
社長
『なるほど。たしかに、勢いは以前見た時と変わっていない』
18
社長
『いや、それ以上か。しかも……』
19
通行人A
『あれ、誰だろ?』
20
通行人B
『さあ? でも……』
21
通行人B
『なんか、熱くていいな』
22
彰人
……っ、はあ……はあ……
23
社長
お疲れ様、アキト
24
彰人
あ……
25
社長
感情の乗った、良いパフォーマンスだったと思う
26
社長
オーディエンスも、想定以上に足を止めていた
27
彰人
……ありがとう、ございます
28
彰人
(……たしかに、初見にしては
オーディエンスの反応もあったほうだ)
29
彰人
(けど……)
30
社長
納得がいかない、という顔だな
31
彰人
………………
32
彰人
なんか、うまく噛み合ってねえっていうか……
33
彰人
全力で歌ってるつもりでも、
なんかが引っ掛かってる感じがして
34
彰人
(この感じ、前もどこかで——)
35
英語だと、やっぱり感情を
うまく乗せきれてない感じがしたし——
36
彰人
(……そうか)
37
彰人
——すみません。もう1回、歌わせてもらえますか
38
彰人
(…………やっぱりそうだ。
英語で歌ってると、微妙に“引っかかる”)
39
彰人
♪————! ♪————!!
40
彰人
(アメリカで、他のチームの歌を聴いてわかった)
41
彰人
(発音とリズムの取り方が、オレ達とは全然違う)
42
彰人
(けど、そっちを意識しすぎると……
今度は音だけが上滑りする)
43
彰人
♪——————————!!
44
社長
…………
45
彰人
……っ、はあ……
46
彰人
(——駄目だ。あれから何回もやってるが……)
47
彰人
(考えすぎて、歌が硬くなってる)
48
彰人
(それに……)
49
ミュージシャンC
♪——————! ♪——————!
♪——————! ♪——————!
50
ミュージシャンD
♪——————————!
♪————————————~~!
51
彰人
(……観客は、上手いチームのほうに行く。当たり前だ)
52
彰人
…………全然、足りてねえ
53
彰人
だが、足りねえなら——
54
社長
そろそろ休んだ方がいい。
それ以上はオーバーワークだ
55
彰人
大丈夫です。体力はあるほうなんで
56
社長
自覚はなくても、
長時間のフライトで疲労も溜まっているだろう
57
社長
たしかに君は、もっと“やれる”。
だが、それと無理をすることとは別だ
58
彰人
……わかってます。けど——
59
彰人
オレは周りのヤツに比べて、何もかも足りてない
60
彰人
感情が乗ってたとか、想定よりよかったとか……
そんなんじゃ——証明できねえ
61
彰人
オレが、オレ自身の力で世界を獲るだけの熱を生み出せる——
それを証明しねえと、契約してほしいなんて絶対に言えない
62
彰人
だから——!
63
社長
………………
64
社長
……そこまで言うのなら、納得いくまでやってみればいい。
ただし、休憩はきちんと取ってもらう
65
彰人
……ありがとうございます
66
社長
それと、期限も決めさせてもらう。
あまり長くアメリカにいては、君も学業に支障があるだろう
67
彰人
……いつまでですか?
68
社長
2週間だ。それまでに……
69
社長
ここにいるオーディエンスを、どのチームよりわかせてくれ
数時間後
70
彰人
——すみません。夜まで付き合わせた上に、
ホテルまで送ってもらって
71
社長
気にしなくていい。
君は、自分の歌のほうに集中してくれ
72
社長
では、また明日迎えに来る
73
彰人
(……なんつうか、よくわかんねえ人だよな)
74
彰人
(相変わらず表情は変わんねえけど、
面倒見はいいっつうか——ん?)
75
彰人
…………うわ。すげえ数の通知
76
彰人
(そういや、アメリカ着いてから
バタバタしてて全然スマホ見てなかったな)
77
彰人
(留守にするって連絡はしてきたし、
そこまで急ぎの要件はねえと思うが——)
78
彰人
……チームのグループチャットに、なんか上がってんな。
動画か?
79
杏の声
『やっほー、彰人! ちゃんとアメリカ着いた?』
80
こはね
『えっと……お疲れ様、東雲くん』
81
こはね
『時差もあって、なかなか電話もできないだろうから……
みんなでメッセージを送ることにしたんだ』
82
『彰人、また財布すられたりしてないよね?』
83
『今回はひとりなんだから、気をつけてよ。
あと、なんかあったらすぐ連絡すること!』
84
こはね
『ひとりだと、いろいろ大変かもしれないけど……
休めるときにしっかり休んでね』
85
『私達からはこんなとこかな! 冬弥は?』
86
冬弥
『大体のことは、小豆沢と白石が
言ってくれたような気もするが——』
87
冬弥
『彰人のことだから、正直あまり心配はしていない』
88
冬弥
『だが……もし何か力になれそうなことがあったら、
遠慮せずいつでも頼ってくれ』
89
冬弥
『——応援している』
90
彰人
あいつら……
91
レン
『やっほー!』
92
彰人
うおっ! レン……!?
93
レン
『へへっ、びっくりさせてごめん!』
94
レン
『彰人に送ったメッセージが、なかなか既読にならないって
みんながちょっと心配してたからさ』
95
レン
『オレが代表して、様子を見に来たんだ!』
96
彰人
悪いな。
やっと落ち着いたから、ちょうど今スマホ見てたとこだ
97
レン
『そっか! じゃあ、みんなからのメッセージは見たんだね』
98
レン
『オレも、彰人の元気そうな顔が見れてよかったよ!』
99
彰人
ああ。あいつらにも、早めに返信しとく
100
レン
『オッケー! みんなにも伝えとくね』
101
彰人
おう、頼んだ
102
レン
『ねえねえ、彰人』
103
彰人
ん? なんだ、まだなんか用か?
104
レン
『用っていうか、オレも彰人に伝えたいことがあるんだ!』
105
彰人
伝えたいこと?
106
レン
『うん! あのね……』
107
レン
『冬弥達だけじゃなくて、オレ達もみんな、彰人を応援してるよ』
108
レン
『だから——いつでも頼っていいからね!』
109
彰人
わかった。なんかあったら、頼らせてもらう
110
レン
『あ、言ったなー? 絶対だよ!』
111
彰人
ああ
112
レン
『へへ、約束だからね!』
113
レン
『じゃあ、オレはそろそろ行くけど……
頑張ってね、彰人!』
114
彰人
おう、ありがとな
115
彰人
……おかげで、気合いが入った
116
彰人
(期限までにオーディエンスをわかせて——
絶対に、結果を出してやる)
117
彰人
(あいつらに、胸張って報告するためにも)
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