数日後

BGM: --:-- / --:-- Play

1

Listen

まさか、こんなにすぐ会うことになるなんて
思わなかったね
2

冬弥

Listen

ああ。たしかに電話では、
すぐに予定を空けると言ってくれたが……
もう少し先になるかと思っていた
3

こはね

Listen

私達のために予定を空けてくれたってこと、なのかな……?
4

彰人

Listen

さあな。その辺りのことはわからねえが——

Sound Effect: Play

5

KAITO

Listen

『みんな~!!
今日の練習はどんな調子かな……って、あ、あれ?』
6

冬弥

Listen

カイトさん?
7

KAITO

Listen

『ご、ごめ~ん! いつも練習してる時間だから、
覗きに来たんだけど……今日は違ったみたいだね』
8

こはね

Listen

あ、そういえば
バタバタしててちゃんと報告できていなかったですね
9

こはね

Listen

実は今日、人と会う約束をしていて——
10

KAITO

Listen

『え、大会を見たスポンサーに声をかけられた?
しかもすごい音楽プロデューサーさんなの!?』

BGM: --:-- / --:-- Play

11

KAITO

Listen

『すごいね!
それって、みんなのことをプロデュースしたいって
ことなんじゃ……!』
12

彰人

Listen

いや、さすがにそれはないと思いますよ。
オレ達は、アランさんのところのサポート受けてますし……
13

彰人

Listen

それにあの人がプロデュースしてるのは、
世界的に有名なアーティストばっかですから
14

KAITO

Listen

『ええ~? そうなの~?
でも、案外そんなことないかもよ?』
15

KAITO

Listen

『あ、ちなみに、そのDGって人はどんな人なの?』
16

冬弥

Listen

そうですね。結論から言うと……
まさに『伝説のミュージシャン』と称するに相応しい経歴の持ち主
という感じでしょうか
17

KAITO

Listen

『伝説……?』
18

冬弥

Listen

はい。『マイク一本でのし上がった』という言葉通り、
どことも契約せず、たったひとりで
アメリカ音楽シーンのトップに上り詰めたようです
19

冬弥

Listen

当時の主要大会はほぼ総なめ。
前衛的な歌詞と高度なテクニックで、
若者を中心にカリスマ的な支持を得ていたと
20

KAITO

Listen

『総なめ……』
21

彰人

Listen

そりゃま、伝説とも言われるよな
22

冬弥

Listen

そうだな。ただ……そう言われる理由は、他にもある
23

Listen

え、そうなの?
24

冬弥

Listen

ああ。
昨日、改めて調べてみてわかったんだが……
25

冬弥

Listen

——DGは、ミュージシャンとしての活動期間が、極めて短い
26

冬弥

Listen

未来の音楽業界を担う若者……後進を育てるために尽力したいと、
デビューからほんの数年でプロデューサーに転身している
27

冬弥

Listen

以降は、ほとんど表舞台に出ていないようだ
28

冬弥

Listen

——路地裏から花火のように打ちあがり、
暗闇の中の才有る若者達にまで光を当てた……。
そのバックグラウンドこそが、彼が伝説と呼ばれる所以らしい
29

Listen

後進を育てる……。
なんか、父さんみたい
30

彰人

Listen

んじゃ、そこからは
自分の会社を大きくしていったってことか?
31

冬弥

Listen

そのようだ
32

こはね

Listen

会社の名前は……
たしか『Eagle music』だったよね
33

KAITO

Listen

『Eagle music?』
34

KAITO

Listen

『この前、冬弥くんが持ってきてくれたCDって、
そんな名前のレーベルじゃなかったっけ!?』
35

冬弥

Listen

はい。Eagle musicは、自前の音楽レーベルも持っているんです。
……それにしても、よく覚えていますね
36

KAITO

Listen

『いやあ、すっごく独特なサンプリングで面白かったから
参考にしたいなって思ってさ!
CDのジャケットも隅から隅まで読んでたんだよね!』
37

Listen

この前ワールドツアーしてた『F4ke No』も、
たしかあの人がプロデュースしてたんだったよね
38

彰人

Listen

ああ。30都市くらい回ってたらしいが……
あの規模のツアーができるのは、相当だろ
39

こはね

Listen

今、ワールドヒットチャート1位の『Raw&Raw』もそうだよね。
もうすぐ5週連続だって——
40

???

