ステージのセカイ
花畑
愛莉
『ねえ、待って。夏生ちゃん……!』
愛莉
……ううん、違う。
ここはもっと、必死な感じのはずだから……
ここはもっと、必死な感じのはずだから……
愛莉
『ねえ、待って——……』
愛莉
……駄目ね。
何回やっても、しっくりこないわ
何回やっても、しっくりこないわ
愛莉
(……昨日から、ずっとこんな調子ね)
真緒
それに——みんな、がっかりしたりはしないと思います
真緒
アイドルがいきなり、他の役者と同じように
演技できるなんて思うほうがおかしいので
演技できるなんて思うほうがおかしいので
愛莉
(場所を変えれば、
少しは気分も変わると思ったんだけど……)
少しは気分も変わると思ったんだけど……)
愛莉
……はぁ
???
——あれ? 愛莉ちゃん?
愛莉
え……カイトさん?
KAITO
ああ、やっぱり愛莉ちゃんだったんだ。
気分転換の散歩も、してみるものだね
気分転換の散歩も、してみるものだね
愛莉
気分転換……?
KAITO
今度やるライブの演出に悩んじゃって、
少し体を動かそうかなって。
愛莉ちゃんのほうは——
少し体を動かそうかなって。
愛莉ちゃんのほうは——
愛莉
……わたしも、気分転換よ
KAITO
……あまり元気がないみたいだね。
何かあった?
何かあった?
愛莉
楽しい話じゃないんだけど……
頭を整理するために、聞いてもらってもいいかしら?
頭を整理するために、聞いてもらってもいいかしら?
KAITO
なるほど……。
そんなことがあったんだね
そんなことがあったんだね
愛莉
……ええ。自分でも、役者さん達の中で
浮いてるのがはっきりわかったの
浮いてるのがはっきりわかったの
愛莉
それに……共演者の人にも、
アイドルには期待してないみたいなことを言われちゃって
アイドルには期待してないみたいなことを言われちゃって
KAITO
そんな……
愛莉
けど……ああ言われても、しょうがないと思うわ
愛莉
あの場にいた人達はみんな、
長い時間を演技の勉強に費やして、
力をつけてきた役者さん達で——
長い時間を演技の勉強に費やして、
力をつけてきた役者さん達で——
愛莉
さっき言った共演者の……
佐原さんも、まさにそのタイプなの
佐原さんも、まさにそのタイプなの
KAITO
そうなのかい?
愛莉
ええ。共演する人達のことは知っておきたいと思って、
過去のインタビュー記事を読んだのよ
過去のインタビュー記事を読んだのよ
愛莉
佐原さんは子供の頃から劇団に入って、
子役として活動してたんですって
子役として活動してたんですって
愛莉
順風満帆ってわけじゃなかったみたいだけど……
役者であるためにずっと努力を続けて、
最近ようやく理想の役者像に近づいてきてるかもって話してたわ
役者であるためにずっと努力を続けて、
最近ようやく理想の役者像に近づいてきてるかもって話してたわ
KAITO
……なんだかちょっと、愛莉ちゃん達とも似てるね
愛莉
そうね。だからこそ……
佐原さんが言ってたことの意味が、よくわかるの
佐原さんが言ってたことの意味が、よくわかるの
愛莉
わたしも今まで、
アイドルとして努力を重ねてきたつもりだから……
アイドルとして努力を重ねてきたつもりだから……
愛莉
もし、最高のステージにしたいって思ってた現場に、
やる気のない子が入ってきたら怒っちゃうでしょうし
やる気のない子が入ってきたら怒っちゃうでしょうし
KAITO
でも、愛莉ちゃんは——
愛莉
ええ。
わたしだって、最高のドラマにしたい。そう思ってる
わたしだって、最高のドラマにしたい。そう思ってる
愛莉
だから、できる限りの努力をしたいの
KAITO
愛莉ちゃん……
愛莉
さっきも練習してたんだけど、
演技の経験が少ないせいで、何が正解かわからなくて……
演技の経験が少ないせいで、何が正解かわからなくて……
愛莉
でも、何かが違うってことだけはわかるの
愛莉
だから、このまま練習を続けていくと
佐原さんが言ってたみたいな、
空回った演技になっちゃう可能性はある……
佐原さんが言ってたみたいな、
空回った演技になっちゃう可能性はある……
愛莉
わたしだって、そうはしたくないわ。
でも、手を抜きたくもない
でも、手を抜きたくもない
愛莉
だから……どうしたらいいのか悩んでたの
KAITO
そっか……
KAITO
でも、それなら——努力しかないんじゃないかな
愛莉
え?
KAITO
……愛莉ちゃんの気持ちは、よくわかるよ
KAITO
今まで専門外だったところで、一流の人達と一緒にやるのは
大変だと思うし……迷惑をかけたくないって思うのも、わかる
大変だと思うし……迷惑をかけたくないって思うのも、わかる
KAITO
だけど……さっき、愛莉ちゃんは言ってたよね。
最高のドラマにしたいって
最高のドラマにしたいって
愛莉
…………!
KAITO
それなら——やらなきゃいけないことは、
もうわかってるんじゃないかな
もうわかってるんじゃないかな
愛莉
(わたしが、やらなきゃいけないこと……)
愛莉
……そうね
愛莉
自分の畑じゃないからって、
ごちゃごちゃ考えすぎてたみたい!
ごちゃごちゃ考えすぎてたみたい!
KAITO
ふふ。考えを整理するお手伝いができたかな?
愛莉
ええ!
——ありがとう、カイトさん
——ありがとう、カイトさん
愛莉
わたし、頑張ってみるわ
KAITO
うん。応援してるよ
愛莉
(……最高のドラマを作りたい)
愛莉
(そのために、やるべきことは——)
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