Listen

——みんな、自慢のアーティストだよ

Sound Effect: Play

Sound Effect: Play

41

ダグラス

Listen

すまない。
うちのアーティストの話が聞こえたから、ついね
42

ダグラス

Listen

しかし、飲み物が大分進んでいるね。
待たせてしまって申し訳ない
43

彰人

Listen

あ……いえ。
オレ達が早く来ただけなんで、気にしないでください
44

こはね

Listen

(DGさん……。
改めて向き合うと、すごく存在感がある人だな)

BGM: --:-- / --:-- Play

45

こはね

Listen

(でも、話しかけられるまでは気づかなかったし……。
なんだろう。静かに動く、大きな虎みたいな——)
46

こはね

Listen

(——ううん。
あんまり先入観を持っちゃダメだよね)
47

冬弥

Listen

本日はよろしくお願いします。
ええと……
48

ダグラス

Listen

ああ、DGでいいよ。
みんなそう呼んでいるしね
49

冬弥

Listen

わかりました。
では、DGさん。お会いできて光栄です
50

冬弥

Listen

俺達は——
51

ダグラス

Listen

ああ、わかっているよ。
トーヤ、アキト、アン、それに——コハネ、だろう?
52

Listen

え? 名前、知ってるんですか?
53

ダグラス

Listen

もちろん。
いいアーティストの名前は記憶に残る。
どうやら、頭がそうできているらしいんだ
54

ダグラス

Listen

ああ……つい馴れ馴れしくなってしまった。
『さん』をつけた方が良いかな?
55

Listen

あ……いえ。全然大丈夫です
56

ダグラス

Listen

そうか、ありがとう
57

ダグラス

Listen

さて——まずは、今日のお礼を言わせてほしい
58

Listen

お礼……ですか?
59

ダグラス

Listen

ああ。RUSH BEATSの本戦出場が決まって、
寸暇を惜しんで練習したい時だろう
60

ダグラス

Listen

そんな中、こうして時間を作ってくれてありがとう。
君達と会うことができて、とても嬉しいよ
61

ダグラス

Listen

今日は、君達の歌に魅せられたいちファンとして。
そして……友人の父親として。いろいろなことを話せるといいな
62

冬弥

Listen

……はい
63

こはね

Listen

(この前も思ったけど……すごく、丁寧に話す人だな)

Sound Effect: Play

64

エレナ

Listen

あいつは、冷たい人間なんだ
65

こはね

Listen

(冷たい人、か……)
66

Listen

えっと……じゃあ、よければ聞かせてもらってもいいですか?
67

Listen

予選の私達の歌、DGさん的にはどうでしたか?
68

彰人

Listen

……そうですね。
率直に教えてもらえたら嬉しいです
69

ダグラス

Listen

うーん……。
感想としては、いろいろな言葉が思い浮かぶけれど……
70

ダグラス

Listen

——君達の歌からは、パワーを感じたよ
71

Listen

パワー……
72

ダグラス

Listen

ああ、我を通す強い意志を感じる声。
むき出しの、観客すら食ってしまおうという激情——
73

ダグラス

Listen

あの歌には、時代を切り拓く新しいパワーがあった
74

ダグラス

Listen

実に素晴らしかった。
胸が熱くなったよ
75

Listen

ならそれは——エレナ達のおかげです

BGM: --:-- / --:-- Play

76

ダグラス

Listen

……娘達の?
77

Listen

はい
78

Listen

あの歌は、エレナ達にたくさん協力してもらったからこそ
歌えたんです
79

ダグラス

Listen

……そうだったのか、エレナ達が……
80

ダグラス

Listen

ふたりがあの歌の糧になっているなんて……
なんだか誇らしいよ
81

ダグラス

Listen

もっとも、あの子達に言ったら、
『あんたが誇りに思うな。関係ないでしょ』
と言われそうだけれどね
82

ダグラス

Listen

しかし、あれほどの実力だ。
もちろん、どこかと契約はしているんだろう?
83

彰人

Listen

はい。No.9レコードと
84

ダグラス

Listen

ああ、アランの……。
それは最高のレーベルと組んだね
85

彰人

Listen

アランさんを知ってるんですか?
86

ダグラス

Listen

もちろん。彼が歌っていた頃から知っているよ。
タイミングが合わなくて、
一緒に仕事をする機会には恵まれなかったけどね
87

ダグラス

Listen

だが、彼の信念には深く共感している
88

彰人

Listen

え?
89

ダグラス

Listen

『よりよい音楽のために、アーティストに尽くす』——
90

ダグラス

Listen

私も、同じ想いで動いているからね
91

彰人

Listen

……そうなんですね
92

こはね

Listen

(アーティストに、尽くす……)
93

ダグラス

Listen

——私には、見たい景色があるんだ
94

ダグラス

Listen

世界中が、素晴らしいアーティストの熱い音楽で熱狂する景色……
その瞬間を、この手で作り上げたい
95

ダグラス

Listen

そのためなら、多少の無理も押し通す覚悟さ
96

こはね

Listen

(世界中が、音楽で熱狂する景色。それって……)

Sound Effect: Play

97

こはね

Listen

(……やり方は、違うけど)
98

こはね

Listen

(DGさんが見たい景色は、私達と近いのかも……)
99

こはね

Listen

(でも、それなら……)
100

こはね

Listen

(エレナさん達が言ってたことは、
どういうことなんだろう……?)
Next Chapter: Eagle music